01/25/2025

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とは?OpenAI、ソフトバンク、オラクルの関係性に迫る!

a digital image of a brain with the word change in itウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とは?」という疑問に答えるべく、初期出資者であるOpenAI、ソフトバンク、オラクル、MGXの関係性や当プロジェクトの内容を詳しく解説していきます。
  • ドナルド・トランプ大統領は、OpenAIのAIインフラ構築を目的とした「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)」設立を発表し、今後4年間で5000億ドルを投じる計画を明らかにしました。
  • スターゲートの初期出資者にはソフトバンク、OpenAI、オラクル、MGXが含まれ、ソフトバンクが財務を、OpenAIが運営を担当し、孫正義氏が会長に就任する予定です。
  • プロジェクトは既にテキサス州で建設が進行中で、国内各地の候補地を評価中。AI分野での米国のリーダーシップ確保や経済効果、国家安全保障への寄与を目的としています。

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)に関して

1月22日、就任から数日後、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスからのテレビ演説で「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)」と呼ばれる新会社の設立を発表しました。この会社は、今後4年間で5000億ドルを投じて、OpenAIのための新たなAIインフラをアメリカ国内に構築する予定です。この発表の報道はYouTubeで視聴できますので、ぜひご覧ください。また、OpenAIの公式ウェブサイトで公開されているプレスリリースも併せてチェックしてみてください。

記者会見には、トランプ大統領に加え、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏、オラクル(ORCL)のCEOであるラリー・エリソン氏、そしてソフトバンクのCEOである孫正義氏が同席しました。一方で、欠席が目立ったのは、最近自身の巨大データセンターを完成させたテック業界の大物イーロン・マスク氏や、現在Azureを通じてOpenAIにデータセンターの計算リソースを提供しているマイクロソフト(MSFT)のCEO、サティア・ナデラ氏でした。

スターゲートは、早速本格的な事業展開に乗り出す予定です。

(原文)We will begin deploying $100 billion immediately.

(日本語訳)私たちは、まず最初に1000億ドルを即座に投入する予定です。

(原文)The buildout is currently underway, starting in Texas, and we are evaluating potential sites across the country for more campuses as we finalize definitive agreements.

(日本語訳)現在、建設はテキサス州で進行中であり、さらなるキャンパスの設立に向けて、国内の複数の候補地を評価しながら最終契約を進めています。

「ちょっと待て」と思っている方もいるかもしれません。「今発表したばかりなのに、最初のキャンパスがもう建設中?どういうこと?」――その答えについては後ほど詳しく説明します。それでは、スターゲートとその資金構造について話を戻しましょう。

(原文)The initial equity funders in Stargate are SoftBank, OpenAI, Oracle, and MGX. SoftBank and OpenAI are the lead partners for Stargate, with SoftBank having financial responsibility and OpenAI having operational responsibility. Masayoshi Son will be the chairman.

(日本語訳)スターゲートの初期出資者は、ソフトバンク、OpenAI、オラクル、そしてMGXです。ソフトバンクとOpenAIが主要パートナーを務めており、ソフトバンクが財務面、OpenAIが運営面を担当します。会長には孫正義氏が就任する予定です。

これら4社の初期出資者のうち、3社はお馴染みかと思いますが、4社目のMGXについてはご存じないかもしれません。このMGXについても、後ほど詳しくお話しします。

次に、テクノロジーパートナーについてです。

(原文)Arm, Microsoft, NVIDIA, Oracle, and OpenAI are the key initial technology partners. The buildout is currently underway, starting in Texas, and we are evaluating potential sites across the country for more campuses as we finalize definitive agreements.

(日本語訳)主要な初期テクノロジーパートナーには、アーム・ホールディングス(ARM)、マイクロソフト、エヌビディア(NVDA)、オラクル、そしてOpenAIが名を連ねています。現在、建設はテキサス州で進行中であり、さらなるキャンパスの設立に向けて、国内各地の候補地を評価しつつ、最終的な契約を進めています。

最後に、マイクロソフトについて少し触れます。ただ、もう一度立ち止まって考えてみましょう。マイクロソフトがOpenAIと提携してデータセンターを建設するということは、自社がOpenAIに提供している計算リソースと直接競合する形になるということです。一体どうしてそんなことに同意したのでしょうか?

データセンターの建設は既に進行中?MGXとは何者?マイクロソフトがOpenAIの計算パートナーとして果たす役割はどうなっているのか?そして、この話の中でイーロン・マスク氏はどこにいるのか?さあ、詳しく見ていきましょう!


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スターゲートに関する発表で特に興味深いのは、このプロジェクトがプレスリリースの中でどのように位置づけられているかという点です。

(原文)This infrastructure will secure American leadership in AI, create hundreds of thousands of American jobs, and generate massive economic benefit for the entire world. This project will not only support the re-industrialization of the United States but also provide a strategic capability to protect the national security of America and its allies.

(日本語訳)このインフラは、アメリカのAI分野でのリーダーシップを確固たるものにし、数十万人規模の雇用を創出し、全世界に大きな経済的利益をもたらすでしょう。このプロジェクトは、アメリカの再産業化を支援するだけでなく、アメリカおよびその同盟国の国家安全保障を守るための戦略的能力も提供します。

この段落だけを読むと、アメリカ全体のAI開発を支援するためのプロジェクトだと思い込んでしまうのも無理はありません。しかし、実際にはそうではありません。これは完全にOpenAIとそのインフラニーズに焦点を当てたものです。この段落から論理的に導き出せる結論は、OpenAIがアメリカの国家安全保障を担う存在と見なされた、ということです。この事実を少し時間をかけてじっくり考えてみてください…。

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)と建設のタイミング

最初のデータセンターの建設がすでに大幅に進んでいるのは一体どうしてでしょうか?実際にそうであることを証明するためのサム・アルトマン氏の動画がこちらです:

(出所:@sama)

理由は単純です。スターゲートは新しいプロジェクトではありません。「The Information」によれば、この計画は2024年3月29日に初めて報じられました(詳細はこちら)。

MicrosoftとOpenAI、1000億ドル規模のスターゲートAIスーパーコンピューター計画を始動

(出所:The Information)

(出所:The Information)

当初、スターゲートはマイクロソフト(MSFT)とOpenAIの共同プロジェクトとして提案されていましたが、最終的にはマイクロソフトをほぼ除いた形でのコラボレーションに変わりました。一体何が起きたのでしょうか?時間が経つにつれ、このパートナーシップが「軋み始めている」との噂が出回り、最近では「ニューヨーク・タイムズ」の記事でその様子が報じられました。

(日本語訳)MicrosoftとOpenAIの緊密なパートナーシップにほころびの兆し

「テック業界最高の友情」とも称された関係が現実に直面。OpenAIがマイクロソフトとの契約変更を試みる一方、マイクロソフトはスタートアップへの賭けを分散させようとしている。

(出所:The New York Times)

マイクロソフトがOpenAIの計算ニーズに迅速に対応できていないという主張がありましたが、昨年を通じてOpenAIが継続して進展を遂げてきたことを考えると、これは可能性が低いように思われます。さらに、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは2025年に800億ドルの設備投資を計画しており、その大部分がOpenAIの計算ニーズに充てられると予想されています。この点については、昨日ダボスで行われたインタビューでも改めて言及されており、ぜひ動画全編を視聴することをお勧めします。

また、この件に関してマイクロソフトが1月21日に公開したブログ記事もあります。このブログ記事はスターゲートを認めつつ、2019年から両社が共同で行ってきた取り組みを補完するものであると主張しています。詳細はこちらからご覧ください

(原文)We are thrilled to continue our strategic partnership with OpenAI and to partner on Stargate. Today’s announcement is complementary to what our two companies have been working on together since 2019.

(日本語訳)私たちは、OpenAIとの戦略的パートナーシップを引き続き強化し、スターゲートでの協力に取り組めることを大変嬉しく思っています。本日の発表は、2019年から両社が共同で進めてきた取り組みを補完するものです。

ブログの中で最も興味深い部分は、最後の段落です。

(原文)In addition to this, OpenAI recently made a new, large Azure commitment that will continue to support all OpenAI products as well as training. This new agreement also includes changes to the exclusivity on new capacity, moving to a model where Microsoft has a right of first refusal (ROFR). To further support OpenAI, Microsoft has approved OpenAI’s ability to build additional capacity, primarily for research and training of models.

(日本語訳)これに加えて、OpenAIは最近、新たに大規模なAzureの利用契約を締結しました。この契約により、OpenAIのすべてのプロダクトとトレーニングを引き続き支えることができます。また、この新しい契約には、独占利用に関する変更も含まれており、新たなキャパシティに関してマイクロソフトが優先交渉権(ROFR)を持つモデルへと移行しています。さらにOpenAIを支援するために、マイクロソフトは主にモデルの研究とトレーニング向けの追加キャパシティを構築するOpenAIの権限を承認しています

つまり、正式に発表されましたが、将来的なキャパシティに関するパートナーシップの条件が変更されたということです。マイクロソフトが新しいキャパシティに対して優先交渉権(ROFR)を持つという単純な内容です。しかし、その後の記述に注目してください。マイクロソフトがOpenAIの追加キャパシティ構築を「承認した」とされています。これを見る限り、少なくとも現時点では、誰がまだ主導権を握っていると思っているのかがはっきりとわかります。

この背景を踏まえると、マイクロソフトとOpenAIの間で実際に何が起きていたのかを推測することができます。スターゲートのデータセンター建設が明らかに大幅に進んでいることから、このプロジェクトはマイクロソフトとのROFR合意が締結されるはるか以前から進行していたことがうかがえます。アルトマン氏が単独でスターゲートを進め、新たな資金提供者とオラクル(ORCL)という新しいテクノロジーパートナーを取り込んだようです。

マイクロソフトのブログは、事実上、スターゲートプロジェクトを事後的に「承認」するための手段と言えます。一方で、ROFR合意により、マイクロソフトは「新たなキャパシティ提供の要請を受けたが、これを辞退した」と説明できる形で体面を保つことが可能になっています。

私の友人であるセミアナリシスのアナリストは、この件でマイクロソフトを「悔しがっている敗者」と位置づけています(詳細はこちら)。しかし、個人的には、そこまでは思いません。明らかなのは、OpenAIが計算リソースに対して飽くなき需要を持っているということです。マイクロソフトはすでにOpenAIの成功に深くコミットしています。しかし、公開企業であるマイクロソフトには株主に対する責任があり、OpenAIはそれを持っていない、もしくははるかに軽い形でしか持っていません。そのため、実際には、OpenAIが新たな資金やパートナーを取り入れて、マイクロソフトが現実的に提供すべき以上の将来的な計算ニーズに対応するのは、結果的にマイクロソフトにとって幸運だったとも言えるでしょう。

誤解しないでください。私は、アルトマン氏がスターゲートを水面下で進めることで、ナデラ氏に決断を迫ったと思っています。この動き自体は問題ありませんでしたが、誰かが「5000億ドル規模のスターゲート発表がドナルド・トランプ氏には絶好のニュースになる」と判断したことで、状況が変わりました。これがMicrosoftのブログ発表と巧妙なROFR合意を生むきっかけとなったのです。

次章では、MGXがどのような組織であり、AI分野でのリーダーシップや投資戦略においてどのような役割を果たしているのか、さらにその資金提供の背景やパートナーシップ、そして、スターゲート・プロジェクトとイーロン・マスク氏の関係について詳しく解説していきますのでお見逃しなく!

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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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