03/04/2024

【半導体・AI】半導体メモリ業界と関連株式の2023年のまとめ&今後の半導体メモリ市場の見通し・将来性 - 後編

a close up of the cpu board of a computerウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 半導体メモリ業界は景気後退に積極的に対応し、当初は半導体メモリ容量関連の設備投資を50%以上削減したが、価格と需要は引き続き下落した。
  • 23年第4四半期には、HBM(広帯域幅メモリー)のAI需要が一部で回復し、SKハイニックスが DRAMの平均販売価格で成長のプラストレンドを牽引した。
  • 2024年の見通しは、半導体メモリ業界の好調を示唆しているが、特にレガシー製品において、半導体業界全体の慣行による過剰補正と供給制約の懸念が残る。

※「【半導体・AI】半導体メモリ業界と関連株式の2023年のまとめ&今後の半導体メモリ市場の見通し・将来性 - 前編」の続き

解決策

この直近の半導体メモリ市場における不況が進行するにつれ、半導体メモリ業界側にはより積極的な措置が求められるようになった。

最初のステップは単純だった。メモリ容量関連の設備投資に直ちにメスを入れることである。

ただし、ここで問題となるのは、わずかな効果が現れるまでに複数の四半期を要することである。

こうして、半導体メモリー関連の設備投資全体を50%以上削減したにもかかわらず、価格と需要は暴落し続けた。

そして、価格が原価近くまで暴落したため、より積極的な対策が求められた。

これには、既存の生産を軒並み約30%削減することが含まれた。

マイクロン・テクノロジー(MU)が先陣を切ったが、同業他社も約1四半期後に追随する形となった。

このような行動と、全般的な市場の安定化が相まって、23年第4四半期にようやく実を結び始めたのである。

また、HBM(広帯域幅メモリー)に対するAI主導の需要が23年第4四半期の回復に大きく関係していたことは、特筆すべきことだろう。

そして、SKハイニックスは、同社のDRAMが23年第3四半期にプラスの平均販売価格の成長を示すという改善傾向を最初に経験している。

このトレンドは第4四半期に同業他社にも波及することとなった。

鋭い目をお持ちの読者の皆様は、ASML(ASML)のメモリ関連設備投資額が2022年には非常に高く、2023年にはさらに高くなっていることにお気づきかもしれない。

これは、前述の「半導体メモリー容量関連の設備投資が削減された」と私が述べたこととどう整合性が取れるだろうか?

答えは簡単である。

中国である。

具体的には、DRAMに関しては長鑫存儲技術(CXMT)、NANDに関しては長江存儲科技(YMTC)である。

今後数四半期におけるこの支出の影響については、明らかにすべきことがたくさんあり、次のセクションで簡単に触れたいと思う。

半導体メモリ市場の2024年の見通し

23年第4四半期、半導体メモリ部門は明らかに好調であり、この傾向は今年も続くと予想される。

WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)の最新予測では、半導体メモリーは今年2022年の水準に戻るとされており、これは妥当な想定であると考える。

そして、これは、前年同期比44.8%の成長を意味する。

ただし、今年を展望する上で、留意すべき重要な点がいくつかある。

まず注目すべきは、半導体メモリメーカーがいつ稼働率を100%まで回復させるかであり、彼らはこれを徐々に、慎重に行いたいだろうと見ている。

というのも、HBMという明るい話題は別として、半導体のエコシステムでは、在庫水準が高すぎる、見通しが立たない、などといった声がまだ多く聞かれるからである。

実際に、2024年通年の見通しを示すことができた企業が非常に少なかったという事実は、非常に示唆に富む指標だったと考えている。

そして、第二に、HBMによる影響である。

SKハイニックスはHBMのリーダーであり、この状況は年が明けても変わることはないだろう。

SKハイニックスはHBM/DDR5に全力を注いでいる。

マイクロン(MU)とサムスンも同じことをするだろう。

つまり、収益性の低い製品への注力は減るということである。

しかし、それらの収益性の低い製品は依然として需要がある。

このような状況は、特にNanyaWinbondのような企業にチャンスをもたらすと見ている。

そして、3つ目に気になるのは、2024年に中国のメモリー・プレーヤーが世界的な影響力を持つようになるかどうかという点である。

長江存儲科技(YMTC)と長鑫存儲技術(CXMT)はどちらも信頼できるプレーヤーであり、過去2年間は確かに支出がかさんでいるように見える。

しかし、その支出は、まだ顕著な程度には世界市場への出荷能力には結びついていないように見える。

そして、それがいつ、どの市場で起こるかを予測するのは難しい。

私の推測では、中低価格帯のスマートフォン、低価格PC、タブレット端末などであろうと見ている。

注視すべき分野であることは間違いない。

最後に留意すべきことは、マイクロン(MU)がほぼ2四半期にわたって警告し続けてきたことである。

それは昨年12月の直近の決算説明会から引用した以下の図に要約されている。

日本語訳:前四半期の決算説明会では、未稼働の装置を戦略的に新技術ノードの立ち上げに振り向けることで、資本効率の高い方法で最先端生産を増加させることをお伝えしました。 最先端ノードではウエハー処理工程数が多くなるため、未稼働の装置を最先端ノードに振り向けるこのアプローチは、当社のウエハー生産能力全体を有意義に減少させます。 従って、今年度初めの当社工場の稼働不足は、年度が進むにつれて、高い稼働率で構造的に低いウェーハ生産能力へと移行します。

さらに、決算説明会の準備発言では、もう少し詳細が述べられている。

「報告書によれば、最先端で十分に使われていないツールの再利用は業界全体の慣行であり、2024年には業界の供給が制約される可能性が高い。これらの要因を考慮すると、マイクロンの2024年度のビット供給の伸びは、DRAM、NANDともに需要の伸びを大きく下回る計画であり、2024年度の在庫日数は減少する見込みです。」

ここで私が懸念しているのは、メモリ業界が上昇局面で過剰修正、過剰投資を行ったように、下降局面でも同じことを行うリスクがあるということである。

言い換えれば、下半期に特定の、主にレガシーな製品が供給不足に陥る事態が起こりうるということである。

そうなれば当然、価格は高騰し、半導体メモリメーカーにとっては朗報となる。

デメリットは、主要なサプライチェーンが再び混乱することだろう。

私はここでは、特に自動車業界への影響が大きいのではないかと見ている。

メモリー業界で何が起きているのか、次に知ることができるのは、3月20日に発表されるマイクロンの決算報告であることから、その内容を興味深く待ちたいと思う。