08/22/2024

中立
クラウドフレア
中立
バリュエーション面では、株価はあまり魅力的ではなく、FCF-SBC倍率がマイナスで、EV/GP倍率が非常に高い水準にあります。
クラウドフレア(NET)の株価予想:最新の決算発表では業績好調の同社の強みとは?今後の株価見通しと将来性に迫る!

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  • 本稿では、2024年度8月1日に発表された、クラウドフレア(NET)の最新の2024年度第2四半期決算と競合他社比較、さらに、テクノロジー面での同社の強み(競争優位性)を詳しく分析していきます。 
  • そして、それらの分析を通じて、同社の株価予想、並びに、今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
  • 同社は堅調な成長を続けており、エッジコンピューティングや企業向け顧客の獲得を通じて今後も成長を維持する見込みです。
  • 最新の2024年第2四半期決算では、顧客オンボーディングを簡素化する「プールオブファンズ」戦略や、AI推論機能の拡充が進展していますが、短期的な財務指標への影響が懸念されています。
  • 同社の株価バリュエーションは高水準にあり、成長に依存しているため、投資家は今後のパフォーマンスに慎重な姿勢をとる必要があると見ています。

※「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」の続き

クラウドフレア(NET)に関して

クラウドフレアNET)は引き続き堅調な成長を続けており、過去3年間で約30%の成長率を維持しています。今後も次のSカーブへのスムーズな移行により、数年間にわたって20%の成長を維持できると私達は期待しています。同社のコア事業である、CDN事業が成熟する中、現在の成長を牽引しているのはSASEやエンタープライズネットワーキングであり、次の成長の波はエッジコンピューティングが担う見込みです。

同社が企業向け顧客に注力している結果、直近の2024年度第2四半期で新たに168社の大規模顧客(年間経常収益が10万ドル以上の顧客)を獲得し、これにより大規模顧客の総数は3,046社となりました。


関連用語

Sカーブ:成長が緩やかに始まり、急速に成長し、その後再び緩やかになるという、企業や技術の成長パターンを表す曲線。

CDN事業:コンテンツ配信ネットワーク(Content Delivery Network)の略で、ウェブコンテンツを効率的にユーザーに届けるためのサービス。ウェブサイトの速度向上や負荷分散に使われる。

SASE(Secure Access Service Edge:セキュア・アクセス・サービス・エッジ):ネットワークセキュリティとWAN(広域ネットワーク)サービスを統合したクラウドベースのアーキテクチャで、セキュアな接続を提供する。

エンタープライズネットワーキング:企業向けのネットワーク技術やサービスのこと。企業内での通信やデータ共有を効率化するためのインフラを指す。

エッジコンピューティング:データ処理を中央のデータセンターではなく、データの生成源に近い場所(エッジ)で行う技術。リアルタイム処理や帯域幅の削減に役立つ。


クラウドフレア(NET)の最新の2024年第2四半期決算における業績に関して

クラウドフレア(NET)は、2024年8月1日に最新の2024年度第2四半期決算を発表しています。そして、主な財務および業績のハイライトは以下の通りです。

業績ハイライト

・ネットリテンション率(NRR)は、新たな「プールオブファンズ」戦略によって3ポイント減少し、112%となりました。この戦略は顧客のオンボーディングを円滑にすることを目的としています。

残存履行義務(RPO)は前年比で37%増加し、売上およびNRRの成長を上回っており、将来の強力なコミットメントを示唆しています。

・2024年会計年度の売上予測は、1,650百万ドルから1,658百万ドルに引き上げられ、27.9%の成長が見込まれています。

・フリーキャッシュフロー(FCF)のマージンは10%を見込んでいます。

・従業員一人当たりの売上高は379,000ドル(1,477.7百万ドル / 3,902人)と非常に高い水準です。

・販売およびマーケティング(S&M)費用は、前年の41%から37%に減少しました。

企業戦略および販売戦略に関して

・CEOのマシュー・プリンス氏は、新たに再編されたセールスチームに対し満足していると述べています。

・新任の最高収益責任者(CRO)であるマーク・アンダーソン氏の早期成果を高く評価しています。

・販売生産性が引き続き二桁台で改善されています。

・セールス部門の採用が大幅に増加し(150%以上増加)、組織の強化が進んでいます。

開発者エコシステムおよびAIの分野に関して

・プラットフォームを利用する開発者数は240万人に達し、過去3ヶ月で40万人増加しました。

・Workers AIを利用する開発者アカウントは、前四半期比で67%増加しました。

・AI推論は現在、世界167都市で提供されており、推論リクエストは前四半期比で700%増加しました。

・Stack Overflowの調査では、主要なクラウドプロバイダーに次いで、4番目に人気のある開発者プラットフォームとして評価されています。

・開発者が来年最も期待しているプラットフォームとして、アマゾン(AMZN)のAWS、アルファベット(GOOG/GOOGL)のGoogle、マイクロソフト(MSFT)のAzureを上回り2位にランクされています。

ネットワークおよび設備投資に関して

・2024年第2四半期のネットワーク投資比率は6%で、2024年会計年度の後半には10-12%に増加する見込みです。

課題と注力分野に関して

・同社は利益率の改善に苦戦しているようです。

・「プールオブファンズ」戦略は、顧客のオンボーディングや長期的な関係構築に有効ですが、短期的な財務指標の予測可能性に影響を与える可能性があります。

総じて、クラウドフレアは強力な成長を続けており、開発者の間での人気も高まっています。また、企業向け顧客の獲得やAI機能の強化でも順調な進展を見せています。同社のセールス組織の改善やネットワークの拡充への戦略的な取り組みは、短期的な利益率の圧力を受けつつも、長期的な成長への強いコミットメントを示しています。


関連用語

ネットリテンション率(NRR):既存顧客がどれだけ継続して利用しているかを示す指標。通常は、追加購入や契約更新による収益の増加を含めて計算される。

プールオブファンズ:顧客がサービスを利用する際に、複数の支払いをまとめて管理しやすくする仕組みを指す。この戦略により、顧客はサービス開始時の手続きが簡素化され、クラウドフレアにとっても新規顧客の導入がスムーズに進む効果がある。

Workers AI:クラウドベースのAIサービスで、特定のタスク(例: データ処理、推論など)を処理するために設計されたプラットフォーム。

AI推論:機械学習モデルを使って、新しいデータに対して予測や判断を行うプロセス。AIが学習した知識を使って実際の問題を解決すること。

Stack Overflow:プログラミングや技術的な質問に特化したQ&A形式のウェブサイト。開発者やエンジニアが知識を共有する場として広く利用されている。


クラウドフレア(NET)のバリュエーションに関して

(出典:筆者作成)

クラウドフレア(NET)の「Rule of X」の水準は優れているものの、成長に大きく依存しており、FCF-SBCマージンへの配慮が不足しています。また、バリュエーション面では、株価はあまり魅力的ではなく、FCF-SBC倍率がマイナスで、EV/GP倍率が非常に高い水準にあります。これは、数ヶ月前までのスノーフレーク(SNOW)と同様に、投資家が完璧な業績を期待しており、今後数年間にわたって何の失敗もなく計画通りに進むことを前提としているためです(市場のアナリストは今後5年間で27~30%の成長を予測しています)。

さらに、私たちのDCFモデルに基づくと、同社の1株当たりの本質的価値は79.07ドルとなっていることから、同社の現在の株価は妥当な範囲にあると評価しています。弊社のDCFモデルに基づくバリュエーションの詳細と株価予想は、下記リンク内のクラウドフレアのシートにおける「Intrinsic value per share(1株当たりの本質的価値)」をご覧ください。

DCF法による各銘柄のバリュエーション詳細

また、クラウドフレアに関するさらに詳しい分析は、下記の当社の最新の4部作のレポートをご覧ください。


上記テーブルにおける関連用語

※各用語の詳細な解説は、【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」をご覧ください。

Rule of X (inc. NTM growth & LTM SBC):Rule of X(今後12カ月間の成長率と直近過去12カ月間のSBC含む)

LTM EV/ (FCF-SBC) :企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)

Financials / Valuation / Price Chg / Vol Chg:財務 / バリュエーション / 株価変動 / ボラティリティ変動

Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)

EV/(FCF-SBC):企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)

EV/GP:企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益

DCF Val. Discount:DCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準

Price Change:株価変動

Implied Vol:インプライド・ボラティリティ

Hist Vol:ヒストリカル・ボラティリティ

Implied Vol vs Hist Vol:インプライド・ボラティリティとヒストリカル・ボラティリティの差


クラウドフレア(NET)に関する最新のレポート

① Part 1:クラウドフレア / NET:サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジー上の競争優位性(強み)分析と今後の将来性(前編)

① Part 2:クラウドフレア / NET:SASEにおける同社の強み&競合分析・比較(PANW、FTNT、ZS)(前編)

① Part 3:クラウドフレア / NET:エッジ・コンピュート分野における同社のテクノロジー面での強み&競争優位性

① Part 4:クラウドフレア(NET):2024年1Q決算速報・財務分析と今後の株価見通し(Cloudflare)


その他のテクノロジー銘柄関連レポート

1. ① Part 1:クラウドフレア / NET:サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジー上の競争優位性(強み)分析と今後の将来性(前編)

2. ①ルーブリック / RBRK(IPO・新規上場):サイバーセキュリティ銘柄の概要&強み分析と今後の株価見通し(Rubrik)

3. クラウドストライク(CRWD)システム障害で世界中のPCがクラッシュ!原因と対策、今後の株価への影響と将来性を徹底解説!

また、私のその他のテクノロジー関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、私のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。

さらに、その他のクラウドフレア(NET)はに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、クラウドフレアのページにアクセスしていただければと思います。

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