11/23/2024

エヌビディア(NVDA)の株価は5年後も堅調?決算説明会におけるジェンセンCEOのビジョンの分析を通じて将来性に迫る!

the nvidia logo is displayed on a tableウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディア(NVDA)の11月20日に発表された最新の2025年第3四半期(暦年:2024年度第3四半期)決算、並びに、決算説明会におけるジェンセンCEOのビジョンとその課題の分析を通じて、同社の将来性を詳しく解説していきます。
  • ジェンセン・フアン氏はAIとデータセンター近代化に関するビジョンを提唱していますが、既存のデータセンターをすべて自社GPUで動かすという主張は非現実的であるように見えます。 
  • 生成AIは新しい市場を生み出していますが、自動運転技術と同様に、過去の教訓を活かし現実的な投資判断が必要であると考えます。 
  • エヌビディアの成長は顕著ですが、AI加速型データセンターの需要には調整期間が必要であり、今後12カ月以内にその影響が表れる可能性が高いと予測しています。

※「エヌビディア(NVDA)株価の今後の予想とは?最新の2025年第3四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!​」の続き

エヌビディア(NVDA)のジェンセンCEOのビジョンとその課題

エヌビディア(NVDA)のCEOであるジェンセン・フアン氏のAIに関するビジョンを語る前に、彼の仕事の一部として、説得力のある未来像を描き、それが正しいと私たちに信じさせる役割があることを理解する必要があります。

彼はこうしたプレゼンテーション能力に非常に長けていますが、それが必ずしも正しいとは限りません。

その一例が、2017年後半に彼が示した自動運転に関するビジョンです。

以下のグラフィックがその視点を物語っています。

NVIDIA、2021年までに自動運転車への注力を表明

CEOのジェンセン・フアン氏、「小規模なAIプロジェクトには関心がない」と強調

(出所:Nikkei Asia

この2021年のビジョンに固執していたのは、ジェンセン氏だけではありません。

当時の主要プレイヤーたちもほぼ例外なく、この未来を現実のものとする方向に進んでいました。

BMWグループ、インテル、モービルアイが協力し、2021年までに完全自動運転を実現へ

自動車業界、テクノロジー業界、コンピュータービジョンや機械学習分野のリーダーたちが協力し、2021年までに自動運転技術の量産化を目指すソリューションを開発

しかし、2021年までにこのビジョンが実現したとは言い難く、2025年現在でも自動運転車が一般に普及しているとは到底言えません。

確かに、Waymoはサンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックスでロボタクシーを運行しています。

また、Waymoが依然として資金調達を続けており、企業価値が450億ドルと報じられているのも事実です(詳細はこちら)。

しかし、この評価額はモルガン・スタンレーがかつて予測していた数値に比べればかなり控えめです(詳細はこちら)。

加えて、Waymoがいまだに黒字化には程遠いという重要な事実も見逃せません(詳細はこちら)。

(原文)But Waymo still is a money-loser. Alphabet’s “Other Bets,” which includes the driverless company, brought in $365 million during the second quarter of this year, up from $285 million in Q2 2023. But the division lost $1.1 billion on operating income, an increase over $813 million lost in 2023.

(日本語訳)それでも、Waymoはいまだに赤字を抱えています。Alphabetの「Other Bets」セグメント(Waymoを含む)は、今年第2四半期に3億6500万ドルの収益を上げ、2023年第2四半期の2億8500万ドルから増加しました。しかし、このセグメントの営業損失は11億ドルに達しており、2023年の8億1300万ドルからさらに拡大しています。

念のためお伝えすると、第3四半期(2024年)でも状況は改善していませんでした。

(原文)As to our Other Bets, for the third quarter, revenues were $388 million, and operating loss was $1.1 billion. I’ll highlight just a couple of accomplishments in the quarter for Waymo and Wing.

(日本語訳)「Other Bets」セグメントの第3四半期の売上高は3億8800万ドル、営業損失は11億ドルでした。この期間中のWaymoとWingの主な成果について、いくつかポイントを挙げてお伝えします。

念のため補足すると、これは年間約44億ドルの営業損失ペースに相当します。

ちなみに、Google(当時の社名)が自動運転車プロジェクトを開始したのは2009年のことです。

それから15年が経ち、現在では年間44億ドルもの損失を計上している状況です。

自動運転のケースと現在進行中の生成AIの状況には違いもありますが、共通点も多く見られます。

過去の教訓をしっかりと学び、活かすことが重要でしょう。

それでは、ジェンセン氏のビジョンについて話を進めましょう。

まず、Q&Aで出た「AI関連ハードウェアに『調整期間』が必要かどうか」という質問から取り上げます。

(原文)And then Jensen, my main question, historically, when we have seen hardware deployment cycles, they have inevitably included some digestion along the way. When do you think we get to that phase? Or is it just too premature to discuss that because you're just at the start of Blackwell? So, how many quarters of shipments do you think is required to kind of satisfy this first wave? Can you continue to grow this into calendar '26? Just how should we be prepared to see what we have seen historically, right, a period of digestion along the way of a long-term kind of secular hardware deployment?

(日本語訳)ジェンセンさん、お伺いしたいのですが、これまでのハードウェア導入サイクルでは、必ず途中で「調整期間」が訪れてきました。このフェーズに入るのはいつ頃だとお考えでしょうか? それとも、Blackwellがまだ始まったばかりで、今の段階ではその話をするのは時期尚早でしょうか? 最初の需要の波を満たすには、どのくらいの四半期分の出荷が必要だとお考えですか? また、この成長を2026年まで維持することは可能でしょうか? 長期的なハードウェア導入プロセスにおいて過去に見られた「調整期間」を考慮し、どのような準備が必要だとお考えか、お聞かせいただけますか?

ジェンセン氏の回答は、予想通り長く回りくどいものでしたが、次のような言葉から始まりました。

(原文)The way to think through that, Vivek, is I believe that there will be no digestion until we modernize $1 trillion with the data centers. Those -- if you just look at the world's data centers, the vast majority of it is built for a time when we wrote applications by hand and we ran them on CPUs. It's just not a sensible thing to do anymore. If you have -- if every company's capex -- if they're ready to build a data center tomorrow, they ought to build it for a future of machine learning and generative AI because they have plenty of old data centers.

(日本語訳)ヴィヴェック、この件について私が考えるのはこうです。「調整期間」が訪れるのは、データセンター全体で1兆ドル規模の近代化が進んでからではないかと思います現在の世界中のデータセンターの大半は、アプリケーションを手作業で開発し、CPU上で動かしていた時代に設計されたものです。今や、そうした方法はもはや合理的ではありません。もし各企業が今すぐ新しいデータセンターを建設するのであれば、それは機械学習や生成AIを前提とした未来型のものにすべきです。古いデータセンターはすでに十分存在しているのですから。

ジェンセン氏が現在存在する1兆ドル規模のデータセンターについて言及するのは今回が初めてではありません。

彼はこれらを「古いデータセンター」と呼び、あたかもそれらがほぼ無価値であるかのような印象を与えています。

彼のビジョンでは、既存のデータセンターはすべて近代化され、自社のGPUで動くようになるというものです。

しかし、これは完全に誤りです。

既存のデータセンターは、それぞれ特定の目的やニーズに対応するために設計・構築されており、そこには多種多様なワークロードが存在します。

たとえば、IBMのブログでは、以下のような代表的なワークロードが挙げられています:

・トランザクショナルワークロード:ECサイトでの購入、支払い、商品検索など

・バッチワークロード:給与計算、大量データ処理(請求書処理や気象モデリング、銀行の照合業務など)

・分析ワークロード:データウェアハウスやビッグデータ分析

・高性能コンピューティング(HPC)ワークロード:気象モデリングやシミュレーション

・リアルタイムワークロード:株取引アプリ、動画配信サービス、スポーツベッティングプラットフォーム、工場の自動化やERPシステムなど

ここで注目すべきなのは、特にHPCワークロードの一部、主にスーパーコンピュータ上で実行されるものが、高度な並列処理を必要とし、大量のGPUやカスタムASICアクセラレータを使用している点です。

この分野では、大規模言語モデル(LLM)の学習や推論といった新しい重要なワークロードが加わりつつあり、OpenAIのChatGPTなどがこうしたワークロードを加速させています。

ただし、HopperやBlackwellを基盤とした計算インスタンスは、これらのLLMの学習と推論のために特化して設計されたものです。

これらは工場のERM(Enterprise Risk Management:企業リスク管理)、MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)といったシステムを動かしたり、ECサイトで顧客取引を処理するためのものではありません。

この背景を考えれば、「世界中のデータセンターを近代化し、すべてを自社のGPUで動かすべきだ」というジェンセン氏の主張は完全に的外れです。

そのようなことは起こらないと見ています。

さて、ジェンセン氏は「調整期間」に関する質問への回答を続けます:

(原文)And so, what's going to happen over the course of the next X number of years, and let's assume that over the course of four years, the world's data centers could be modernized as we grow into IT, as you know, IT continues to grow about 20%, 30% a year, let's say. But let's say by 2030, the world's data centers for computing is, call it, a couple of trillion dollars. We have to grow into that. We have to modernize the data center from coding to machine learning.

(日本語訳)これから数年で何が起こるのかを考えてみましょう。例えば、今後4年間で世界中のデータセンターが近代化されると仮定します。IT業界全体が毎年20~30%成長し続けていることを考えれば、これは十分に現実的です。さらに、2030年までには、世界のデータセンター市場が数兆ドル規模に達するとしましょう。我々はその成長に適応し、進化していかなければなりません。そして、データセンターを従来のコーディング中心の仕組みから、機械学習中心のものへと近代化していく必要があります。

ここでジェンセン氏が言っているのは、「2030年までは調整期間が訪れない」ということです。

しかし、これは到底現実的な見解とは言えません。

実際、エヌビディアのデータセンター事業の成長率はすでに鈍化しつつあります。

その一因は供給制約かもしれませんが、現実的な問題も無視できません。

ハイパースケーラー企業がこれら「新しい」データセンターの構築にどれほどの設備投資(CapEx)を投じ続けるのでしょうか?

投資に見合うリターンがほとんど得られない中で、FOMO(機会損失への恐れ)だけでは限界があります。

いずれ現実と向き合わざるを得ない時が訪れるでしょうし、それが2030年まで先送りになるとは到底思えません。

さらに、「データセンターをコーディングから機械学習へ近代化する」という発言は完全に的外れであるように見えます。

確かに機械学習は今や黄金期を迎えていますが、それは新しいユースケースであり、新たなワークロードの一つに過ぎません。

過去の仕組みを置き換えるものではなく、そこに新たに付け加えられ、拡張されるものです。

皮肉なことに、ジェンセン氏自身もこの事実を理解しているようです。

調整期間に関する質問に対する締めくくりの発言で、彼は次のように述べています:

(原文)The second part of it is generative AI. And we're now producing a new type of capability the world's never known, a new market segment that the world's never had. If you look at OpenAI, it didn't replace anything. It's something that's completely brand new. It's, in a lot of ways as when the iPhone came, was completely brand new. It wasn't really replacing anything. And so, we're going to see more and more companies like that.

(日本語訳)もう一つのポイントは生成AIです。私たちは、これまで世界になかったまったく新しい能力や市場セグメントを生み出しています。たとえばOpenAIは、何か既存のものを置き換えたわけではなく、完全に新しい存在として誕生しました。これは、かつてiPhoneが登場したときと似ています。iPhoneも何かを単に置き換えたのではなく、全く新しいカテゴリーとして登場しました。同様に、今後もこのような企業がどんどん増えていくと考えられます。

これまでの話を踏まえると、「既存のデータセンターをすべて近代化しなければならない」というジェンセン氏の主張は、現実的とは言い難いものです。

エヌビディア(NVDA)に対する結論

生成AIは確かに画期的な新技術で、多岐にわたるユースケースで活用されていくのは間違いありません。

しかし、現在は明らかに大きな過熱状態にあることも事実です。

たとえば、アルファベット(GOOG/GOOGL)は「投資不足より過剰投資のほうがリスクが少ない」と公言しており、これはエヌビディア(NVDA)にとって非常に都合の良い状況です。

結果、エヌビディアは過去6四半期で大きな成長を遂げています。

しかし、「既存の1兆ドル規模のデータセンターを近代化しなければならない」というジェンセン氏の発言や、「2030年までは調整期間が訪れない」という見解には説得力がありません。

汎用データセンターの需要は今後も存続するでしょうし、AI加速型データセンターの「調整期間」は、彼の予想よりもずっと早く訪れると考えられます。

私の予想では、その調整期間は今後12カ月以内に始まる可能性が高いでしょう。

どう展開するのか、注目していきたいと思います。

また、インベストリンゴのもう1人の半導体セクター・アナリストであるダグラス・ オローリン氏も、エヌビディアの最新の決算発表の直後に下記のレポートを執筆しています。

もし関心がございましたら、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。

その他のエヌビディア(NVDA)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、エヌビディアのページにアクセスしていただければと思います。

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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

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