11/26/2024

【半導体・AI】エヌビディア(NVDA)とソフトバンクのAI分野における協業を徹底解説!

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  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディア(NVDA)とソフトバンクのAI分野における協業に関して詳しく解説していきます。
  • エヌビディアは、ソフトバンクの支援を受け、日本でのAIグリッドプロジェクトを通じて、エッジAI推論やインフラ分野でのリーダーシップを強化しようとしています。 
  • ソフトバンクはこれまで、Yahoo Japanやアリババ、iPhone事業での成功を通じて、戦略的な投資と先見性を発揮しており、エヌビディアのAI技術を活用する可能性にも大きな期待が寄せられています。 
  • エヌビディアのAI Aerial RANソリューションは、変化するAIワークロードに柔軟に対応できる点が強みであり、通信分野の課題を抱えつつも、新たな市場機会を切り開く可能性を秘めています。 
  • さらに、ソフトバンクが展開するAIアプリマーケットは、エヌビディアの影響力を拡大し、AppleのApp StoreのようなAIプラットフォームを構築することで、競争優位性をさらに高める可能性があります。

AIサミットジャパンで、エヌビディア(NVDA)のCEOであるジェンセン・フアン氏が、ロボティクスやAIファクトリー、エッジAIスケーリングに関する最新の革新を発表しました。

特に注目を集めたのは、ソフトバンクの孫正義氏への言及と、2014年にソフトバンクがエヌビディアの買収を提案していたという意外なエピソードでした。

また、サミットでは、エヌビディアが日本で推進するAIグリッド計画も強調されました。

フアン氏は、孫氏がYahooやアリババ(BABA)への早期投資を通じて、日本のテクノロジーとeコマースの進化に多大な影響を与えたことを高く評価しました。

さらに、孫氏がVodafone Japanを買収し、日本でのアップル(AAPL)のiPhone独占販売権を獲得したエピソードにも触れ、先見性の高さを称賛しました。

2014年には、孫氏が率いるビジョンファンドがエヌビディアに多額の投資を行い、同社のAI分野における可能性をいち早く見抜いていました。

しかし、ビジョンファンドの経営難により、2019年までにソフトバンクはエヌビディア株を手放し、その判断を孫氏は後悔しているといいます。

現在、ソフトバンクはエヌビディアとの連携を目指し、通信やIT分野での強みを活かして、日本市場でのAIソリューション拡大に取り組んでいます。

ソフトバンクは、AI向けクラウドデータセンターを5カ所建設する計画を発表しました。

これらのデータセンターは、合計25エクサフロップス(ExaFLOPS)の計算能力を持ち、FP8(8ビット浮動小数点)精度で測定される見込みです。

エクサフロップスとは、計算能力を表す単位で、1秒間に1エクサ回(10の18乗回)の浮動小数点演算(FLOP: Floating Point Operations Per Second)が実行可能であることを示します。

FP8はFP16(16ビット浮動小数点)に比べて処理効率が倍になるため、25エクサフロップスはFP16換算で約12.5エクサフロップスに相当します。

FP8(8ビット浮動小数点)は、ビット数が少ないため計算速度が速く、メモリ効率にも優れています。

そのため、AI推論や軽量化が求められる場面でよく使用されます。

ただし、精度は比較的低いため、高精度が必要な用途には向きません。

しかし、低コストで大量のデータ処理を効率的に行うことが可能です。

一方で、FP16(16ビット浮動小数点)は、FP8よりも精度が高く、広い数値範囲を扱えるため、AIトレーニングや推論など、精度が重要なシーンで広く利用されています。

FP16は、計算効率と精度のバランスが良いため、多くの深層学習フレームワークでも標準的に採用されています。

このように、FP8とFP16はそれぞれの特性を活かして、AI分野で異なる用途に応じた最適な計算環境を提供しています。

FP8は軽量で高速な処理、FP16は精度を重視した計算に適しています。

また、ソフトバンクはエヌビディアのAI Aerial基地局(エヌビディアが提案する次世代の通信インフラで、AI技術を活用してRANを最適化するためのソリューション)の導入を進めるほか、アプリマーケットや開発者ツール、無料クレジットを提供し、AIエコシステムの拡大を目指しています。

これにより、エヌビディアのインフラを基盤としたAI技術の普及を加速させる狙いがあります。

一方で、エヌビディアが無線アクセスネットワーク(RAN)や通信機器市場にどれだけ浸透できるかは未知数です。

しかし、もしこの分野で成功を収めれば、同社のリーダーシップが一層強化されるでしょう。

ソフトバンクの計画は、メタ・プラットフォームズ(META)の1,400エクサフロップス(FP8換算)やイーロン・マスク氏のX.aiの400エクサフロップスと比べると規模は小さく、実験的な試みと言えます。

特に推論処理に特化し、企業向けユースケースにフォーカスしている点が特徴です。

注目すべきは、ソフトバンクがエリクソン(ERIC)やノキア(NOK)のRAN基地局をエヌビディアのAI Aerialソリューションに置き換える可能性があることです。

これが実現すれば、通信業界にとって大きな転換点となるでしょう。

エヌビディア(NVDA)にとって、このプロジェクトは、専用AIチップに比べて柔軟性に優れるGPGPU(General-Purpose Graphics Processing Unit:もともと画像処理や3Dレンダリングを行うために設計されたGPUを、一般的な計算処理に活用する技術やアプローチ)アーキテクチャの強みをさらに拡大する取り組みです。

cuDNN(エヌビディアが開発したGPU上でのDeep Learningの計算を効率化するためのライブラリ)はその代表的な活用例ですが、CUDA(エヌビディアが開発したGPGPUプログラミングのためのプラットフォームおよびAPI)ライブラリはそれだけにとどまらず、100種類以上にわたる幅広い機能を備えています。

GPGPUは、CPUとASICやAI専用チップの中間的な存在であり、CPUより効率的でありながら、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定の用途や機能に特化して設計・製造されたチップ)ほど用途が限定されない汎用性を持っています。

エヌビディアのGPGPUの大部分はCUDAコアで構成されており、最適化されたアプリケーションでは最大10倍の処理速度を実現します。

ASICは特定のタスクで100倍の高速化が可能ですが、GPGPUはCUDAライブラリの継続的な拡張によって、時間とともに対応可能な用途を広げていく柔軟性が特徴です。

GPGPUを活用してRAN(無線アクセスネットワーク)を加速することは、エヌビディアにとって新たな市場を切り開く重要なステップとなります。

RANは、デバイスとコアネットワークをつなぐインフラで、従来はエリクソンやHuaweiといったベンダーの独自技術に依存していました。

一方、Open RANはインターフェースの標準化とハードウェアとソフトウェアの分離を目指し、競争とイノベーションを促進する動きですが、通信業界の保守的な性質やレガシーシステムへの依存、そしてOpen RANの投資効果が不透明であることが普及の妨げとなっています。

従来のRAN機器では、インテル(INTC)のSapphire Rapids(インテルが開発したサーバーおよびデータセンター向けの第4世代Xeonスケーラブルプロセッサのコードネーム)のようなCPUや、信号処理やRF(無線周波数)操作に特化したASICが使われてきました。

一方で、エヌビディアのAI Aerial RANソリューションは、Grace CPU(エヌビディアが開発したデータセンターおよびAI用途向けのプロセッサ)とGPGPUを組み合わせ、専用のCUDAライブラリを活用することでASICを置き換え、AIワークロードに柔軟に対応します。

固定されたタスクにおいてはGPGPUはASICほど効率的ではないものの、適応性の高さが大きな強みです。

また、エヌビディアは4ナノメートルといった最先端のプロセスノードを採用しており、古い技術に依存する競合他社に対して、性能と効率の両面で優位性を発揮しています。

また、エヌビディアは、生成AI(GenAI)を活用し、AI Aerial RANをRAN(無線アクセスネットワーク)インフラ内で第三者のAIアプリケーションを直接ホストできるプラットフォームとして展開しています。

これにより、世界人口の99%をカバーする可能性があります。

エヌビディアはこれまで、GPGPUとCUDAエコシステムを武器にAIトレーニング分野で圧倒的な優位性を築き、その高速性と柔軟性は研究者にとって不可欠なものとなってきました。

しかし、推論(インフェレンス)の分野では競争が激化しており、ブロードコム(AVGO)やマーベル・テクノロジー(MRVL)が提供するASICは、固定化されたワークロードに対して低コストという利点を持っています。

一方、エヌビディアのAI Aerial RANは柔軟性と進化するワークロードへの適応力を強みとし、ASICの限界を克服しています。

エヌビディアは、CUDAエコシステムを活用しながら、RAN分野での主導権を迅速に確立する必要があります。

また、大規模な設置基盤を構築することが重要です。

一方、ソフトバンクのような通信事業者は、AIの計算能力をRAN基地局に集約することで、AI駆動型市場の収益化を目指しています。

このアプローチにより、スマートシティやIoTなどの用途で10ms(10ミリ秒)以下の超低遅延を実現可能です。

また、ハードウェアコストを削減しつつ高性能なAI推論を提供できるため、エヌビディアは推論市場でのシェア拡大に向けた有利な立場を築くことが期待されています。

通信事業者(Telco)は、エッジコンピューティング(データを中央のクラウドやデータセンターに送るのではなく、データが生成された「端(エッジ)」で処理を行う分散型のコンピューティングモデル)分野でイノベーションの遅さや開発者に優しくないビジネスモデルといった課題に直面しています。

日本や中国での地域的な成功例は、グローバル展開の参考になるものの、全体的な進展は鈍い状況です。

一方、インテルやHuaweiといった競合もRAN(無線アクセスネットワーク)ソリューションを強化しています。

特にHuaweiは、エンドツーエンドのエコシステムやクラウド技術の強みを活かし、制裁を受けていない地域でエヌビディアの戦略を模倣する可能性があります。

また、ソフトバンクのAIマーケットプレイスは、エヌビディアにとってアップルのApp Storeのようなプラットフォームを構築するチャンスを示しています。

これにより、バリューチェーンのさらなる取り込みが可能となり、エヌビディアの競争優位性を強化する道が開けます。

ただし、この戦略の成果は、エヌビディアのADAS(先進運転支援システム)チップ事業に似たものになる可能性もあります。

具体的には、市場で一定の浸透は果たすものの、分散した戦略や投資対効果の制約により、成長が限定的になるリスクがあるという点です。

以上より、エヌビディアとソフトバンクの取り組みは、日本市場におけるAI技術の普及と通信インフラの革新に向けた重要な一歩となる可能性が高く、今後も注目していきたいと思います。

また、インベストリンゴの半導体セクター・アナリストであるダグラス・ オローリン氏ウィリアム・キーティング氏が、2024年11月20日に発表された、エヌビディアの最新の2025年度第3四半期決算の直後に下記のレポートを執筆しています。

もし関心がございましたら、是非、こちらも併せて、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。

ダグラス・ オローリン氏

ウィリアム・キーティング氏

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