01/17/2025

【半導体】エヌビディア(NVDA)と量子コンピュータの関係とは?ジェンセンCEOは実用化には20年程度かかる可能性が高いと予測?

the nvidia logo is displayed on a tableウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディア(NVDA)と量子コンピュータの関係に関して詳しく解説していきます。
  • エヌビディアのジェンセンCEOは、2025年のCESでの基調講演翌日に行われたアナリスト向けQ&Aセッションにおいて、量子コンピューティングが少量データで大規模計算を必要とする問題に適していると述べ、実用化には20年程度かかる可能性が高いと予測しています。
  • ジェンセン氏の発言がきっかけで、量子コンピューティング関連株が最大50%急落しましたが、これらの銘柄は直近6か月で大幅な上昇を遂げており、一部では依然として「存在的脅威」との見解が示されています。
  • 量子コンピューティングにおいても、エヌビディアは高速な従来型コンピューターが必要不可欠であると主張し、多くの企業が同社のハードウェアを活用している点を強調しています。

量子コンピュータはエヌビディア(NVDA)の存続を脅かすのか?

足元、量子コンピュータ分野に関する初めての分析レポートをリリースしました。本稿への理解を一層深めるために、併せてご覧いただければと思います。

そして、このレポートの最後に、次の質問を投げかけました:

エヌビディアのCEOであるジェンセン氏が決算発表で量子コンピューティングに言及するのは、どれくらい先のことになるでしょうか?私の予想では、そう遠くはないでしょう。では、量子コンピューティングの進展を楽しみにしたいと思います!

実際、エヌビディア(NVDA)のCEOであるジェンセン氏は、2025年のCESでの基調講演翌日に行われたアナリスト向けQ&Aセッションで、自身の見解を明らかにしています。量子コンピューティングに関する話題が出たのは、比較的広い意味合いを持つ質問がきっかけでした。

(原文)Jensen you guys have made some announcements on quantum computing. Can you share with us your view on how this technology develops over time? Is your strategy a longer term pick, with a time frame of five, ten, fifteen years? What is the difference between what quantum computing will be doing versus accelerating computing platforms that you have?

(日本語訳)ジェンセン、量子コンピューティングに関する発表をいくつかされていますが、この技術がどのように発展していくとお考えでしょうか?貴社の戦略は、5年、10年、15年といった長期的な視点に基づくものでしょうか?また、量子コンピューティングが果たす役割と、現在提供されている高速計算プラットフォームとの違いはどのような点にあるのでしょうか?

ジェンセン氏の回答は、Q&Aセッション中の他の回答と同様にかなり長いものでしたが、その中でも特に注目を集めたのが以下の発言です。

(原文)So we're extending CUDA to quantum to quantum and they use us for simulating the algorithms, simulating the architecture, creating the architecture itself and developing algorithms that we can use someday. When does that someday come? We're probably somewhere between in terms of the number of qubits you know order of five orders of magnitude or six orders magnitude away and and so if you kind of said 15 years for very useful quantum computers that would probably be on the early side. If you said you know 30, that’s probably on the late side. But if you picked 20 I think a whole bunch of us would believe it..

(日本語訳)私たちはCUDAを量子計算にも拡張しています。これを使ってアルゴリズムやアーキテクチャのシミュレーション、さらにはアーキテクチャそのものの構築や、将来的に利用可能なアルゴリズムの開発を行っています。その『将来』とはいつ来るのでしょうか?量子ビットの数で言えば、まだ5桁から6桁のオーダーで不足している状況です。非常に実用的な量子コンピューターが登場するタイミングを15年後と見るなら、それは少し早い見積もりでしょう。一方で30年後と言うなら、少し遅いかもしれません。20年後と予測するのが妥当だと、多くの人が考えるのではないでしょうか。

この発言は、量子コンピューティング関連株にとって「波紋を広げる一言」となり、主要な4銘柄は瞬く間に最大50%近く急落しました。

イオンキューの株価推移

(出所:Yahoo Finance)

とはいえ、これらの量子コンピューティング株にあまり同情しすぎる必要はありません。この6か月間で驚異的な上昇を遂げており、2024年末の停滞状態から救い出した奇跡的な「サンタクロース・ラリー」のおかげで、大幅な値上がりを記録しているからです。

また、一部では興味深い反応も見られました。その中には、「量子コンピューティングはエヌビディアにとって『存在的脅威』をもたらす」と主張する反論記事も登場しました

(日本語訳)量子コンピューティングは「エヌビディアにとって存亡の危機」— アナリストの指摘

エヌビディア(NVDA)のCEOジェンセン・フアン氏が今週、「長期的な課題」として軽視した量子コンピューティングは、AIの巨人である同社にとって実際には存亡を揺るがす脅威であると、あるアナリストが水曜日に指摘しました。この発言を受け、イオンキュー株を含む関連銘柄が急落しました。

(出所:Investor's Business Daily

(原文)"Once quantum computing becomes powerful enough, it will likely replace some of the uses of GPU data centers with a much smaller footprint and much faster computation," Luria said. "That means quantum computing is an existential threat to Nvidia, which it would then want to wish away."

(日本語訳)「量子コンピューティングが十分に高性能になれば、GPUデータセンターの一部の用途を、より小型でさらに高速な計算能力を持つ形で置き換える可能性があります」とルリア氏は述べています。「つまり、量子コンピューティングはエヌビディアにとって『存在的脅威』であり、エヌビディアとしてはそれを避けたいと願うはずです。」

Dウェイブ・クアンタム(QBTS)とイオンキュー(IONQ)からも強い反応がありました。両社ともこの件についてプレスリリースを発表し、特にDウェイブ・クアンタムのCEOはCNBCの「The Exchange」に出演して、ジェンセン・フアン氏の見解が誤っている理由を詳しく説明しました。

では、直近のQ&Aセッションでジェンセン・フアン氏は量子コンピューティングについて他に何を語ったのでしょうか?また、Dウェイブ・クアンタムやイオンキューは彼の発言に具体的にどのように反応したのでしょうか?さらに、量子コンピューティング企業は本当にエヌビディアにとって「存在的脅威」と言えるのか?もしそうだとしたら、先週の売り込み後に買いの好機を提供していると言えるのでしょうか?詳しく見ていきましょう!


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エヌビディア(NVDA)のジェンセンCEOの追加コメント

エヌビディア(NVDA)のジェンセンCEOは、量子コンピューティング全般についてどのように考えるべきかを説明するところから話を始めました。

(原文)Quantum Computing is not good at large data problems, it’s good for small data problems with large compute. The reason for that is because the way you communicate with a quantum computers using microwaves and terabytes of data is not a thing for them.

(日本語訳)量子コンピューティングは、大量のデータを扱う問題には向いていません。一方で、少量のデータを用いながら膨大な計算を必要とする問題には適しています。その理由は、量子コンピューターとの通信にマイクロ波を使用する仕組みが関係しており、テラバイト単位のデータを扱うことには適していないからです。

これは非常に重要なポイントであり、量子コンピューティングの用途を考える際に見落とされがちな点です。その後、彼は量子コンピューティングが役立つ問題の具体例を挙げています。

(原文)Just working backwards there are some very interesting problems that you could you could use quantum computers for, e.g. truly generating a random number for cryptography. These are problems that are small data, big compute.

(日本語訳)逆算して考えると、量子コンピューターを活用できる非常に興味深い問題があります。例えば、暗号技術のために真にランダムな数を生成することです。これらは少量のデータでありながら、大規模な計算を必要とする問題です。

背景を説明すると、量子コンピューティングへの注目が高まるきっかけのひとつとなったのは、31年前に発表されたショアのアルゴリズムです。その詳細については、こちらをご覧ください

(原文)However in 1994, American mathematician Peter Shor devised an Algorithm for Quantum computers that could be a breakthrough in factoring large integers.Shor’s Factoring Algorithm is one of the best algorithms for factorization. The reason why it is so popular is the fact that given enough advancements in quantum computation, this algorithm can be used to break encryption.

(日本語訳)しかし、1994年にアメリカの数学者ピーター・ショアが、量子コンピューター向けに大きな整数を因数分解するための画期的なアルゴリズムを考案しました。ショアの因数分解アルゴリズムは、因数分解において最も優れたアルゴリズムの一つとされています。その人気の理由は、量子計算技術が十分に進化すれば、このアルゴリズムを用いて暗号を解読できる可能性がある点にあります。

今後執筆予定の分析レポートでは、ショアのアルゴリズム以降に同じくらい有用なアルゴリズムがどれだけ発見されたのかを詳しく取り上げる予定です。先に言っておくと、その数は多くありません。また、量子コンピューターで何か実用的なことを行うには、まず非常に複雑なアルゴリズムが必要である点にも注目すべきです。これは、比較的シンプルなコードでも複雑な問題を解決できる従来のコンピューティングとは大きく異なる点です。

話をジェンセン氏に戻すと、彼の基本的な主張は、「通常の(おそらくCPUベースのコンピューターを指していると思われる)コンピューターでは解けない問題を解決できるコンピューターを作りたい」というものです。

(原文)We are an accelerated computing company and as you know we work with CPUs, we obviously built Grace, and we're not offended by anything around us and we just want to build computers that can solve problems that normal computers can't.

(日本語訳)私たちは高速計算を専門とする企業であり、ご存知の通りCPUとも連携しています。もちろんGraceも開発しましたし、周囲で起こるどんなことにも動じることなく、通常のコンピューターでは解決できない問題を解決できるコンピューターを作ることに専念しています。

その後、彼は、すべての量子コンピューティング企業がエヌビディアのハードウェアを必要としているため、エヌビディアと協力していると述べています。量子コンピューティングでは、エラー訂正が非常に重要な課題となっているためです。

(原文)So, in the case of quantum computing, it turns out that you need a classical computer to do error correction with the quantum computer and that classical computer better be the fastest computer that humanity can build and that happens to be us and and so so we are the perfect company to be the classical part of classical quantum and so just about every quantum computing company in the world is working with us now

(日本語訳)量子コンピューティングの場合、量子コンピューターのエラー訂正を行うには従来型のコンピューターが必要になります。そして、その従来型コンピューターは人類が作り得る最速のものであるべきです。それが私たちエヌビディアの役割です。そのため、私たちは従来型コンピューターと量子コンピューターを組み合わせる上で理想的な企業と言えます。現在、世界中のほぼすべての量子コンピューティング企業が私たちと協力しています。

次章では、注目の量子コンピュータ関連銘柄である「イオンキュー(IONQ)とDウェイブ・クアンタム(QBTS)の将来性とは?」という疑問に答えるべく、エヌビディアのジェンセン・フアンCEOの直近の発言後に両社から発表されたプレスリリースや発言を詳しく分析していきます。

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※続きは「注目の量子コンピュータ関連銘柄であるイオンキュー(IONQ)とDウェイブ・クアンタム(QBTS)の将来性とは?」をご覧ください。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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