12/02/2024

やや強気
パロ アルト ネットワークス
やや強気
プラットフォーム契約や大手企業との契約で大きく前進したことで、同社はサイバーセキュリティ市場をリードする地位を確立しつつあり、その成長軌道はサービスナウのようなテクノロジー大手を彷彿とさせます。
【Part 1:後編】パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の特徴とは?最新の決算分析を通じて、同社の戦略と強みを徹底解説!

person using macbook pro on white tableコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄であるパロ・アルト・ネットワークス(PANW)の最新の2025年第1四半期決算の詳細な分析を通じて、同社の注目すべき特徴と強みを詳しく解説していきます。
  • パロ・アルト・ネットワークスは、大規模契約の増加を背景に企業向け市場での存在感を高めており、プラットフォーム型ビジネス戦略を通じて収益基盤を拡大しています。 
  • 同社はM&Aから社内開発への転換を進め、「XSIAM」などのイノベーションを強化しつつ、効率化や株式報酬削減を通じた収益性向上を目指しています。 
  • 上位企業のプラットフォーム化を推進し、100億ドル以上の潜在収益機会を見込む中、成長軌道を維持しつつ大企業市場へのさらなる浸透を図っています。

※「【Part 1:前編】パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の将来性:最新の2025年第1四半期決算は好調で株価上昇トレンドは継続!」の続き

前章ではパロ・アルト・ネットワークス(PANW)の最新決算の詳細な分析を通じて、同社の財務状況を詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧いただければと思います。

パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の注目すべき特徴とは?

パロ・アルト・ネットワークス(PANW)が上位市場でさらなる成功を収めているのは注目に値します。

これまでの100万ドル規模の契約にとどまらず、500万ドル以上の大型契約を次々と締結しているのです。

大型案件が引き続きプラットフォーム化の成功を象徴

(出所:パロ・アルト・ネットワークスの2025年度第1四半期決算資料

このような大規模な契約は、同社の企業向け市場(エンタープライズ向け市場)における存在感がますます強まっていることを示しています。

単一の契約が、多くのシリーズA段階のスタートアップの年間売上高をはるかに上回るほどであり、5~10件の契約だけで、成長段階にあるスタートアップの売上高を超えるケースも珍しくありません。

この動向は、サイバーセキュリティ業界で統合が進み、中堅プレイヤーが市場から排除されつつあるという見方をさらに裏付けています。

この点については、同社のアローラCEOも以前から指摘していました。

さらに、アローラ氏は、パロ・アルト・ネットワークスの積極的なM&A戦略が一区切りを迎え、現在は社内でのイノベーションに力を入れていることを明らかにしています。

その象徴的な例が「XSIAM」であり、この方向転換は合理的であるように見えます。

NGS(次世代セキュリティ)プラットフォームが成熟した今、大規模なM&Aを続ければ、統合に多大なリソースを割かざるを得ず、社内開発に比べて投資収益率(ROI)が低下するリスクがあるからです。

同社のM&A戦略は、これまで現金と株式を組み合わせた取引が中心で、買収したスタートアップの創業者や経営陣には、通常3年間の権利確定期間を伴う株式報酬が付与されてきました。

そのため、大規模な買収の必要性が薄れる中で、株式報酬(SBC)の減少が続くと予想されます。

この傾向は、プラットフォームのスケールアップによる効率化、営業・マーケティング費用(S&M)の削減、そして、買収した人材に関連する支払いの減少によってさらに進む見込みです。

また、同社は2対1の株式分割を発表し、成長と収益性を両立させるフェーズに移行していることを示しました。

S&P 500への採用も加わり、同社は2010年代後半のテック大手企業と同様の成熟期に入っていると言えます。

規模拡大を達成した同社は、再投資の高収益な機会が減少する中で、将来的には株主還元率を引き上げ、余剰リターンを提供する企業となることが期待されます。

第1四半期の主要指標が当社のガイダンスを上回る

(出所:パロ・アルト・ネットワークスの2025年度第1四半期決算資料

パロ・アルト・ネットワークスの収益は今後どのように推移していくのか、という点が引き続き大きな焦点となっています。

2024年3月のアップデートで述べたように、2024年第4四半期には収益成長率が12%で底を打ち、2025年第1四半期にはわずかながら成長率が回復し、契約残高(RPO)も大幅な増加を見せました。

私たちは、同社が2030年までにNGS ARR(年間経常収益)150億ドルの達成に向けて順調に進んでいると見ています。

そして、この目標を達成するためには、新たなプラットフォーム化契約の獲得や、既存のプラットフォーム化関係をさらに深めることが鍵となるでしょう。

プラットフォーム化の勢いが続いており、このチャンスへの確信がさらに強まる

(出所:パロ・アルト・ネットワークスの2025年度第1四半期決算資料

アローラCEOによると、パロ・アルト・ネットワークスの上位5000社の顧客がプラットフォーム化を進めると予想されています(現在、パロ・アルト・ネットワークスには合計62,000社の顧客が存在)。

プラットフォーム化は「ネットワークセキュリティ」「クラウドセキュリティ」「SecOps」の3つのカテゴリーに分かれており、1社の顧客がこれらすべてを契約すると、パロ・アルト・ネットワークスでは3件のプラットフォーム契約としてカウントされます。

平均的に、1件のプラットフォーム契約額は最低でも100万ドルになると見込まれています。

この分析にはさまざまな見方がありますが、仮に上位5000社の顧客が平均で1.5のプラットフォームを契約していると仮定すると、これら顧客からの収益のベースラインは75億ドル(1.5 × 100万ドル × 5000)となります。

ただし、これはあくまで最低ラインであり、1件あたりの契約額は(おそらく)100万ドルを大幅に上回る可能性があります。

さらに、上位5000社すべての顧客が3つのプラットフォームを利用するようになれば、潜在的な収益はさらに拡大します。

つまり、プラットフォーム化が成功すれば、上位5000社だけで簡単に100億ドル以上の収益を達成でき、さらにその収益規模は大きく伸びる可能性があります。

そして、パロ・アルト・ネットワークスは、積極的なプラットフォーム化戦略を通じて業界をリードし続けています。

同社は、顧客のサイバーセキュリティニーズを幅広くカバーする包括的なワンストッププラットフォームを提供し、多様な攻撃手法に対応しています。

このプラットフォーム化は、2年前に「プラットフォーム型と特化型ソリューションのどちらが優れているか」という議論が盛んだった頃とは対照的に、今では標準的なアプローチとして認識され、多くの支持を集めるようになっています。

ガートナー社の調査によれば、現在、セキュリティリーダーの75%がベンダー統合戦略を積極的に進めています。

しかし、大企業のうち、1つでもセキュリティプラットフォームソリューションを導入しているのはわずか15%未満に過ぎません。

さらに、ガートナー社は2028年までに、45%の企業がサイバーセキュリティツールのポートフォリオを15ツール未満に削減すると予測しており、これは2023年の13%から大幅な増加となる見込みです。

私たちは、パロ・アルト・ネットワークスがサービスナウ(NOW)の成長軌道に似た形で、1,000万ドルや2,000万ドル、さらにはそれ以上の規模の契約を獲得する可能性を秘めていると考えています。

2020年から2022年にかけて、多くのアナリストがサービスナウを過小評価し、同社が主要なSaaS企業としての地位を確立した後の成長を限定的に見積もっていました。

しかし、これまでの分析でも述べたように(以前弊社が執筆したパランティア・テクノロジーズに関するレポートにおいて共有した、下記のサービスナウとワークデイWDAY)の株価と市場拡大の比較を表したチャートご参照ください)、サービスナウの最大の強みは、新たな領域に進出するたびにリーダーシップを確立しつつ、プラットフォームを継続的に拡張していける能力にあります。

(出所:Koyfin)

これは、パロ・アルト・ネットワークスがここ数四半期にわたって実施してきた戦略を彷彿とさせるものです。

そして、同社は過去のサービスナウと同様の成長軌道を辿る可能性があると考えています。

その場合、パロ・アルト・ネットワークスは今後も数四半期にわたって、成長率が高い10%台から低い20%台を維持しながら、大企業を対象に深く浸透していくでしょう。

一方で、予算に制約があり、IT投資に多額を費やすことに慎重な中小企業(SMBやSME)への依存は減少していくと見られます。

また、顧客数の拡大だけでなく、大企業における契約規模の拡大にも大きな可能性があります。

たとえば、モルガン・スタンレー(MS)は昨年、テクノロジー関連で180億ドルを支出しており、そのうち10%がサイバーセキュリティに充てられると仮定すると、20億ドルに相当します。

参考までに、パロ・アルト・ネットワークスの最大顧客の契約額は、2018年の500万ドルから2024年には2600万ドルに成長しています。

その他のパロアルトネットワークス(PANW)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、パロアルトネットワークスのページにてご覧いただければと思います。

加えて、下記のレポートでは、ゼロデイ脆弱性の脅威に関する分析を踏まえ、パロ・アルト・ネットワークスを含む注目の米国サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジーの詳細な分析を解説しております。

そのため、同社への理解をより一層深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。

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