やや強気パロ アルト ネットワークス【Part 2 - ①】パロアルトネットワークス(PANW)Prisma SASEとは?注目のネットワークセキュリティ製品の強みと優位性に迫る!
コンヴェクィティ - 本稿は【Part 1】の続編で、注目の米国サイバーセキュリティ企業であるパロアルトネットワークス(PANW)の各主要製品の詳細とテクノロジー上の強みから株価バリュエーションまで包括的にカバーした長編の分析レポートとなります。
- 本稿は「① Prisma SASE」「② Prisma Cloud」「③ Cortex」「④ IBMとの提携のメリット」「⑤ 株価バリュエーション分析」の5つの章で構成されています。
- パロアルトネットワークスは、SASEやクラウドセキュリティ分野での戦略的な買収と革新的な製品展開を通じて、サイバーセキュリティ市場で確固たるリーダーの地位を築いています。
- 特に、IBM Qradarの買収と提携は、同社の市場拡大を後押しする賢明な取引であり、IBMのコンサルティング部門を活用することで、パロアルトネットワークス製品の採用がさらに加速しています。
- また、AIセキュリティやリアルタイム脅威対策に注力し、優れたセールス&マーケティング(S&M)戦略の実行力と相まって、競争力と市場でのリーダーシップを一層強化しています。
- 現在のバリュエーションは適正な水準と見られていますが、アローラCEOが進めるプラットフォーム化戦略がさらに進展すれば、さらなる成長の可能性が期待できると見ています。
- 本稿【Part 2 - ①】では、パロアルトネットワークスのネットワークセキュリティ製品であるStrataとPrisma SASEに関して詳しく解説していきます。
※「【Part 1:後編】パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の特徴とは?最新の決算分析を通じて、同社の戦略と強みを徹底解説!」の続き
前章ではパロ・アルト・ネットワークス(PANW)の最新決算の詳細な分析を通じて、同社の財務状況とビジネス上の戦略を詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
パロアルトネットワークス(PANW)の製品の基本情報
ネットワークセキュリティ:StrataとPrisma SASE
最新の2025年第1四半期(暦年:2024年第3四半期)の決算説明会で、パロアルトネットワークス(PANW)のニケシュ・アローラCEOは次のように語りました:
「私たちはネットワークトラフィックの分野で確固たるリーダーです。お話しした通り、現在当社のユースケースの70%は、パブリッククラウドサービスプロバイダーのトラフィックが占めています。また、Prisma Cloudを通じた早期参入により、CNAPP市場でも引き続きリーダーの地位を維持しています。しかし、今後数年でこの市場はクラウド上のリアルタイムセキュリティへとさらに移行していくと考えています。そこでは、CDR(クラウドデータレジリエンス)、クラウドSOC、XSIAMといったソリューションの重要性が増していくでしょう。実際、XSIAMのほとんどすべての契約において、クラウドセキュリティ向けに利用される部分が含まれています。そして、これらのデータを統合することで、設定に関する問題の優先順位を的確に判断し、ノイズとシグナルを明確に分けることが可能になります。」
関連用語
ネットワークトラフィック:ネットワーク上で送受信されるデータの流れを指す。通信量や種類を分析することで、ネットワークのパフォーマンスやセキュリティ状況を把握することが可能。
パブリッククラウドサービス:インターネット経由で誰でも利用可能なクラウドサービスで、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどが代表例。ストレージ、コンピューティングリソース、アプリケーションを提供。
SASE(Secure Access Service Edge):ネットワークセキュリティとWAN(Wide Area Network)機能を統合したクラウドベースのアーキテクチャ。リモートワーカーや分散拠点が安全かつ効率的にインターネットやクラウドサービスにアクセスできるようにするためのフレームワーク。
Prisma Cloud:クラウド環境全体を統合的に保護するセキュリティプラットフォームで、コンテナ、サーバレス、クラウドワークロードを対象としたセキュリティ機能を提供。
Prisma SASE:ネットワークセキュリティ、SD-WAN、自律型デジタルエクスペリエンス管理を統合したクラウドベースのプラットフォームで、ハイブリッドワーク環境におけるユーザーや拠点の安全な接続と優れたユーザーエクスペリエンスを提供。
CNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform):クラウドネイティブなアプリケーションを保護するための包括的なセキュリティプラットフォームで、ワークロードセキュリティ、コンテナセキュリティ、インフラセキュリティを一元管理。
CDR(クラウドデータレジリエンス):クラウド上のデータを安全に保管し、障害やサイバー攻撃に対する復元能力を強化する仕組みや技術の総称。
クラウドSOC(Security Operations Center):クラウド環境に特化したセキュリティ監視・運用センターで、リアルタイムの脅威検出とインシデント対応を提供。
XSIAM(Extended Security Intelligence and Automation Management):セキュリティ運用を自動化し、脅威を迅速に検出・対応するための次世代プラットフォーム。AIや機械学習を活用してセキュリティデータを分析。
同社は、主要な3つの分野で際立った成果を上げており、数々の成功した製品リリースの勢いをうまく活かしています。
SASEはNGS(次世代セキュリティ)の最大の成長エンジンとなっており、現在ではNGS全体の売上の60%以上を占めています。
同社は、セキュアブラウザー機能、データセキュリティ、セキュアAIの活用といった重要なトレンドを、競合他社に先んじて正確に把握してきました。
特に注目すべきは、Prisma SASEの顧客のうち40%が新規顧客であり、これは競合他社と明確に差別化されたポイントです。
この傾向は、同社のクラウドセキュリティ事業にも表れており、新規顧客の獲得に重きを置いた戦略が際立っています。
同社は既存顧客へのクロスセル(追加製品の提案)に依存するのではなく、NGS製品を通じて同社を利用していない新規顧客を引き付けることで競争優位性を示しています。
また、これらの製品を担当するゼネラルマネージャー(GM)が、顧客の声を積極的に反映し、市場動向や競合、新興スタートアップの動きに敏感に対応していることも特筆すべき点です。
このアプローチは、既存顧客への「十分な品質」の製品をクロスセルすることで成長を目指すクラウドストライク(CRWD)の戦略よりも優れていると考えられます。
パロアルトネットワークスの戦略は、競争力のある製品で新規顧客を獲得する点で、より効果的かつ差別化された手法と言えるでしょう。
ネットワークセキュリティ: SASEの注目ポイント | Prisma Access ブラウザー
(出所:パロアルトネットワークスの2025年第1四半期決算資料)
Talon Securityの買収により、現在Prisma Access Browserとして統合されたこの取り組みは、パロアルトネットワークスが単なる競争にとどまらず、新興市場でリーダーシップを発揮する姿勢を示しています。
Prisma SASEは、単に市場の基準に追いつき、既存のファイアウォール顧客にアップセルを行うのではなく、競合他社が容易に真似できない強固な競争優位性を築き、業界トップクラスを目指しています。
これまでの分析でも指摘したように、セキュアブラウザーは今後大きな成長が期待される市場です。
この分野をいち早くターゲットにし、トッププレイヤーの1社を買収した同社の判断は、その優れた戦略眼を裏付けるものです。
一般的に、需要の高い分野のスタートアップはM&Aの提案に慎重な姿勢を示すことが多いですが、同社はその例外と言えます。
この5〜6年で数多くのBoB(Best of Breed:特定の分野やカテゴリで最も優れた製品やサービスを指す)企業を買収してきた実績がそれを証明しています。
Talonの買収に成功したことで、パロアルトネットワークスはBoBエンタープライズブラウザーを提供する唯一のSASEプロバイダーとなりました。
この独自性は、低コストではなくプレミアム機能に依存する競合他社にとって、さらなる課題をもたらしています。
Prisma Access Browserのようなセキュアブラウザーは、ユーザーのエンドポイントで直接SASE機能を提供することで、きめ細やかな制御、高速な処理、そして優れたユーザーエクスペリエンスを実現します。
すでに100万以上のライセンスが販売されており、ARR(年間経常収益)で1億ドルを達成する見通しです。
さらに、ユースケースの拡大に伴い、10億ドル以上の収益を達成する可能性も十分に期待されています。
成長の重要な機会として、ブラウザーへのデータセキュリティの組み込み、高度なURLフィルタリング、ローカルSWG機能の提供、HTTP 2.0といった最新標準への対応が挙げられます。
さらに、従来型のVDIソリューションの代替やモバイルユーザーへのサポート拡大も、その利便性を大きく向上させるポイントです。
しかし、最も画期的な可能性は、企業ユーザーにとって重要な接点であるブラウザーの保護と制御にあります。
OpenAIがAIを活用したユーザーエクスペリエンスの向上を目的に、独自のブラウザーを開発しているとの噂があり、この分野でのさらなる革新が期待されています。
もしパロアルトネットワークスがエンタープライズ向けブラウザーマーケットで同様の取り組みを実現できれば、セキュリティを基盤とした収益化に加え、実用性を重視した新たなビジネスチャンスも開拓できるでしょう。
これにより、さらなる成長とイノベーションを促進するためのプラットフォームを築く可能性が広がります。
関連用語
ファイアウォール:ネットワーク間の通信を監視し、不正アクセスや攻撃を防ぐセキュリティシステム。許可されたトラフィックのみ通過させる役割を果たす。
セキュアブラウザー:セキュリティ機能を強化したウェブブラウザーで、データ漏洩や不正アクセスを防ぐ。主に業務環境や重要情報の保護に使用される。
SWG(Secure Web Gateway):インターネット接続時に脅威を検知・遮断するゲートウェイ。悪意のあるウェブサイトや不正ダウンロードを防ぎ、安全なブラウジングを実現。
VDIソリューション(Virtual Desktop Infrastructureソリューション):仮想デスクトップ環境を提供するための技術やサービスのこと。ユーザーは、サーバー上にホストされたデスクトップ環境にリモートでアクセスし、どこからでも利用可能。
次章では、同社のクラウドセキュリティ製品であるPrisma Cloudに関して詳しく解説していきます。
※続きは「【Part 2 - ②】パロアルトネットワークス(PANW)Prisma Cloudとは?注目のクラウドセキュリティ製品の強みと優位性に迫る!」をご覧ください。
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