12/09/2024

やや強気
パロ アルト ネットワークス
やや強気
総じて、パロアルトネットワークスは複数の分野で大きな成長機会を持ち、明確な競争優位性と強力な実行力に支えられています。
【Part 2 - ②】パロアルトネットワークス(PANW)Prisma Cloudとは?注目のクラウドセキュリティ製品の強みと優位性に迫る!

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  • 本稿は【Part 1】の続編で、注目の米国サイバーセキュリティ企業であるパロアルトネットワークス(PANW)の各主要製品の詳細とテクノロジー上の強みから株価バリュエーションまで包括的にカバーした長編の分析レポートとなります。 
  • 本稿は「① Prisma SASE」「② Prisma Cloud」「③ Cortex」「④ IBMとの提携のメリット」「⑤ 株価バリュエーション分析」の5つの章で構成されています。
  • 本稿【Part 2 - ②】では、パロアルトネットワークスのクラウドセキュリティ製品であるPrisma Cloudに関して詳しく解説していきます。
  • パロアルトネットワークスは、クラウドセキュリティ分野で包括的なソリューションを提供し、特にPrisma Cloudを通じて市場でリーダーシップを確立しています。
  • 同社の競争優位性は、エージェントベース技術への投資やリアルタイム脅威緩和の分野での革新、さらに強力なセールス&マーケティング戦略に支えられています。
  • AIセキュリティやマルチクラウド対応ファイアウォールなどの自社開発技術により、クラウドセキュリティ市場で他社を大きくリードしています。

※「【Part 2 - ①】パロアルトネットワークス(PANW)Prisma SASEとは?注目のネットワークセキュリティ製品の強みと優位性に迫る!」の続き

前章ではパロアルトネットワークス(PANW)のネットワークセキュリティ製品であるStrataとPrisma SASEとサイバーセキュリティ業界における関連用語に関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

パロアルトネットワークス(PANW)のクラウドセキュリティ:Prisma Cloud

クラウドセキュリティは、パロアルトネットワークス(PANW)の次世代セキュリティ(NGS)事業における第2の成長分野として位置付けられていますが、その成長の軌跡はSASE(Secure Access Service Edge)とは異なります。

SASEが既存のネットワークセキュリティソリューションを近代化し、直接的に置き換える形で進化しており、同社にとって競合を追い越しやすい市場であるのに対し、クラウドセキュリティはほぼ未開拓の新しい市場です。

このため、同社はこの分野を育てるために多くの時間と資源を投じてきました。

ただし、クラウドセキュリティが注目を集めている一方で、短期的な市場規模は比較的小さく、主要プレイヤーの収益もSASEベンダーと比べて劣るのが現状です。

それでも、同社はクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)において圧倒的なリーダーとしての地位を確立しています。

その理由は、クラウドセキュリティの「トリレンマ」― 包括性、迅速性、導入の容易さを全て高水準で両立することが難しいという課題 ― に対して、同社が効果的なソリューションを提供している点にあります。

特に、同社はエージェントレスのアプローチを採用しているWizのようなスタートアップとは一線を画し、エージェントベース技術への大規模な投資を行っている点が大きな強みです。

また、同社は「シフトライト(Shift Right:ソフトウェア開発や運用プロセスにおいて、テストや検証、改善を運用段階、リリース後に重点的に行うアプローチ)」クラウドセキュリティやリアルタイムの脅威緩和においても業界をリードしており、自社プラットフォームとの連携による相乗効果を発揮しています。

パロアルトネットワークスの優位性を決定づけているのは、製品の高い性能とセールス&マーケティング(S&M)の強力な相乗効果です。

優れたS&M戦略により、Prisma Cloudは既存の同社ユーザーへのクロスセルを超え、これまで同社と関わりのなかったデジタルネイティブのSaaS企業をも幅広く顧客に取り込んできました。

こうしたSaaS企業の多くがPrisma Cloudを選ぶ理由は、プラットフォーム統合の利便性ではなく、それ自体が非常に優れた「Best of Breed(BoB)」ソリューションとして際立っているためです。

また、新たな顧客から得られるフィードバックをもとに製品をさらに改良し、同社は市場でのリーダーシップを一層強化する好循環を生み出しています。

対照的な例としてSysdigがあります。

同社はWiresharkの開発者によって設立され、エージェント型とエージェントレス技術を組み合わせたオープンコアモデルを採用していました。

しかし、その有望な技術基盤にもかかわらず、SysdigはパロアルトネットワークスのS&M戦略の巧みさや製品開発のスピードには及ばず、競争に遅れを取ってしまいました。

この遅れは深刻な影響を及ぼし、先月にはCEOとCMOが辞任し、現在は買収先を模索する事態に陥っています。

これらの例は、クラウドセキュリティスタートアップ業界全体が抱える広範な課題を浮き彫りにしています。

この分野には、VC(ベンチャーキャピタル)資金が流れ込み、流行を追う動きが加速しましたが、その多くは十分なデューデリジェンスが行われないまま進められていました。

2024年に至る頃には、投資家の忍耐は限界に達し、期待外れの業績が続く中で、リターン回収やDPI(Deep Packet Inspection:ネットワーク上を流れるデータパケットを詳細に解析する技術)目標達成を目指すための売却が急がれる状況となっています。

こうした不安定な環境下でも成果を出し続けているパロアルトネットワークスは、戦略的な先見性と卓越した運営能力を発揮しており、その強みを示しています。

パロアルトネットワークスは、競争をリードするだけでなく、他社が容易に超えることのできない障壁を築くさまざまな重要な取り組みを通じて、その優位性をさらに際立たせています。

たとえば、「エンタープライズブラウザ」のようなイノベーションは、同社を業界の中で一歩先へ押し上げる大きな要因となっています。

また、他社が先駆けたコンセプトをさらに進化させ、より深いシナジーを実現することで、競争力を一層強化しています。

特に注目すべき例として、パロアルトネットワークスの「Cloud Detection and Response(CDR)」の導入があります。

このコンセプトはもともと、NetskopeがCASB(Cloud Access Security Broker:クラウドサービス利用時のセキュリティを強化するためのソリューション)における検出・対応機能として初めて提案し、その後WizがCSPM(Cloud Security Posture Management:クラウド環境全体のセキュリティ体制を管理し、設定ミスやコンプライアンス違反を防ぐためのソリューション)製品において軽量な検出・対応機能として応用したものです。

しかし、パロアルトネットワークスのCDRはこれらの初期モデルを大きく超えています。

センチネルワン(S)やクラウドストライク(CRWD)のCWPP(クラウドワークロード保護プラットフォーム)エージェントと同様にエージェントベースの技術を用いてログを収集するだけでなく、エージェントレスによるデータ取り込みも組み合わせています。

このデュアル機能により、Prisma CloudとCortexをシームレスに結びつけ、包括的な検出と対応を実現するエコシステムを構築しています。

因みに、Cortexは、パロアルトネットワークスが提供するセキュリティ運用向けの包括的な製品スイートです。

このプラットフォームは、AI(人工知能)と自動化技術を活用し、セキュリティ運用の効率化と脅威対応の迅速化を実現します。

そして、その結果、パロアルトネットワークスのCDRは他にはない卓越した機能を提供しています。

1. 包括的なデータ収集

パロアルトネットワークスは、CWPP、DSPM(データセキュリティポスチャ管理)、CSPM(クラウドセキュリティポスチャ管理)、さらにはシフトレフト環境に至るまで、CNAPP(クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム)のすべての主要コンポーネントにわたるデータを収集します。これにより、競合他社が特定のデータポイントに限定しているのに対し、同社はより広範で統合的な視点を提供しています。

2. Cortex XSIAMによるデータのコンテキスト化

収集したデータは、パロアルトネットワークスの高度な自動化SOCプラットフォーム「Cortex XSIAM」を通じて処理・コンテキスト化されます。これにより、深い洞察と実用的なインテリジェンスが得られ、単独のクラウドセキュリティ企業では実現できない価値を提供します。

多くの競合他社、特にCSPMやCWPPソリューションを提供する企業は、限定的なデータ収集や処理にとどまり、それぞれが独立したシステムとして動作しています。

一方で、パロアルトネットワークスのCDRは統合されたアーキテクチャを活用し、異なるデータストリームを一元化して、自動化された包括的な検出・対応フレームワークを構築しています。

Cortex XSIAMの存在によって、その能力がさらに倍増し、パロアルトネットワークスはクラウドセキュリティを全方位でカバーするソリューションへと進化させています。

このような高度な統合と自動化により、同社はクラウドセキュリティ分野において他社を圧倒する独自の地位を確立し、業界のリーダーとしての地位を揺るぎないものとしています。

Cortexの革新 - クラウドとCortexの融合

(出所:パロアルトネットワークスの2025年第1四半期決算資料

パロアルトネットワークスは、AIアプリケーションやインフラの保護を目的とした「AISPM(AIセキュリティポスチャ管理)」および「AIランタイム保護」を導入し、AIセキュリティ分野での能力をさらに強化しています。

これらのソリューションは、適切な設定の維持、潜在的なデータ漏洩の検出、有害なAI出力によるリスクの軽減を実現し、企業がAI技術を導入する際に欠かせないツールとして機能します。

パロアルトネットワークスのAIセキュリティにおける先進性への取り組みは、積極的な投資と社内での革新によって支えられています。

同社は「生成AI」を活用した社内試用(いわゆる「ドッグフーディング」)を成功させ、大規模言語モデル(LLM)を社内プロセスに統合し、業務の自動化と効率化を実現しました。

以下はその具体的な事例です:

SOCの最適化

パロアルトネットワークスは、LLM(大規模言語モデル)を活用した自動化により、SOC(セキュリティオペレーションセンター)の人員を3分の1削減することに成功しました。

生産性の向上

サポートチームやソフトウェア開発チームがLLMを活用した結果、生産性が40%向上しました。

コパイロットの開発

パロアルトネットワークスは、主要な3つのプラットフォーム向けに生成AIを活用したコパイロットの開発を進めており、近いうちに一般公開される予定です。

製品開発にとどまらず、同社はAI中心の文化を育む取り組みとして、毎週AIに関するトークセッションを開催しています。

このセッションでは、先進的な機関からゲストスピーカーを招き、AIに関する最新の議論や革新を深めています。

こうした取り組みにより、同社は常にAI分野の最前線に立ち続けています。

パロアルトネットワークスの持つ組織規模と能力は、AIセキュリティ分野におけるスタートアップに対して圧倒的な優位性をもたらしています。

多くの小規模なプレイヤーは、自社製品を試験し改良するための内部環境(いわゆる「ドッグフード」)が不足しており、初期の顧客からのフィードバックや機能開発に依存せざるを得ません。

一方、パロアルトネットワークスはその大規模な組織基盤を活用し、AIスタックのセキュリティニーズを迅速に特定し、適切なソリューションを提供しています。

さらに、同社は革新的な機能を通じてクラウドセキュリティ分野でのリーダーシップを確立しています。

その代表例が、AWS向けに最初に導入され、その後主要な4つのクラウドプロバイダーすべてに拡大されたネイティブクラウドファイアウォールです。

クラウドプロバイダーが提供するネイティブファイアウォールが単一クラウド利用者にとって無料で十分な場合もある中、パロアルトネットワークスのマルチクラウドファイアウォールは、マルチクラウド環境の需要に対応しており、多くの企業から選ばれる存在となっています。

総じて、パロアルトネットワークスのクラウドセキュリティ事業は、先見性と実行力において優れた成果を示しています。

市場が進化し、シフトライト機能、エージェントベースのソリューション、リアルタイムセキュリティに対する需要が増加する中、同社は常に市場の先を行く存在となっています。

また、AIセキュリティなどの新たなニーズに対応する機能を、買収ではなく自社開発によって実現できる能力は、同社の市場リーダーとしての地位をさらに強固にしています。

次章では、同社のセキュリティ運用関連製品であるCortexに関して詳しく解説していきます。

※続きは「【Part 2 - ③】パロアルトネットワークス(PANW)Cortexとは?注目のセキュリティ運用関連製品の強みと競争優位性に迫る!」をご覧ください。

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