やや強気パロ アルト ネットワークス【Part 2 - ④】パロアルトネットワークス(PANW)IBMとの提携によるメリットとは?Qradar SIEM事業の買収の詳細に迫る!
コンヴェクィティ - 本稿は【Part 1】の続編で、注目の米国サイバーセキュリティ企業であるパロアルトネットワークス(PANW)の各主要製品の詳細とテクノロジー上の強みから株価バリュエーションまで包括的にカバーした長編の分析レポートとなります。
- 本稿は「① Prisma SASE」「② Prisma Cloud」「③ Cortex」「④ IBMとの提携のメリット」「⑤ 株価バリュエーション分析」の5つの章で構成されています。
- 本稿【Part 2 - ④】では、パロアルトネットワークスのIBMとの提携によるメリットを詳しく解説していきます。
- パロアルトネットワークスはIBMのQradar SIEM事業を5億ドルで買収し、知的財産と顧客基盤に注力することでSIEM市場での存在感を強化すると同時に、ARRを即時的に7400万ドル増加させました。
- この提携により、IBMは競争力の低い製品の負担を軽減し、パロアルトネットワークスの先進的な製品を活用した価値提供に集中できるようになり、両社にとって大きな利益をもたらしています。
- IBMのコンサルティング部門とのパートナーシップを活用することで、パロアルトネットワークスはXSIAMを中心にSASE市場をはじめとする複数の分野でリーダーシップを加速させ、長期的な成長が期待されています。
※「【Part 2 - ③】パロアルトネットワークス(PANW)Cortexとは?注目のセキュリティ運用関連製品の強みと競争優位性に迫る!」の続き
前章ではパロアルトネットワークス(PANW)のセキュリティ運用関連製品であるCortexに関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
パロアルトネットワークス(PANW)のIBMとの提携:歴史的な取引
SecOpsの注目ポイント: IBMとの契約で得られた初期成果と今後の可能性に期待が高まる
(出所:パロアルトネットワークスの2025年第1四半期決算資料)
パロアルトネットワークス(PANW)のアローラCEOは、最近行われたQradarの買収とIBM(IBM)との提携について、「パロアルトネットワークス史上最高の取引」と評価しています。
ただし、一部の取締役は、長期的な成長可能性の観点でTalonの買収の方が有望だと主張しており、私たちもどちらかと言えばその意見に同意しています。
2024年9月、パロアルトネットワークスはIBMのQradar SIEM事業を5億ドルで買収しました。
この取引には、Qradarの知的財産や顧客基盤が含まれている一方で、製品そのものは対象外となっています。
この買収により、IBMは直接的な競合から外れ、パロアルトネットワークス製品を積極的に販売・流通させる主要なパートナーとしての役割を担うことになりました。
IBMコンサルティングを通じたこの戦略的な連携は、SIEM市場におけるパロアルトネットワークスの存在感がますます強まっていることを物語っています。
この買収により、パロアルトネットワークスはARR(年間経常収益)を即座に7400万ドル増加させました。
IBMによると、Qradarの現在の収益は1億ドル弱であり、これによりパロアルトネットワークスは顧客基盤の獲得に対しておよそ5倍のPSR(株価売上高倍率)を支払ったことになります。
同時に、SIEM市場で3番目に大きな競合だったIBMを、最も強力なGTM(市場投入戦略)のパートナーの一つに転換しました。
この提携は、IBMのコンサルティングネットワークを考えると、SIEMを超えた幅広い分野に拡大する可能性があります。
一方、IBMにとってもこの取引は重要でした。
アルヴィンド・クリシュナCEOの下、IBMはQradarのような競争力の低い製品を維持することが、運営効率を悪化させていることを認識していました。
サービスチームは、性能が劣る自社製品を販売することで負担を抱え、他社の優れた製品を提供する機会を失っていたのです。
Qradarを手放したことで、IBMはコンサルティング事業をパロアルトネットワークスのXSIAMのような優れた製品の販売に集中させることができ、顧客に対する価値提供をさらに強化できるようになりました。
パロアルトネットワークスにとって、この取引はレガシー技術を直接買収する際のリスクを回避するよう慎重に設計されました。
もしQradarの製品自体を買収していた場合、XSIAMと統合するために大規模な逆統合が必要となり、Qradarの既存顧客に対応するためにXSIAMの先進的な能力を妥協するリスクがありました。
そして、これはイノベーションの水準を引き下げる可能性があります。
しかし、パロアルトネットワークスは知的財産と顧客基盤に焦点を当てることで、このリスクを完全に回避しました。
レガシーコードやシステムを統合するのではなく、Qradarの顧客を契約更新時にXSIAMへ移行させることに注力し、次世代ソリューションとしての優位性を維持しつつ、スムーズな顧客体験を提供しています。
結果、この5億ドルの投資は、即時的にリターンをもたらしています。
ARR(年間経常収益)で7800万ドルを追加し、500以上の顧客を対象とした総額10億ドル規模のパイプラインを構築しました(平均契約額は200万ドル)。
さらに、IBMの約200億ドル規模のコンサルティング事業は、パロアルトネットワークスにとって大規模なセキュリティ支出への直接的なアクセスを可能にします。
IT予算の約3分の1がサービス関連費用であると仮定すると、IBMは年間600億ドル規模のIT支出に関与しており、そのうちわずか10%をPANWが獲得するだけでも、非常に大きな収益拡大が期待されます。
これまで、システムインテグレーター(SI)は、導入が難しいソリューションの拡大において非常に重要な役割を果たしてきました。
例えば、ゼットスケーラー(ZS)はゼロから年間収益1億ドルに達するまでに10年を要しましたが、その後はSIとの強力なパートナーシップを活用することで、1億ドルから10億ドル以上のARR(年間経常収益)へと急速に成長しました。
現在のパロアルトネットワークスも同様の状況にあり、IBMのコンサルティング部門を活用してXSIAMをはじめとする製品の普及を進めています。
SASEの市場浸透率がまだ10%程度である中、IBMとの提携は、パロアルトネットワークスに大規模なパイプラインをもたらすだけでなく、複数の分野でのリーダーシップを加速させる可能性があります。
このパートナーシップがあるからこそ、アローラCEOは今回の取引をパロアルトネットワークス史上最高のものと評価しており、長期的にも非常に高い成果をもたらすと期待しています。
次章では、詳細な株価バリュエーション分析を通じて、同社の将来性と今後の株価見通しに関して詳しく解説していきます。
※続きは「【Part 2 - ⑤】パロアルトネットワークス(PANW)目標株価は441ドル!強気シナリオでは606ドルも視野に!」をご覧ください。
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