12/10/2024

やや強気
パロ アルト ネットワークス
やや強気
総じて、パロアルトネットワークスは複数の分野で大きな成長機会を持ち、明確な競争優位性と強力な実行力に支えられています。
【Part 2 - ⑤】パロアルトネットワークス(PANW)目標株価は441ドル!強気シナリオでは606ドルも視野に!

person holding black tablet computerコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿は【Part 1】の続編で、注目の米国サイバーセキュリティ企業であるパロアルトネットワークス(PANW)の各主要製品の詳細とテクノロジー上の強みから株価バリュエーションまで包括的にカバーした長編の分析レポートとなります。 
  • 本稿は「① Prisma SASE」「② Prisma Cloud」「③ Cortex」「④ IBMとの提携のメリット」「⑤ 株価バリュエーション分析」の5つの章で構成されています。
  • 本稿【Part 2 - ⑤】では、パロアルトネットワークスの株価バリュエーション分析を通じて、同社の目標株価、並びに、将来性と今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
  • 同社の株価は2024年2月の下落後に大幅に回復していますが、長期的な成長機会は依然として魅力的であるように見えます。 
  • サイバーセキュリティ市場やクラウドセキュリティ分野における成長可能性が高く、大企業向け販売やセキュリティ運用分野での収益拡大が期待されています。 
  • 同社は短期的な課題を抱えつつも、プラットフォーム化戦略や競争優位性を活かし、長期的には高い成長を維持できる可能性があると考えています。

※「【Part 2 - ④】パロアルトネットワークス(PANW)IBMとの提携によるメリットとは?Qradar SIEM事業の買収の詳細に迫る!」の続き

前章ではパロアルトネットワークス(PANW)のIBMとの提携によるメリットに関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

パロアルトネットワークス(PANW)の株価バリュエーション

2025年度第2四半期および2025年度の見通し

(出所:パロアルトネットワークスの2025年第1四半期決算資料

パロアルトネットワークスのバリュエーション推移

(出所:Koyfin)

パロアルトネットワークス(PANW)の株価は、2024年2月の下落から大きく反発し、270ドルから約400ドルまで回復しました。

この上昇により、以前のDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)モデルによる目標株価(約530ドル)を基にしたリターンの期待値は大幅に縮小しています。

このDCF評価では、2030年会計年度までの年間平均成長率(CAGR)を20%と仮定し、最終段階でのフリーキャッシュフロー(FCF)を40%、株式報酬(SBC)を7.5%と見積もっています。

その結果、最終的なFCF-SBCマージンは32.5%(40% - 7.5%)となります。

同社の最新のDCF評価については、こちらのリンクより、Googleスプレッドシート上で詳細をご確認ください。

前回のケース:目標株価533.40ドル

(FCFマージン:40% / 売上高に対する株式報酬比率:7.5%/ 売上高成長率:20%)

(出所:筆者作成)

現在の株価を見る限り、投資家は同社が今後数年間で10%台半ばの成長を続けるとともに、成熟期にはFCFマージンを40%に改善するとの期待を抱いていると考えられます。

現在の株価水準である389.16ドルを基にしたケース

(FCFマージン:40% / 売上高に対する株式報酬比率:7.5%/ 売上高成長率:15%)

(出所:筆者作成)

しかし、同社が事業規模を拡大し、運営効率をさらに向上させていく中で、大規模な企業向けの販売は引き続き非常に有望な成長機会であり続けるでしょう。

このような状況では、同社が最終的なFCFマージンを45%にまで引き上げる可能性も現実的です。

この水準は、大企業向け取引に注力しているブロードコム(AVGO)と同様のFCFマージンを達成することを意味します。

ベース・ケース:目標株価441.88ドル

(FCFマージン:45% / 売上高に対する株式報酬比率:7.5%/ 売上高成長率:15%)

(出所:筆者作成)

私たちのベースケース(Base Case)では、最終的なFCFマージンを40〜45%、2027年会計年度から2030年会計年度までのCAGR(年平均成長率)を15%と見込んでいます。

このシナリオでは、現時点の同社の株価は適正価格帯にあると考えられます。

しかし、もし同社がサイバーセキュリティ分野における「ビッグテック」となり、高いマージンと20%以上の成長を長期間にわたって実現する可能性があると信じるならば、現在の株価は割安であると言えるかもしれません。

強気のシナリオでは、最終的なFCFマージンを45%、2027年会計年度から2030年会計年度までのCAGR(年平均成長率)を20%と仮定すると、1株あたり約600ドルの内在価値が見込まれます。

ただし、この見方に慎重な理由として、現在、同社が600ドルで取引されている場合、EV/FCF(企業価値対フリーキャッシュフロー倍率)が65倍にもなることが挙げられます。

このため、この強気シナリオが現実化する場合でも、EV/FCFがより現実的な水準に近づくには、株価が600ドルに到達するまでに数年かかると予想されます。

強気シナリオ:目標株価606.89ドル

(FCFマージン:45% / 売上高に対する株式報酬比率:7.5%/ 売上高成長率:20%)

(出所:筆者作成)

私たちの弱気シナリオでは、2027年会計年度から2030年会計年度にかけてのCAGR(年平均成長率)を10%、最終的なFCFマージンを40%と仮定して計算すると、1株あたりの内在価値は280ドルとなります。

以上より、総合的に見ると、下落リスクよりも上昇の可能性の方が大きいと考えています。

パロアルトネットワークスとサービスナウ(NOW)の将来の収益成長予測を比較すると、市場のアナリストはサービスナウが収益規模が100億ドルを超える状態でも20%以上の成長を安定的に維持できると予想しています。

一方で、パロアルトネットワークスの短期的な成長見通しは大幅に減速しています。

この減速の主な理由として、プラットフォーム化への移行が短期的な課題を引き起こしていることが挙げられます。

ただし、この移行は長期的にはより高い成長をもたらす可能性があると考えられます。

それにもかかわらず、市場の現在の見方は、パロアルトネットワークスの成長が再加速せず、今後も10%台半ばの成長に留まるという前提に基づいているようです。

(出所:Koyfin)

パロアルトネットワークスの最近の成長を中期的な底と見なし、サービスナウがプラットフォーム拡大で達成したような成長軌道を辿ると仮定すると、サイバーセキュリティ業界における市場シェアを一桁台前半から20%以上へ拡大できる可能性があります。

この場合、2030年会計年度までに年間平均成長率(CAGR)を20%と見込むのは妥当でしょう。

また、FCFマージンが5ポイント上昇するシナリオでは、パロアルトネットワークスの株価が600ドル以上に到達する可能性があります。

この20%成長という前提は、パロアルトネットワークスの堅調なRPO(残存履行義務)成長率と、プラットフォーム化によって試用から有料サブスクリプションへの移行が進み、RPOが安定もしくは若干増加するという経営陣の期待に基づいています。

SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)市場では、まだ初期段階にあるものの、現在の市場機会の4倍以上に拡大し、1,000億ドル規模に到達する可能性があります。

一方、クラウドセキュリティ分野の成長は、クラウド導入率と導入後のセキュリティ意識の高まりに左右されます。

クラウドコンピュート市場は5,000億ドルから1兆ドルに達すると予測されており、セキュリティ予算は通常クラウド支出の5%から10%に相当するため、2,500億ドルから1,000億ドル規模になる可能性があります。

業界リーダーであるパロアルトネットワークスが市場シェアを20%以上確保できれば、50億ドルから200億ドルの収益を達成する可能性があります。

セキュリティ運用(SecOps)分野では、業界全体の成長を考慮しなくても、同社は現在約800億ドル規模のレガシー製品や人手によるサービスを置き換えるポテンシャルを持っています。

このセグメントで20%の市場シェアを獲得できれば、同社は160億ドルの収益を得る可能性があります。

総じて、パロアルトネットワークスは複数の分野で大きな成長機会を持ち、明確な競争優位性と強力な実行力に支えられています。

長期的に高い成長を維持する能力については、ほとんど疑う余地が無いようにも見える一方で、短期的なリスクは最小限に見えます。

もしトランプ氏が再び大統領に就任した場合、ビジネス界の楽観的な見方が高まり、3年間続いた慎重な投資姿勢が改善され、IT支出が増加する可能性があります。

これにより、同社にはマクロ経済的な追い風が期待できます。

また、四半期決算で一時的な不安や疑念(FUD)が生じる可能性はあるものの、現在の成長軌道を踏まえると、そうした事態が起きる可能性は非常に低いと考えています。

5つの章から成る今シリーズは以上となります。

今シリーズを通じて、読者の皆様のパロアルトネットワークスに対する理解が少しでも深まれば嬉しく思います。

もし、質問や感想等あれば、コメント欄にて共有いただければと思います。

加えて、パロアルトネットワークスのプラットフォーム化戦略とテクノロジー上の競争優位性に関する詳細な分析を下記のレポートにて解説しております。

関心がございましたら、是非、こちらも併せてご覧いただければと思います。

プラットフォーム化戦略に関して

テクノロジー上の競争優位性

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