【Part 1:第3章】パロアルト・ネットワークス(PANW)株価予想:目標株価は171ドル?将来性と今後の株価見通しに迫る!

- 本編「Part 1」では、「Rule of X(SBC込み)」を用いて、高パフォーマンスながら低バリュエーションの銘柄を特定し、中国株、半導体、コンシューマーテクノロジーなどの分野で投資機会を探ります(市場や地政学的要因の影響も考慮しています)。
- そして、フォーティネット(FTNT)、センチネルワン(S)、パロアルトネットワークス(PANW)の初期の投資仮説を振り返り、弊社の最新のDCFバリュエーションを共有し、長期的な投資視点を解説していきます。
- 本稿「Part 1:第3章」では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄である「パロアルト・ネットワークス(PANW)とは?」という基礎的な内容に加えて、最新のバリュエーション分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 同社は、「プラットフォーム化」戦略を採用し、ネットワークセキュリティ、セキュリティオペレーション、クラウドセキュリティの分野で競争力を強化しています。これにより、顧客環境へのフルスタックセキュリティの組み込みを進め、収益の拡大を図っています。
- 同社の成長は、ネットワークセキュリティ(SASEの進化)、クラウドセキュリティ(リアルタイム保護の需要増)、SecOps(AIを活用した自動化)の3つのSカーブに沿って進んでおり、それぞれの分野でリーダーシップを確立しつつあります。
- 2025年第2四半期時点で、同社のプラットフォームを採用する顧客は前年比35%増加し、1,150社に達しました。今後も新規ARR(年間経常収益)の成長回復が鍵となり、市場予想を上回る成長を実現する可能性があると見ています。
※「【Part 1:第2章】センチネルワン(S)株価予想:目標株価は40ドル?将来性と今後の株価見通しに迫る!」の続き
前章では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄である「センチネルワン(S)とは?」という基礎的な内容に加えて、最新のバリュエーション分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
パロアルト・ネットワークス(PANW)– 正しい「プラットフォーム化」戦略
2024年初頭にニケシュ・アローラCEOが導入した「プラットフォーム化」戦略は、パロアルト・ネットワークス(PANW)のビジネスモデルを大きく変革しています。具体的には、ネットワークセキュリティ(NetSec)、セキュリティオペレーション(SecOps)、クラウドセキュリティといった分野でのセキュリティ支出を統合し、競合ベンダーを徐々に排除しながら、顧客環境への同社のフルスタックセキュリティの組み込みを深めることで収益拡大を図るものです。
この戦略の実行は非常に積極的で、同社のプラットフォームの一部のみを利用している顧客には、スイート全体への無料アクセスを延長することで、契約更新前に同社のエコシステムへの依存度を高める仕組みとなっています。
このアプローチは、従来のレガシー型のプラットフォーム化とは大きく異なります。多くのベンダーは、質の低い製品を割引価格でクロスセルすることで市場拡大を図ります。代表例がマイクロソフト(MSFT)のセキュリティ戦略であり、個々の製品の優位性ではなく、バンドル販売によって顧客を囲い込む手法を採用しています。クラウドストライク(CRWD)もクラウドセキュリティにおいて同様の手法をとっており、エンドポイント検知・対応(EDR)で築いた評判を活かし、クラウド製品を低価格で販売することで市場を広げています。
一方、パロアルト・ネットワークスの戦略は単なるバンドル販売ではありません。主力の3分野において、本当に優れた次世代のベスト・オブ・ブリード(BoB:特定の業界や分野において最も優れた企業や製品)製品を自社開発や買収によって確保してきました。
✅ ネットワークセキュリティ(NetSec):主に自社開発
✅ セキュリティオペレーション(SecOps):自社開発と買収の組み合わせ
✅ クラウドセキュリティ:主に買収によるものの、M&A後の創業者の力を活かした大きな成功
このアプローチにより、同社は既存顧客からの収益に頼るのではなく、新規顧客の獲得にも積極的に取り組むことができます。マイクロソフトやクラウドストライクとは異なり、パロアルト・ネットワークスはBoBの優れた製品群を提供することで新規顧客を引きつけ、社内チームが継続的に技術革新の最前線に立ち続けることを求めています。
その成果は明らかです。2月13日に2025年度第2四半期(暦年:2024年第4四半期)決算を発表していますが、2025年第2四半期時点で、1,150社の顧客が同社のプラットフォームを採用しており、前年比で35%の増加を記録しています。この戦略は、顧客ごとの年間経常収益(ARR)を増加させるだけでなく、急速に変化する3つのセキュリティ市場において、同社のリーダーシップをさらに強固なものにしています。
(出所:パロアルト・ネットワークスの2025年度第2四半期決算資料)
パロアルト・ネットワークス(PANW)の成長の3つのSカーブ:NetSec、クラウドセキュリティ、SecOps
パロアルト・ネットワークス(PANW)の成長は、以下の3つのSカーブに沿って展開しています。
1️⃣ 第1のSカーブ:ネットワークセキュリティ(NetSec) – 従来型だがSASEによって進化中
2️⃣ 第2のSカーブ:クラウドセキュリティ – 新たなフロンティアであり、リアルタイム保護のニーズが高まる
3️⃣ 第3のSカーブ:SecOps – AI主導の自動化により最も変革的な成長機会
これらの分野はすべて構造的な変革の最中にあり、同社はそれぞれの変化の最前線に立っています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)の第1のSカーブ:ネットワークセキュリティ(NetSec) – SASEとエンタープライズブラウザで競争優位を強化
パロアルト・ネットワークス(PANW)のStrata & Prisma SASE事業は、従来のファイアウォール主導のセキュリティを超えて進化し、単なるファイアウォールのインストールベースを活用するのではなく、業界最高水準のソリューションを提供することで市場シェアを拡大しています。
SASE市場のリーダーシップ
✅ パロアルト・ネットワークスのSASEは5,600社以上のアクティブ顧客を持ち、前年比+20%成長を記録
✅ 100万ドル以上のSASE契約は前年比2.5倍に増加
BoBエンタープライズブラウザ – ゲームチェンジャー
パロアルト・ネットワークスはTalon Securityの買収により、SASE市場唯一のBoB(ベスト・オブ・ブリード)エンタープライズブラウザを獲得しました。現在100万以上のライセンスを販売し、年間経常収益(ARR)10億ドル規模への明確な成長路線を確立しています。
そして、競合他社が高額な価格設定やバンドル戦略に依存するのに対し、パロアルト・ネットワークスのセキュアエンタープライズブラウザは以下の強みを提供します。
✅ エンドポイントでの詳細なセキュリティ制御
✅ 高速でローカライズされたセキュリティ適用
✅ 優れたユーザーエクスペリエンス(UX)、SASE導入を促進
この取り組みは単なる新製品の投入ではなく、「ブラウザを企業の新たなセキュリティ境界線とする」という戦略的な賭けです(詳細は昨年末にリリースした5つの章から成る長編の同社に関する👇下記のレポートをご覧ください)。
もし同社がブラウザにセキュリティ機能を統合し続けることができれば(OpenAIがコンシューマー向けAI体験で同様の取り組みを進めていると噂されています)、これは数十億ドル規模の市場機会になる可能性があると考えています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)の第2のSカーブ:クラウドセキュリティ – エージェントレスからリアルタイム保護へ
数年前、次世代のエージェントレス型クラウドセキュリティ(WizやOrcaが先駆者)が市場の主流となりました。ベンダー各社は、迅速な導入とコンプライアンス準拠を主な訴求ポイントとしていました。しかし、弊社のクラウドセキュリティに関する分析レポートでも指摘していたように、このアプローチだけではいずれ限界を迎え、リアルタイムの保護に対する需要が高まると予測していました。
現在、市場はリアルタイムのクラウド保護を求めており、ライブでの脅威検知と対応が可能な、動的かつポータブルなエージェントを提供できるベンダーが優位に立っています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)はまさにこの機能をPrisma Cloudで実現し、クラウドセキュリティの「トリレンマ」に対応できる体制を整えています。従来のベンダーは、包括性・即時性・導入の容易さの間でトレードオフを余儀なくされていましたが、同社はすべてを両立させ、エージェントレス型・エージェント型の両分野で市場をリードしています。
1️⃣ 包括性 – エージェントレス型とエージェント型の両方をカバー
2️⃣ 即時性 – Cortexやシフトライト機能を活用し、リアルタイムで脅威を軽減
3️⃣ 導入の容易さ – エージェントレスの迅速な展開に加え、軽量かつポータブルなエージェントをスケーラブルに展開可能
このリアルタイム・シフトライト型のセキュリティモデルにより、同社はクラウド検知&対応(CDR)の分野で競争優位を確立しました。これは、エージェントレス型ベンダーが対応できていない重要なギャップです。
さらに、同社は生成AI(GenAI)ワークロード向けのAI-SPM(AI Security Posture Management)においてもリーダーシップを発揮しています。企業がLLM(大規模言語モデル)やAIアプリケーションを統合する中で、AIアプリケーションがエンタープライズセキュリティの中心となることは避けられません。同社は、Prisma Cloud内でAIアプリケーションのガバナンスと保護をネイティブに提供できる体制を確立しており、今後の市場でも有利なポジションを築いています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)の第3のSカーブ:SecOps – 最も変革的な成長機会
SecOps(セキュリティオペレーション)は、サイバーセキュリティ分野で最も労働集約的な領域です。SOC(セキュリティオペレーションセンター)のアナリストは、膨大なアラートに埋もれ、真に重要な脅威を見極めるのに苦慮する一方で、攻撃者側は自動化技術を駆使し、攻撃の規模を拡大させています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)はXSIAMによってこの課題を解決しようとしており、すでに年間経常収益(ARR)10億ドルを突破しています。SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)の市場はすでに変革期を迎えており、同社がその先頭を走っています。
✅ XSIAMは、従来のSIEM(Splunk、Qradar、ArcSight)を置き換え、ビッグデータとAIを活用した次世代SOCを実現
✅ IBMとのパートナーシップが市場浸透を加速 – IBMはSIEM事業から撤退し、自社のQradarの顧客基盤と知的財産(IP)をパロアルト・ネットワークスに譲渡
✅ SOC業務の自動化 – パロアルト・ネットワークスは自社のSOC業務にXSIAMのAI自動化を導入し、SOC人員を33%削減
この市場機会は非常に大きく、従来のSIEMソリューションは現代のセキュリティ運用に適していません。同社は、この市場の大きな変化を捉え、大規模な事業展開を進めています。
パロアルト・ネットワークス(PANW)のバリュエーション – 未来のセキュリティプラットフォーム
パロアルト・ネットワークス(PANW)は、構造的な市場変化を背景に、3つの成長曲線を同時に推進しています。
1️⃣ ネットワークセキュリティ(第1のSカーブ) – SASE市場での優位性を確立し、エンタープライズブラウザを新たなセキュリティ境界線として活用
2️⃣ クラウドセキュリティ(第2のSカーブ) – 動的なエージェントとシフトライト機能を活用したリアルタイムセキュリティの実現
3️⃣ SecOps(第3のSカーブ) – XSIAMによるAI駆動のSOC自動化でSIEM市場を変革
同社はプラットフォーム化戦略を通じて、顧客あたりの支出額を増加させる一方で、BoB(ベスト・オブ・ブリード)製品を通じて新規ビジネスの獲得を継続しています。
サイバーセキュリティ分野におけるプラットフォーム化の最大のリスクは停滞ですが、同社はイノベーションを優先する設計を採用しており、新たなセキュリティトレンドの最前線に立ち続ける体制を整えています。
投資家にとって、同社は単なるバンドル販売を行うベンダーではなく、エンタープライズセキュリティの未来を構築する企業といえます。
しかし、事業に対する楽観的な見方と株価のバリュエーションは完全には一致していません。ベースケースのパラメータ設定に基づくと、現在の同社の株価はフェアバリュー(171.08ドル)の範囲内と考えています。そのため、追加投資については大幅な調整が発生するまで待つ方針です。
(出所:筆者作成)
一方で、パロアルト・ネットワークスの成長が市場予想を上回る可能性も見え始めています。特に2025年度(FY25)と2026年度(FY26)の売上成長率が14%〜15%と予想されている中、それを超える成長を実現する可能性があります(同社の会計年度は7月31日締め)。
その鍵となる指標が新規ARR(年間経常収益)の成長回復です。新規ARRの増加は、新規顧客の獲得やアップセルの成功を示す重要な指標であり、この成長がプラットフォーム化戦略によるものである可能性が高いと考えています。
(出所:筆者作成)
そして、今後の四半期決算で、その詳細がより明らかになるでしょう!
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