パランティア・テクノロジーズ(PLTR)10年後も株価は堅調?AIPブートキャンプと米国商業部門の成長が成功の秘訣!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、米国の注目のAI銘柄であるパランティア・テクノロジーズ(PLTR)の業績と財務パフォーマンスの分析を通じて、「10年後も株価は堅調か?」という疑問に答えるべく、同社の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- パランティア・テクノロジーズは、米国商業部門の成長とAIPブートキャンプにより、顧客基盤を拡大し、収益性を向上させています。
- AIPブートキャンプを通じて、パランティア・テクノロジーズは多くの企業との契約を獲得し、コスト効率の高いマーケティング戦略を実施しています。
- 主要クラウドプラットフォームとの提携により、パランティア・テクノロジーズはAI技術の活用を広げ、多様な業界での成長を加速させています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)への関心を高める米国での契約
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の米国商業部門が大きな成長を遂げており、市場では同社株式に注目が集まっています。
先進的な人工知能プラットフォーム(AIP)やクラウド大手との戦略的パートナーシップにより、同社は多くの業界で影響力を拡大しています。
特に、革新的なAIPブートキャンプ(同社が提供するAIPを企業に導入するための集中型トレーニングプログラム)は、高付加価値の顧客を惹きつけ、収益性を向上させ、市場での存在感を強める要因となっています。
このような最先端技術と戦略的実行の融合により、パランティア・テクノロジーズは今後も成長を続け、市場をリードする立場を固めていくでしょう。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の米国商業部門が成長を加速
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の成長を支えているのは、米国商業部門です。
この部門の売上高は過去12カ月で前年比48.7%増加し、全体の売上高の22.4%を占めています。
2024年第2四半期では、米国商業部門の売上高が全体の23.5%を占めており、今後も同社の人工知能プラットフォーム(AIP)、主要クラウドプラットフォームとのパートナーシップ、そして各業界でのAI導入需要の高まりにより、この割合はさらに増えるでしょう。
また、2024年第2四半期には、米国商業部門の契約数が123件に達し、前年比98.0%の増加を見せました。
この部門の契約総額は2億6200万ドルに達し、前年比で152%増加しています。
そして、パランティアはこの商業部門での成功をAIPブートキャンプのおかげだとしています。
これは、同社がマーケティング費用を抑える方針に合致した優れた戦略で、数日間にわたるこのイベントでは、既存の顧客や見込み顧客が自社のニーズに合ったAIの使い方を見つける機会を提供しています。
米国商業部門が成長の原動力
(出所:筆者作成)
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のAIPブートキャンプ:見込み顧客を生涯顧客へ
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)では、既存の顧客がサービスを拡大し、見込み顧客が生涯顧客へと転換しています。
ブートキャンプからのコンバージョン率は公表されていないものの、パナソニックエナジーやイートンなど、さまざまな業界の企業との大型契約がブートキャンプを通じて成立した例が報告されています。
たとえば、パナソニックエナジー・オブ・ノースアメリカは、財務、品質管理、製造業務においてAIPを活用する3年間の契約を拡大しました。
AARP(米国の50歳以上の人々を対象とした非営利団体で、健康、財務、社会保障などに関する情報提供やサービスを行っている)は、毎月2,900万人のユニークビジターに対して、ターゲットを絞ったパーソナライズされた体験を提供するためにAIPを活用しています。
イートン(ETN:電力管理ソリューションを提供するグローバル企業)は、ERP導入の近代化に加え、財務、営業、サプライチェーンでもAIPを活用しています。
また、キンダーモルガン(KMI:アメリカを拠点とするエネルギーインフラ企業)とは、ストレージの最適化、パイプラインの健全性モニタリング、電力最適化を含む5年間のFoundryおよびAIP契約を拡大しました。
ブートキャンプの成功例として、大手コンビニチェーンが、ブートキャンプで作成したプロトタイプから25日以内に有料パイロット版に進み、すぐに在庫管理と価格最適化のユースケースを本稼働に移行させた事例があります。
さらに、このブートキャンプは、Net Dollar Retention(既存顧客が今期どれだけ売上に貢献しているかの指標)が100%以上を維持する大きな要因となっています。
そして、AIPブートキャンプは、既存顧客との関係を深めるだけでなく、新規契約の獲得にもつながっています。
下記のチャートからも分かる通り、パランティア・テクノロジーズのNet Dollar Retentionは2023年第3四半期までは下降傾向にありましたが、最近では回復に転じ、その主な要因の一つがAIPブートキャンプであるとされています。
パランティア・テクノロジーズのNet Dollar Retention推移
(出所:筆者作成)
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の利益率が上昇中
AIPブートキャンプを活用したマーケティング戦略は、コスト効率が非常に高く、コストの高い営業チームを構築する必要をなくしています。
結果、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は売上高において急成長を維持しつつ、運営コストの管理に成功しています。
AIPブートキャンプは、最小限のコストで顧客基盤を拡大する効果的なマーケティング手法となっており、その成果を上げています。
下記のチャートからも分かる通り、同社の販売・マーケティング費用は、5年前には売上高全体の60.6%を占めていましたが、現在では29.7%まで削減されています。
この結果、同社の収益性は大幅に改善しました。
2024年第2四半期には、7四半期連続でGAAPベースの黒字を達成しており、パランティア・テクノロジーズにおける議論においても大きな注目を集めています。
この黒字は、コスト効率の高い収益拡大を通じて、持続的な利益確保への確実な歩みを示していると言えます。
売上に対するセールスおよびマーケティング費用の割合
(出所:筆者作成)
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の多様化する顧客基盤:特定顧客への依存を軽減
米国内外の商業部門からの売上高(下記チャート:Commercial Revenue)が全体に占める割合が増えることで、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は少数の主要顧客に依存する状況から脱しつつあります。
さらに、連邦予算に左右されやすい政府契約(下記チャート:Government Revenue)への依存も徐々に減少していく見込みです。
パランティア・テクノロジーズの売上高構成
(出所:筆者作成)
同社の顧客基盤が拡大することで、1顧客あたりの平均売上高は減少していますが、これは同社にとって必ずしもネガティブなことではなく、むしろ好ましい傾向であると考えます。
なぜなら、より多様化した顧客基盤により、安定した売上高成長が見込まれるからです。
顧客あたりの平均売上高(百万ドル)
(出所:筆者作成)
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は多様なチャネルとの提携でAIPの活用を加速
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、アマゾン(AMZN)のAWS、アルファベット(GOOG/GOOGL)のGoogle Cloud Platform、マイクロソフト(MSFT)のAzure、オラクル(ORCL)のOracle Cloudなどのクラウドプラットフォームと提携することで、AIPの可能性をさらに広げています。
同社は主にオンプレミス(クラウド環境とは異なり、企業が自社の施設内にサーバーやソフトウェアを設置・運用する形態)で製品を提供していますが、商業部門の急速な成長に伴い、クラウドでの迅速かつ効率的な展開が必要とされています。
そのため、主要なクラウドプラットフォームとの提携は、商業部門での成長を持続させるための重要な要素となっています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の業界はまだ始まったばかり
下記のグラフからも分かる通り、2024年時点でビッグデータ解析市場は3,290億ドル規模に達しており、2032年には9,190億ドルに成長する見込みです。
これは年平均成長率(CAGR)13.7%を示しています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)はAIPの成功を基に、これまで主に政府向けに提供していたインテリジェンス分野に加え、商業部門にも製品・サービスを拡大することで、さらなる市場拡大が期待されています。
現在の市場シェアは1.67%ですが、最先端技術を活用して、政府および商業セクターの多様なニーズに対応しています。
(出所:Straits Research)
AI革命は、さまざまな業界で新しい技術の導入を加速させています。
同社のAIPブートキャンプは、AIの導入に不安を感じている企業に対し、カスタマイズされたソリューションを提供することで、AI活用の後押しをしています。
特に情報技術、ヘルスケア、製造業の分野では、データ解析におけるAIの活用が急速に進んでいます。
セクター別のAI活用度とテスト実施率
(出所:MIT Sloan School of Management)
同社は、ヘルスケア分野でも複数の大規模契約を結んでおり、最新のものではParexel(医薬品の臨床試験を専門とするグローバルな医療リサーチ企業)と提携してヘルスケアAIの分野を強化しています。
契約の詳細は公開されていませんが、パランティア・テクノロジーズが商業企業と協力し、それぞれのニーズに合わせたサービスを提供していることがうかがえます。
この契約前に、両社は1年間にわたって協力してきました。
また、パランティア・テクノロジーズは初めて臨床研究機関とも提携を開始しました。
さらに、英国のNHS(National Health Service:国民保健サービス)やCardinal Health(CAH:医療用品や医薬品の流通を行うアメリカの大手ヘルスケア企業)など、ヘルスケア分野での大規模契約も確認されています。
以上より、同社は強力な技術力とプロセスを基に、さまざまな業界で市場を拡大するポテンシャルを持っていると言えます。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のフリーキャッシュフローがプラスに転じる
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、営業活動によるキャッシュフローの増加と低い設備投資の負担により、安定したプラスのフリーキャッシュフローを実現し始めています。
また、同社はストックオプション報酬(SBC)の削減にも取り組んでおり、現在のSBC水準は経営陣や従業員への十分なインセンティブを維持しつつ、大幅な株式希薄化を避けることができています。
SBCの売上高に占める割合は、2020年の116.3%から2021年には50.5%、2024年前半には20.4%まで大幅に減少しました。
パランティア・テクノロジーズはフリーキャッシュフローが黒字化
ストックオプション報酬(SBC)を差し引いた後のフリーキャッシュフロー
(出所:筆者作成)
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の「ルール・オブ・40(Rule of 40)」は持続的成長を示唆
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)に関する議論では、ソフトウェアやSaaS企業にとって重要な指標である「ルール・オブ・40(Rule of 40)」がよく取り上げられます。
この指標は、売上成長率と利益率(ここではEBITDAマージン)の合計が40%以上の企業が、持続的な成長を実現しやすいことを示しています。
同社は、過去12カ月のデータに基づいて算出されたルール・オブ・40のスコアが34%(売上成長率+EBITDAマージン)となっており、40%に近づいています。
同社は、成長と収益性のバランスをうまく取っており、販売・マーケティング効率の最適化やスケールアップを進めることで、今後EBITDAマージンのさらなる拡大が見込まれています。
また、商業部門の成長に加え、政府部門からのサポートも相まって、同社は40%の目標を超える成長を実現することが期待されています。
ルール・オブ・40:パランティア・テクノロジーズと競合他社
(出所:筆者作成)
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