02/25/2025

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)将来性は魅力的?目標株価は186ドル?AIエージェント市場での成長が今後の鍵!

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  • 本稿では、注目の米国AI関連銘柄であるパランティア・テクノロジーズ(PLTR)の最新の2024年第4四半期決算、並びに、AI・AIエージェント市場における成長可能性の詳細な分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • パランティアは2月3日発表した最新の2024年第4四半期決算において、売上と利益が市場予想を大きく上回り、特に米国市場での成長が加速しています。
  • パランティアのオントロジー技術とAIエージェントの活用が、企業の業務効率向上を後押しし、同社顧客、並びに、同社の長期的な成長の鍵となると見られています。
  • AIエージェント市場の拡大に伴い、パランティアのTAM(対応可能な市場規模)は数兆ドル規模に達する可能性があり、弊社算出のDCF法に基づくバリュエーション分析では、同社の株価が今後186ドルまで上昇する可能性もあると見ています。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して

本稿では、パランティア・テクノロジーズPLTR)に対する熱狂が高まる中、同社の最新の決算分析、並びに、AIエージェントの視点を通じて、同社のTAM(対応可能な全体の市場規模)を改めて分析することにしました。そして、TAM分析をもとに、パランティアの最終的な収益水準を推計していきます。また、DCF(割引キャッシュフロー)評価では、TAMを基にしたトップダウンの最終収益予測と、通常のボトムアップアプローチをすり合わせることを試みています。

まず、パランティアの成長は、2025年2月3日発表の2024年第4四半期の決算を受けて、引き続き勢いを増しています。 同四半期の売上は8億2800万ドルに達し、ガイダンスを5900万ドル上回りました。また、調整後営業利益は3億7300万ドルとなり、ガイダンスを7300万ドル上回りました。 米国市場においては、商業部門と政府部門の両方で売上成長が再加速しており、それぞれ前年同期比64%増(前期比20%増)、前年同期比45%増(前期比7%増)となっています。 さらに、この成長加速に伴い、調整後EBITマージンおよびFCF(フリーキャッシュフロー)マージンも拡大し、それぞれ45%および63%に達しています。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のオントロジー

2021年、私たちはパランティア・テクノロジーズPLTR)が各企業クライアント向けにカスタマイズされたオントロジー(データや情報を体系的に整理し、意味的な関係を定義するための概念的なフレームワーク)を構築できる能力を、独自性があり、将来的に変革をもたらす可能性のあるスキルセットとして特定しました。この点を指摘したのは、同社の経営陣がこの能力を頻繁に強調するようになるよりも、ずっと前のことです。 当時、「オントロジー」という言葉は決算説明会でもほとんど言及されていませんでしたが、2024年第3四半期の決算説明会では、9回も取り上げられました。私たちは当初、オントロジーが顧客のビジネス判断を向上させる点に注目していましたが、AIの進化がパランティアの成長をこれほど迅速に後押しするとは完全には予測していませんでした。 私たちのタイミングが幸運だったのは確かですが、オントロジーの戦略的重要性を早い段階で正しく理解していたことが証明されたとも言えます。

パランティアについて語るとき、私たちはまるで壊れたレコードのように同じことを繰り返しているかもしれません。しかし、エンタープライズLLM(大規模言語モデル)の導入において、オントロジーがなぜ不可欠なのかを掘り下げることは、私たちの長年の見解の核心部分にあたります。 多くの企業は依然として生成AIモデルを実証実験の段階から本格的な運用へと移行させるのに苦戦しています。しかし、パランティアのプラットフォーム、特にFoundryとAIPは、最先端のAIを具体的で即時に成果を生み出す形へと変換し、導入を加速させています。この点が、パランティアのサービスに対する需要を押し上げる要因となっています。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の現実世界への影響

この成功の中心にあるのは、パランティア・テクノロジーズPLTR)が「より少ないが、より深い企業関係」に注力する戦略です。多くのエンタープライズSaaSプロバイダーが可能な限り多くの顧客を獲得しようとするのとは対照的に、パランティアは限られた業界の大手企業を最大限に成功へ導くことに専念しています。 同社は単にLLM(大規模言語モデル)や高度な分析ツールを導入するだけではなく、製造ライン(Warp Speed)から保険引受(AIエージェント78体により2週間の業務を3時間に短縮)に至るまで、業務フロー全体をカスタマイズします。 企業がパランティアのソリューションによってコスト削減や新たな収益源の創出が可能になることを実感するたびに、その実績が同社のプラットフォームの「現実世界への影響力」を証明する広告のような役割を果たします。 また、パランティアを選択することが、企業が独自にAIを開発・導入する「DIYアプローチ」よりも確実にROI(投資対効果)を得られる道であることも明確になります。DIYの導入は、企業内に専門知識が不足しているため、往々にして過度に複雑になりがちだからです。

一方、政府向け事業はパランティアの歴史的な強みのひとつであり、現在再び大きく成長しています。同社は、米国国防総省や同盟国の機関と密接な関係を築いており、インテリジェンスデータ分析(Maven)から現場の運用システムまで幅広く支援し、前四半期の公共部門の売上を前年同期比45%増加させました。 さらに、パランティアはFedRAMP認証を取得したインフラを他のソフトウェア企業にも提供する姿勢を示しており、これにより新たなパートナーシップを形成しつつ、競合になり得るシステムインテグレーターとの摩擦を軽減しています。 この取り組みが、パランティアの政府向け事業の契約案件が複数の部門や司令部で拡大し続けている理由のひとつです。また、Army Software Factory(陸軍のソフトウェア開発部門)や新興の防衛技術企業が、自社で同様の機能を開発するのではなく、パランティアのプラットフォームを採用するケースが増えているのも、こうした背景があるからです。

さらに、長期的な成長機会は、これまで以上に大きくなる可能性があります。 パランティアが今後も30%超の売上成長を維持、あるいは加速できるかどうかは、「AIが支配する未来において、LLM自体がコモディティ化する」という前提にかかっています。 本当の差別化要因となるのは、企業がいかに効果的にLLMをデータ環境に統合できるかという点です。 パランティアはこの「統合レイヤー」を20年にわたって磨き上げており、新規参入企業がこの優位性に追いつくことは極めて難しいでしょう。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のTAM

パランティア・テクノロジーズPLTR)のTAMを正確に推定することは非常に困難です。それは、同社のソフトウェアが価値をもたらす業務フロー、意思決定、企業、業界の数が膨大であるためです。 最近執筆した下記の3つの章から成る長編レポート(パランティア・テクノロジーズ、サービスナウ、マンデードットコムの比較)における議論の中でも触れましたが、AIエージェントによって生み出されるTAMは計り知れない規模になる可能性があります(詳細はインベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧ください)。

さらに、パランティアは他のどの企業よりも早くAIエージェントの実用化を進めており、この分析を改めて見直すことで、パランティアの最終的な収益規模に関する重要な示唆が得られるかもしれません。

そして、今回の本稿における分析の本質は、AIエージェントがグローバル経済に与える影響を推定することです。AIエージェントは大幅な生産性向上をもたらし、企業がより少ない投入資源で同じ成果を上げる、あるいは同じ資源でより多くの成果を生み出すことを可能にします。

この枠組みでは、以下のように定義します。

✅ 投入資源(Input):労働に関連するコスト

✅ 成果(Output):非収益成果と収益成果の2種類

非収益成果には以下の業務が含まれます。

✅ IT業務:企業ネットワークの安定運用、従業員のリソースアクセス管理、データやシステムのセキュリティ確保

✅ 人事業務:雇用契約の管理、定期的なパフォーマンス評価、従業員の福利厚生の維持

✅ 会計業務:企業の財務記録の正確性維持、会計規則の遵守

収益成果はより単純で、企業が生み出す総売上を指すこととします。

AIエージェントによってコスト削減と収益向上が進めば、最終的には利益の増加につながります。 もし平均的な企業の利益増加を推定できれば、それを世界規模でスケールすることで、全体の利益増加額を見積もることが可能です。 次に、この利益増加、つまり価値創出のうち、AIソフトウェアエージェントを提供する企業がどれほどの割合を獲得できるかを推定します。 この計算が、最終的にパランティアを含むAIエージェント関連ソフトウェアベンダーのTAMとなります。

また、AIエージェントは人間の従業員を置き換える、あるいは支援するという性質を持つため、生産性向上の影響(非収益成果・収益成果の両方)を従業員単位で測定することが理にかなっています。 この前提のもと、以下の分析を進めていきます。

基準となる企業(従業員200人)

この分析における主なパラメーターは、以下の4つの推定値です。

1️⃣ 従業員の平均給与と従業員ごとの間接コスト

2️⃣ 従業員1人あたりの平均売上

3️⃣ 企業1社あたりの平均従業員数

4️⃣ 世界全体の企業数

これらのパラメーターに設定する値によって、最終的な世界全体の利益増加額の推定値は大きく変動します。

従業員の構成

・収益を生み出す部門(Revenue-generating):40%(80人)

例:人事(HR)、IT、会計など

・収益を直接生み出さない部門(Non-revenue):60%(120人)

例:研究開発(R&D)、プロダクト開発、セールス&マーケティング(S&M)など

コスト

・従業員1人あたりの給与+間接コスト:10万ドル (内訳:給与8万5000ドル、業務に必要なソフトウェア・サービス費用1万5000ドル)

・労働関連の総コスト:200人 × 10万ドル = 2000万ドル

・その他のコスト(賃貸費用、保険、原材料など):400万ドル

・総コスト(基準値):2400万ドル

売上

・収益を生み出す従業員1人あたりの基準売上:35万ドル

・総売上(基準値):80人 × 35万ドル = 2800万ドル

基準となる利益

・売上 2800万ドル – コスト 2400万ドル = 400万ドル

AIエージェント導入後

収益を直接生み出さない部門(従業員120人)

・生産性3倍向上 ⇒ コスト全体を67%削減

・従来の労働コスト:120人 × 10万ドル = 1200万ドル

・新たな労働コスト:1200万ドル × (1 – 67%) = 400万ドル

・コスト削減額:800万ドル

ただし、このコスト削減の大部分(もしくは全て)は、人間の従業員をAIエージェントに置き換えることによって実現される可能性が高いです。

⚠️ 注意:AIエージェントの導入により、企業が人件費削減のために従業員を自動化技術へ置き換えることで、非収益部門における大規模な雇用喪失が発生する可能性があります。

収益を生み出す部門(従業員80人)

・生産性2倍向上 ⇒ 収益100%増加

・従来の従業員1人あたりの売上:35万ドル

・新たな従業員1人あたりの売上:35万ドル × 2 = 70万ドル

・新たな総売上(80人):80人 × 70万ドル = 5600万ドル

・売上増加額:5600万ドル – 2800万ドル = 2800万ドル

新たな損益計算書(P&L)

新たな売上

・2800万ドル + 2800万ドル = 5600万ドル

新たな労働コスト

・収益を直接生み出さない部門:400万ドル(従来の1200万ドルから削減)

・収益を生み出す部門:800万ドル(変更なし)(人員数や給与に変化なし)

・合計労働コスト:1200万ドル

🔔 注意:非収益部門とは異なり、収益を生み出す従業員はAIエージェントによる置き換えのリスクが低いと考えられます。 営業や顧客対応業務では、人間同士のやり取り、関係構築、細やかな交渉が求められるため、AIは従業員を完全に代替するのではなく、業務を支援する形で活用される可能性が高いです。

その他のコスト(変更なし)

・400万ドル

新たな総コスト

・1200万ドル(労働コスト) + 400万ドル(その他のコスト) = 1600万ドル

新たな利益

・5600万ドル(売上) – 1600万ドル(コスト) = 4000万ドル

利益の増加額(従来比)

・4000万ドル – 400万ドル = 3600万ドル

AIエージェント導入に対する支払い意欲

AIエージェントを提供するソフトウェアベンダーは、サービス料金を25%引き上げる可能性があるでしょう。 例えば、従来2万ドルを支払っていた企業が、2万5000ドルの支払いを受け入れるとします。 今回のケースに適用すると、3600万ドルの追加利益のうち、25%(900万ドル)がソフトウェアベンダーに支払われ、企業の最終的な純利益増加額は2700万ドルとなります。

AIエージェントの世界規模での拡大

世界には「中規模以上」の企業が50万社存在すると仮定します。 各企業がAIエージェントに900万ドルを投資し、2700万ドルの追加利益を生み出すとすると、計算は以下のようになります。

50万社 × 900万ドル = 4.5兆ドル

この4.5兆ドルが、既存のソフトウェア支出に加えてAIエージェント市場における理論上のTAMとなります。 もちろん、すべての企業が一斉にAIエージェントを導入するわけではありませんが、もしエージェントが本当にこのレベルの生産性向上を実現すれば、理論的な上限としてこの規模の市場が形成される可能性があります。

よりシンプルなアプローチ

上記の計算や推定は興味深いものですが、よりシンプルな方法で同様のTAMを求めることもできます。 例えば、世界のナレッジワーカーの平均給与+従業員関連コストを6万ドルと仮定し、ナレッジワーカーの総数を10億人とすると、以下のような計算になります。

✅ 労働コスト総額:6万ドル × 10億人 = 60兆ドル

✅ この数値は、世界のGDP110兆ドル × 労働所得比率52% = 57.2兆ドルという計算とほぼ一致し、妥当な範囲であると考えられます。

✅ ここで、AIエージェントがこの労働コストを40%削減すると仮定すると、企業全体の追加利益は24兆ドルになります。

✅ そのうち25%がAIエージェント提供企業に支払われるとすれば、6兆ドルが市場規模(TAM)となります。

このアプローチでは、AIエージェント市場のTAMは6兆ドルに達する計算になります。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のTAMと最終的な収益ポテンシャル

これらの概算によると、パランティア・テクノロジーズPLTR)の潜在的なTAMは極めて巨大であることがわかります。しかも、これは将来的なAIエージェント市場に限定した話であり、現時点のソフトウェア市場は含まれていません。 仮にパランティアのTAMを上記2つの方法の中間とすると、同社のTAMは約5兆ドルと推定できます。 このうち、パランティアが5%を獲得できるとすれば、最終的な収益規模(ターミナルレベニュー)は2500億ドル(さらに、AIエージェント以外のソフトウェア事業からも数百億ドルの収益が加算)となります。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のバリュエーション

前書き:従来の評価基準を超えた視点で算出

一見すると、パランティア・テクノロジーズPLTR)の本質的価値を現在の市場価格よりも大幅に高く評価することは、すでに高水準のEV/S倍率(企業価値/売上高倍率)を考慮すると、行き過ぎのように思えるかもしれません。 多くの投資家は直感的に従来の成長鈍化モデルを適用し、数十億ドル規模の売上に達した企業は必然的に成長が鈍化すると考えます。この見方は一般的に正しいといえます。 しかし、歴史を振り返ると、一部のテクノロジー企業はこの常識を覆し、市場が当初評価しきれなかった形で成長を再加速させ、複利的に拡大してきた事例もあります。

この評価分析の目的は、パランティアが現時点で割安であると主張することでも、過激な成長予測を前提とすべきだと提案することでもありません。 むしろ、パランティアがAI革命における基盤インフラの提供企業として成長を続けた場合、「どのような可能性があるのか」を探るものです。 もしAIエージェントが企業にとって不可欠な存在となり、パランティアがその大規模運用を主導し続けるとすれば、同社が数千億ドル規模の売上を達成することも、決して非現実的ではありません。

ウォール街はしばしば長期的な成長機会の正確な評価に苦戦します。 2000年代後半の投資家は、2010年代のマイクロソフト(MSFT)の成長再加速を予測できませんでしたし、AIワークロードの爆発的な増加によるエヌビディア(NVDA)の急成長を的確に見抜いた人もほとんどいませんでした。 今回の分析では、予測期間を延長し、さまざまな成長シナリオを検討することで、「パランティアの現在の適正株価」を大胆に予想するのではなく、市場が過小評価しているかもしれない長期的な成長ポテンシャルを問い直すことを目的としています。

この評価フレームワークは、学術的な思考実験であると同時に、投資戦略の一環でもあります。 私たちは確実な未来を断言するつもりはありません。 しかし、パランティアは成長の常識を覆し、長期的な複利成長を実現する数少ない企業のひとつとなる可能性を秘めていると考えています。

DCF(割引キャッシュフロー)法によるバリュエーション分析

通常、DCF評価には15年間の明示的な予測期間を設定しています。しかし、パランティア・テクノロジーズPLTR)は従来の企業とは異なる存在のように思えます。 先述のとおり、パランティアにとってAI市場は巨大な機会であり、最終的に2,500億ドル以上の売上が達成可能であるならば、予測期間を延長する必要があります。 仮に15年間の予測期間を維持した場合、15年で売上2,500億ドルに到達するには、最初の数年間で年間70%の成長が必要になります(2027年会計年度~2030年会計年度の年平均成長率(CAGR)を調整すると確認できます)。しかしながら、弊社はこの成長率は現実的に達成可能だと考えています。場合によっては、1~2年間の100%成長もあり得るかもしれません。 しかし、今回は予測期間を25年に延長し、2027年会計年度(FY27)~2030年会計年度(FY30)の年平均成長率を45%とすることで成長再加速を反映する形を採用しました。

💡パランティア・テクノロジーズのDCF法によるバリュエーション分析の詳細はこちら

パランティア・テクノロジーズのDCF評価(25年間の予測期間を使用)

(出所:筆者作成)

なぜ、現在約30億ドルの売上規模を持つパランティアが、これほどの成長を再加速し、持続できると考えるのか?その理由は、現在のパランティアの米国商業部門の売上成長率にあります。 直近の成長率を見ると、前期比20%増で推移しており、これを年率換算すると100%以上の成長となります。 さらに、この成長率は加速し続けているように見えます。

2024年第4四半期(4Q24)の決算説明会では、経営陣が2025年度(FY25)の米国商業部門の売上ガイダンスを少なくとも10億7900万ドルと示しました。 これは、前年同期比153%の成長に相当します。

また、以下の分析では、米国商業部門の成長鈍化を考慮しつつ、2030年会計年度(FY30)までの成長率を推定しました。 さらに、それ以外の事業(政府部門など)については、2030年会計年度まで年間20%成長を維持すると仮定しています。

仮にこれらの成長率が概ね実現すると、2030年会計年度にはパランティアの売上の4分の3を米国商業部門が占めることになります。 その時点で、同部門の売上は190億ドルに達し、なおも高い成長率(予測では40%)を維持していると考えられます(詳細は下記の表を参照)。

(出所:筆者作成)

DCFモデルにおける成長率の設定に関しては、DCFモデルをご覧のとおり、2027年会計年度~2030年会計年度の年平均成長率(CAGR)において、急激に引き下げています。 この背景には、成長率が高水準から直線的に減少することは通常ないという考えがあります。 一般的に、数年間の急成長の後には、急激な減速が起こる傾向があります。

その後、2034年会計年度(FY34)~2039年会計年度(FY39)の期間には、年平均成長率を選択できるように設定しています。 デフォルトでは15%に設定していますが、これは高成長の後に急落した後も、優れたソフトウェア企業は依然として10%~20%の成長を維持することが多いという経験則に基づいています。 実際に、セールスフォース(CRM)、サービスナウ(NOW)、アドビ(ADBE)などの企業は、売上規模が大きくなっても長年にわたり高成長を続けています。

この成長フェーズを経た後、DCF評価の理論に基づき、成長率を持続可能な水準に向けて段階的に引き下げます。 テクノロジー企業における持続的な成長率は、米国の長期的な実質GDP成長率(約2%)をわずかに上回る3%に設定し、予測期間の25年目(2049年会計年度:FY49)まで調整します。

この時点でのターミナルバリュー(企業の最終的な評価額)は、2,900億ドルと算出されます。

この2,900億ドルという評価額は、以前提示したAIエージェント市場のTAMの試算とも整合しています。 パランティアは、主にAIエージェントの提供と運用から2,500億ドルの収益を生み出し、加えて非エージェント型のソフトウェア事業から数百億ドルの収益を獲得すると想定されます。

私たちの見解では、パランティアが成熟期において50%以上のフリーキャッシュフロー(FCF)マージンを達成する可能性は十分に考えられます。 もしこれが実現すれば、パランティアは世界で最も収益性の高いソフトウェア企業のひとつとなり、さらにメガソフトウェア企業の中でも最も高収益な企業になるかもしれません。

DCFモデルでは、2024年会計年度(FY24)の40%のFCFマージンを、2049年会計年度(FY49)まで直線的に50%へと引き上げる形を採用しています。 ただし、これは過小評価である可能性もあります。というのも、直近の2四半期でパランティアは55%以上のFCFマージンを記録しているためです。

現在の水準が新たなFCFマージンの基準なのか、それとも契約条件の変動による一時的なボラティリティなのかは不透明です。 しかし、仮に55%以上の水準が持続可能なものであるならば、パランティアの1株あたりの本質的価値(イントリンシック・バリュー)はさらに上昇する可能性があります。

SBC(株式報酬 / Stock-Based Compensation)比率については、市場連動型のストック・アプリシエーション・ライツ(SARs)に関連する一時的なSBC費用の増加により、2024年第4四半期に20%から34%へ上昇しました。しかし、これは一度限りの要因であるため、DCFモデルでは2025年会計年度(FY25)のSBC比率を20%に戻し、最終的に10%まで直線的に引き下げる設定としています。

これらの前提に基づき、パランティアの1株あたりの本質的価値(インストリンシック・バリュー)を186ドルと算出しました。現在の株価106ドルと比較すると、大幅に高い評価となります。

一見すると、この評価は現実離れしているように思えるかもしれません。しかし、パランティアの市場機会、米国商業部門の急成長、そして同社が依然としてLLM(大規模言語モデル)を企業向けに迅速かつ安全に導入できる唯一のソフトウェアベンダーであることを考慮すると、この評価も決して荒唐無稽とは言えないと見ています。

さらに、AIエージェントが普及した未来を想定すれば、最終的な売上が3,000億ドルに達する可能性も十分に考えられるでしょう。

本編は以上となりますが、世界中の投資家が注目するパランティア・テクノロジーズに関する詳細な分析はいかがでしたでしょうか。もし、感想や意見等ございましたら、コメント欄よりご共有ください。


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