【Part 1】AIエージェントとは?AIエージェントの詳細や市場規模、普及に向けた課題と将来性を徹底解説!
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- 本編は、足元で注目されるAIエージェント市場と注目のAIエージェント関連銘柄の将来性を詳細に分析した長編レポートとなり、3つの章で構成されています。
- そして、本稿Part 1では、「AIエージェントとは?」という基礎的な内容から、AIエージェントの市場規模、AIエージェントの普及に向けた課題、そして、AIエージェントにおけるSOR(システム・オブ・レコード)の重要性と戦略的優位性に関して詳しく解説していきます。
- 従来のRPAツールとは異なり、AIエージェントはワークフローに適応し、企業データ全体と統合し、自律的に動作するため、TAM(対応可能な全体の市場規模)ははるかに大きくなると考えています。
- サービスナウ(NOW)は、Raytionの買収により高度なエンタープライズ検索とデータ統合機能を強化し、強力なAIエージェントのロードマップを持っています。
- パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、ワークフローの理解、データ統合、セキュリティ面で優れた能力を発揮するが、AI分野のリーダーでありながらも高いバリュエーションがリスク要因となっているように見えます。
- マンデードットコム(MNDY)は、中小企業(SMB)市場からエンタープライズ市場への移行を進め、システム・オブ・レコード(SOR)およびAIエージェント分野のリーダーを目指すことで、高いアルファの可能性を秘めていると考えています。
AIエージェントとは?
(出所:筆者作成)
AIに関する議論は急速に進化しています。2022年11月にChatGPTが登場し、生成AI(GenAI)の波が始まった当初、大規模言語モデル(LLM)は主にテキストアシスタントとして機能していました。しかし、その能力は急速に拡張され、ワークフローを支援するコパイロットとしての役割を果たすようになりました。そして現在、業界はAIエージェントへと進化しており、将来的にはエージェント同士が協調してタスクを自律的に遂行する時代が訪れると考えられています。この新たなエージェント型AIの時代において、いくつかの企業向けソフトウェアプロバイダーが際立っています。私たちのリサーチでは、特にパランティア・テクノロジーズ(PLTR)、マンデードットコム(MNDY)、サービスナウ(NOW)の3社に注目しています。
RPAからAIエージェントへ、市場規模(TAM)の推定、およびSORについて
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は、デジタルエンタープライズエージェントの最も初期の形態と見ることができます。RPAは手作業でのデータ入力などの反復的なタスクを自動化するのに役立ちましたが、脆弱な側面もありました。例えば、ログイン画面のレイアウトがわずかに変わるだけで、RPAスクリプトが機能しなくなることがありました。さらに、導入には高額なプロフェッショナルサービスが必要であり、スクリプトが失敗した際のフラストレーションを増幅させました。
これに対して、AIエージェントはコンテキストを理解する能力を持ち、ワークフローのわずかな変化にも適応できる点が異なります。また、企業全体のデータ資産と接続しながら、LLMの汎用性を活かしつつ、適応性のあるタスク実行が可能になります。
因みに、AIエージェントとは、環境を認識し、自律的に判断しながらタスクを遂行する人工知能(AI)システムのことを指します。従来のソフトウェアとは異なり、AIエージェントは状況を把握し、最適な意思決定を行いながら動作を改善していく特徴を持ちます。
AIエージェントの主な特徴として、自律性・環境認識・意思決定・学習能力・対話能力の5つが挙げられます。自律性とは、人間の指示を必要とせずに行動できる能力を指し、環境認識とはセンサーやデータを用いて周囲の状況を理解する機能です。また、意思決定では、目標に基づいて最適な行動を選択し、学習能力によって過去の経験からパフォーマンスを向上させます。さらに、対話能力を備えたAIエージェントは、人間や他のシステムと協力して作業を進めることが可能です。
AIエージェントにはいくつかの種類があります。シンプルなルールベース型は、決められたルールに従って動作するもので、スマート家電の音声アシスタントなどが該当します。機械学習型のエージェントはデータを分析し、チャットボットやレコメンドシステムのようにユーザーに最適な情報を提供します。さらに、強化学習を活用したエージェントは、自動運転AIやゲームAIのように試行錯誤を重ねながら最適な行動を学習していきます。
近年、AIエージェントはビジネスや日常生活においてますます重要な役割を果たしており、今後の発展が期待されています。
一方で、RPA市場の規模推定(たとえばForresterが2022年2月に発表した2,200億ドルのTAM)をそのままAIエージェント市場の規模推定に適用するのは過小評価に思えます。RPAは特定のワークフローに限定されており、多くのプロセスに適用できません。しかし、AIエージェントは企業全体のデータ基盤と統合され、多様なアプリケーションを横断してワークフローを実行できるため、より広範な用途に活用できます。さらに、AIエージェントは企業全体のワークフローを容易に最適化できるため、導入にかかる手間が大幅に軽減されます。そのため、AIエージェント市場はRPA市場の何倍もの規模になる可能性があり、ソフトウェア業界全体の規模からトップダウン方式で推定する方が適切でしょう。
2024年、IDCはSaaS、PaaS、IaaSを含むパブリッククラウドサービスの世界全体の支出が8,050億ドルであると推定しました。この市場は2028年までに倍増すると予測されています。仮にエージェントが企業の生産性を3倍向上させるとすれば、企業はパブリッククラウドサービスへの支出を50%から2倍に増やす可能性があります。つまり、エージェントが広く普及した場合、2028年の市場規模は3兆ドル(1.61兆ドル×2=3.2兆ドル)に達する可能性があります。
別の見方をすると、1つのエージェントが5人分の仕事をこなせるとしたら、企業は現在のSaaSアプリケーションの利用料の2~3倍を支払うことを検討するかもしれません。現在、グローバルSaaS市場は4,000億ドルとされていますが、AIエージェント時代には8,000億ドルから1.2兆ドルに成長する可能性があります。
また、世界には約10億人のナレッジワーカーがいると推定され、企業は1人あたり月額200ドルのソフトウェア支出をしているとすると、年間の世界全体の支出は2.4兆ドルになります。もし企業が1つのエージェントで5人分の仕事をこなし、生産性を5倍向上できるなら、この2.4兆ドルの2倍以上を支払うことも考えられます。このコストは、企業とエージェントのプロバイダーの間で価値を分け合う形になるでしょう。
ただし、この試算は企業が生産性向上のために支出する金額に基づくものであり、売上成長(トップライン)には触れていません。しかし、AIエージェントが企業の売上成長にも寄与する可能性は高いでしょう。売上が2倍、あるいはそれ以上に伸びるかもしれません。もし企業が5倍の生産性向上のためにソフトウェアに2~3倍の支出をするなら、売上を3倍にするために2倍の投資をする可能性もあります。
どのような観点から見ても、AIエージェント市場のTAMは非常に大きなものになります。なぜなら、RPAは低付加価値のオフィス業務を自動化するに過ぎませんが、AIエージェントはソフトウェア・IT、法務、財務、営業&マーケティング、ヘルスケア、コンサルティングなど、あらゆる分野のナレッジワーカーを支援できるからです。
AIエージェントの普及に向けた課題
しかし、AIエージェントが広く普及する前に、企業は現在LLMの活用を妨げる障壁を克服する必要があります。過去のパランティア・テクノロジーズに関するコンテンツでも説明したように、LLM(基盤モデル)は優れていますが、企業のデータ資産全体に対して適切に調整されなければ、その価値を十分に発揮できません。その点、パランティア・テクノロジーズはこの分野で最も優れたベンダーと言えます。しかし、現状では従業員がChatGPTのようなコンシューマー向けLLMを業務に使用しており、機密データを外部に入力するリスクが生じています。そのため、企業はパランティア・テクノロジーズのようなベンダーを採用し、LLMを自社環境に完全に統合する必要があります。これにより、専門性の高いコパイロットを導入できるだけでなく、情報の流れを管理し、データを保護することが可能になります。
この過程には時間がかかるものの、DeepSeekの開発が進めば、LLMの企業導入が加速するでしょう。同社は、OpenAIの最先端モデルと同等の性能を持ちながら、1/10のコストで動作するLLMを開発しています。さらに、オープンソースであるため、極めて低コストで導入が可能です。
AIエージェントにおけるSORの重要性と戦略的優位性
LLMが企業環境に安全に統合された後、AIエージェントがLLMの知識を活用しながらワークフローを実行できるようになります。ただし、AIエージェントは単に情報を読んで分析・要約するのではなく、実際に行動を起こすため、信頼できる情報源に基づく必要があります。これらの信頼性の高いデータ源は「システム・オブ・レコード(SOR)」と呼ばれます。データが不正確だった場合、業務全体が混乱に陥る可能性があります。
このため、セールスフォース(CRM)、サービスナウ(NOW)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)といったSORを提供する企業は、エージェント型AI時代において戦略的な優位性を持つことになります。他の企業もAPIを活用してSORと連携し、エージェントを構築することは可能ですが、SORの立場にある企業はAIエージェント市場における主要プレイヤーとしての地位を確立する可能性が高いです。
そして、次章では、注目の3つの米国上場AIエージェント関連銘柄に関して詳しく解説していきますのでお楽しみに!
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※続きは「【Part 2】注目の米国AIエージェント関連銘柄3選(パランティア・テクノロジーズ・サービスナウ・マンデードットコム)」をご覧ください。
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