【Part 2】注目の米国AIエージェント関連銘柄3選(パランティア・テクノロジーズ・サービスナウ・マンデードットコム)
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- 本編は、足元で注目されるAIエージェント市場と注目のAIエージェント関連銘柄の将来性を詳細に分析した長編レポートとなり、3つの章で構成されています。
- そして、本稿Part 2では、3つの注目の米国上場AIエージェント関連銘柄に関して詳しく解説していきます。
- サービスナウ(NOW)は、AIエージェントのエコシステム構築を戦略の中心に据え、Raytionの買収によるデータ統合強化を含め、低/ノーコード開発やAI/MLの活用を進めています。
- パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、長年のデータ統合とオントロジー構築の経験を活かし、高度なセキュリティとガバナンス機能を備えることで、AIエージェント市場での競争力を維持しています。
- マンデードットコム(MNDY)は、低レベルのワークフロー自動化とLLMの活用を強みに、mondayDBを活用した企業データ統合を強化しながら、エンタープライズ市場への進出を加速しています。
※「【Part 1】AIエージェントとは?AIエージェントの詳細や市場規模、普及に向けた課題と将来性を徹底解説!」の続き
前章では、「AIエージェントとは?」という基礎的な内容から、AIエージェントの市場規模、AIエージェントの普及に向けた課題、そして、AIエージェントにおけるSOR(システム・オブ・レコード)の重要性と戦略的優位性に関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
サービスナウ(NOW)はエージェント・エコシステムの構築基盤を持つ
私達は、最新の議論を通じて、サービスナウ(NOW)は当初の評価以上にAI分野での優位性を持つ可能性があると認識しています。そして、以下にその考察を共有していきます。
サービスナウ(NOW)のAIエージェントの積極的な推進
サービスナウは、自社のロードマップやマーケティング戦略をAIエージェントを中心に据えています。これは、以前からエージェント機能を持つパランティア・テクノロジーズ(PLTR)とは対照的です。パランティア・テクノロジーズはエージェント機能を全体のプラットフォームの一部として暗に推進していますが、サービスナウは明確にエージェントに注力し、AIエージェント・エコシステムの構築を企業戦略の中心に据えています。
サービスナウ(NOW)の低/ノーコード開発とAI/MLへの長年の取り組み
サービスナウは、低/ノーコード開発を社内業務だけでなく、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)として提供し、企業が最小限の技術的負担でワークフローを構築・自動化できるようにしています。自社の低/ノーコードツールを積極的に活用することで、同社は迅速なプロダクト開発文化を築き、新機能のリリースや新たな市場への展開を加速させています。
また、PaaSとして低/ノーコード開発を提供することで、多様な企業ワークフローを可視化し、HR(人事)、カスタマーサービス、CRMといった領域での企業の業務プロセスを深く理解する機会を得ました。この知見は、AI/MLモデルのトレーニングや、自動化の実用化において極めて重要です。マンデードットコム(MNDY)と同様に、サービスナウはワークフローの実行データから学習し、新市場に強力なプロダクトを投入する能力を備えています。
こうした「ワークフローの知見」「AI/ML駆動の自動化」「迅速なプロダクト開発」の基盤があることから、サービスナウは複雑なタスクを自律的に実行できるAIエージェントの開発において、有力なプレイヤーとなる可能性が高いと見ています。
サービスナウ(NOW)のRaytionの買収:戦略的なM&A
最も重要な動きとして、サービスナウは2024年7月にRaytionを買収しました。これにより、同社は企業向けの高度な検索機能を強化するためのデータ統合とナレッジグラフの構築が可能になります。
Raytionの買収は非常に興味深い決定です。Raytionはスタートアップ企業ではなく、2001年に設立された企業であり、厳密にはソフトウェアベンダーとは言えません。同社はソフトウェアの導入支援を行うサービスプロバイダーであり、長年にわたり各種アプリケーションやシステムの実装を手掛ける中で、多数のデータコネクターを開発してきました。
これらのコネクターの多くはオンプレミス環境向けのものも含まれており、サービスナウの顧客基盤には依然としてオンプレミス環境を持つ企業が多く存在することを示唆しています。同社は、こうしたレガシー企業のニーズにより包括的に対応するために、Raytionを買収したと考えられます。
もしサービスナウが企業顧客のレガシーシステムとクラウドアプリケーションをすべて同社のプラットフォームに統合し、それをオントロジー(概念体系)や統一データレイヤーとして活用できるようになれば、AIエージェントの実現に向けて大きく前進することになります。その意味で、Raytionの買収は極めて重要な一歩といえます。
一見すると、サービスナウはMoveworksやGleanのような次世代AI検索スタートアップを買収すべきだったと考えるかもしれません。サービスナウは主にSaaSを提供する企業であるため、こうしたクラウドネイティブな企業との相性が良いように見えます。しかし、MoveworksやGleanはクラウド専用のソリューションを提供しており、オンプレミス環境を持つ企業には適していません。完全にクラウドへ移行した企業にとっては有効な選択肢ですが、ハイブリッド環境の企業には対応できません。そのため、サービスナウのRaytion買収は市場ではあまり注目されなかったものの、AIエージェント戦略の観点からは非常に合理的な判断といえます。
サービスナウ(NOW)とパランティア・テクノロジーズ(PLTR)の競争
これまで、パランティア・テクノロジーズは企業のLLM導入において鍵となる存在と見なされてきました。パランティア・テクノロジーズは深いデータ統合(オントロジー)能力を持ち、企業全体のデータを一元的に活用する基盤を提供できるからです。しかし、サービスナウもこの分野で競争できる体制を整えつつあります。
以上の点から、サービスナウはAIエージェント市場においてパランティア・テクノロジーズと肩を並べる競争力を持つ可能性があると考えています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR):最も有力なAIエージェント企業だが、市場価格にはすでに織り込み済み
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、AI関連銘柄の中でも常に注目すべき企業の一つであり、それには十分な理由があります。そして、本章では、同社がAIエージェント分野で強力な先駆者である理由について、高いレベルの観点から考察します。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のワークフローにおける知見
AIエージェントの開発・導入には、ワークフローの理解が不可欠であり、パランティア・テクノロジーズはこの分野で圧倒的な競争優位性を持っています。同社の成長の過程では、顧客ごとのワークフローやユースケースに細かく対応することを最優先としてきました。創業初期の段階では、新規の顧客との契約ごとに、「フォワード・デプロイ・エンジニア」が顧客と密接に協力し、個別のニーズに特化したソフトウェアを設計していました。
その結果、同社は膨大なユースケースやワークフローのデータを蓄積し、多くの共通点があることを発見しました。これらを基に、汎用的な機能をパッケージ化し、現在の「Foundry」や「Gotham」といったプラットフォームに組み込みました。これにより、幅広いユースケースに対応できるソフトウェアを提供しつつ、企業の個別ニーズに応じたカスタマイズも可能となっています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のデータ統合とオントロジー(概念体系)
パランティア・テクノロジーズのデータ統合とオントロジー構築の専門性は、長年にわたり、高度に分散された重要データを扱ってきた経験から培われています。同社のプラットフォームは単にデータを集約するだけでなく、それをコンテクスト(文脈)に沿って整理し、構造化・非構造化データの関係性をマッピングする豊かなオントロジーを構築します。
この能力はAIエージェントにとって不可欠です。エージェントが自律的に信頼できる意思決定を行うためには、強固に結びついたデータ環境が必要です。同社は、現実世界での導入を重ねながら、オントロジーの精度を継続的に向上させています。これにより、同社のAI駆動システムは高度なコンテクスト認識を持ち、不適切な自動化のリスクを最小限に抑えることができます。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のセキュリティと管理
パランティア・テクノロジーズは軍事、情報機関、規制産業向けのソリューションを提供してきた歴史があり、セキュリティとガバナンスは同社の中核的な強みとなっています。同社のプラットフォームは、細かいアクセス制御、リアルタイムの監査機能、厳格なコンプライアンス基準を備えており、機密データや意思決定の安全性を確保します。
AIエージェントが企業内で自律的に行動するようになるにつれて、強固なセキュリティとガバナンスの枠組みがますます重要になります。企業が誤った意思決定を防ぎ、規制遵守を確保するためには、同社のような信頼性の高いソリューションが必要となるでしょう。同社は、高リスク環境での意思決定を支援してきた実績があり、企業が安心してAI自動化を導入できる基盤を提供できる企業として先頭を走っています。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のAIエージェントの物理的応用
パランティア・テクノロジーズがサービスナウ(NOW)やマンデードットコム(MNDY)と異なる点は、ソフトウェアとハードウェアの統合能力にあります。パランティア・テクノロジーズのAI技術は、PCやノートパソコン向けだけでなく、エッジデバイスにも広く展開されています。特に、ヘルスケア、防衛、宇宙といった特定の業界向けに強い影響力を持っています。
今後、パランティア・テクノロジーズの技術がロボットやヒューマノイド型エージェントの実用化を支援する可能性も十分に考えられます。現時点では過度な期待は避けるべきですが、将来的に同社が自律型ロボットやAIエージェントを現実のものとすることは、十分にあり得るシナリオです。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のバリュエーション・リスク
一方で、注意すべき点としては、株価のバリュエーションです。パランティア・テクノロジーズの株価は過去1年間で大幅に上昇しており、一時は300%以上の上昇を記録しました。現在のEV/GP(企業価値/粗利益)倍率は約75倍に達しており、市場は同社に対して非常に楽観的な見方をしています。
このことは、同社が過大評価されていることを意味するわけではありませんが、仮に成長速度が鈍化したり、市場のセンチメントが変化した場合には、他の競合企業と比較してリスクが高まる可能性があります。そのため、現在の株価水準では、成長期待がすでに大きく織り込まれていることを認識した上で慎重に判断する必要があるでしょう。
加えて、昨年のパランティア・テクノロジーズのイベントであるAIPConの直後に、同社の競争優位性に関する下記の分析レポートを執筆しておりますので、併せてご覧いただければと思います。
また、パランティア・テクノロジーズに関しては、インベストリンゴのテクノロジー担当のアナリストであるジェームズ・ フォード氏とイアニス・ ゾルンパノス氏が、直近の決算直後に下記の詳細な分析レポートを執筆しておりますので、同社への理解を一層深めるために併せてご覧いただければと思います。
ジェームズ・ フォード氏
イアニス・ ゾルンパノス氏
マンデードットコム(MNDY):まだ注目されていないポテンシャルを持つ注目銘柄
一方で、マンデードットコム(MNDY)はEV/GP倍率が約15倍と、高成長ソフトウェア企業としては比較的控えめな評価を受けています。同社は30%以上のフリーキャッシュフロー(FCF)マージンを生み出しており、財務的にも堅調です。同社は、AIエージェント分野において「意外な」競争相手となる可能性を秘めています。その理由を詳しく説明します。
マンデードットコム(MNDY)の強力な低レベルのワークフロー自動化
マンデードットコムは、細かい業務プロセスの自動化に優れており、チームが迅速にタスクを調整できる環境を提供しています。たとえば、特定のマイルストーンが達成された際に自動で通知を送信したり、次のステップの指示を自動生成するなど、業務の流れをスムーズに進める機能を備えています。
マンデードットコム(MNDY)の低レベルのプロセス自動化とLLMの活用
マンデードットコムは、AIエージェントを構成する2つの重要な要素、すなわち「プロセス自動化」と「大規模言語モデル(LLM)」をすでに積極的に活用しています。
同社は数百種類のワークフロー自動化オプションを提供しており、ドラッグ&ドロップによるノーコード機能で簡単にカスタマイズできます。また、同社のプラットフォームでは、mondayAIというLLMがユーザーに活用されています。
今後のステップとしては、この2つを統合し、mondayAIまたはその派生製品が、ワークフローの作成と実行を自律的に行えるようにすることが求められます。
マンデードットコム(MNDY)のエンタープライズ市場への進出
マンデードットコムはもともと中小企業(SMB)をターゲットとしていましたが、現在はmondayDB(アップグレードされたデータバックエンド)を構築し、CRMやITSMといったエンタープライズ向け製品を展開することで、着実に大企業市場へとシフトしています。
特に、契約額10万ドル以上の企業顧客の増加が見られ、この成長が進めば、同社は今後より本格的なシステム・オブ・レコード(SOR)となる可能性があるでしょう。
マンデードットコム(MNDY)のさらなるシステム統合の必要性
マンデードットコムがAIエージェント市場で大きなプレイヤーとなるためには、WorkOSをエンタープライズ向けのSaaSやレガシーシステムと深く統合し、企業の主要なデータ基盤(SOR)となる必要があります。その上で、企業にとって信頼できるナレッジベースとなり、オントロジー(概念体系)の構築やエンタープライズ検索機能の開発を進めることが重要です。
その意味で、mondayDBの導入は、この方向へ進むための重要な一歩と言えるでしょう。
マンデードットコム(MNDY)の高いアルファ(超過リターン)ポテンシャル
現時点で、マンデードットコムの経営陣は決算説明会などでAIエージェントについてほとんど言及していません。そのため、私たちは市場よりも一歩先を行き、同社がAIエージェント市場に参入する可能性を見込んでいます。
この理由として、前述の通り、AIエージェントのエコシステムを構築するには、まずSOR(システム・オブ・レコード)としての地位を確立する必要があります。現時点では、同社はまだSORとは言えません。しかし、サービスナウ(NOW)やパランティア・テクノロジーズ(PLTR)、セールスフォース(CRM)のようなSOR企業へと進化する道筋が見え始めています。
具体的には、マンデードットコムはエンタープライズ顧客を増やし、mondayDBを活用して企業データの統合・管理機能を強化しつつ、CRM分野(セールスフォースと競合)やITサービス・マネジメント分野(サービスナウと競合)といった領域にも進出しています。これらのツールは、シンプルで使いやすいものの、企業向けに適応できるよう改良が進められています。
そして、マンデードットコムがこのままSORへと進化すれば、AIエージェントの主要プレイヤーとして市場での地位を確立する可能性が高いと見ています。
また、直近、マンデードットコムに関する10の章から成る長編レポートを執筆しておりますので、こちらも併せてご覧いただければと思います。
そして、最終章である次章では、各銘柄への投資を検討する際に考慮すべき投資リスクやAIエージェントの成功に必要な要素に関して、各銘柄の成長戦略に関する視点を交えながら詳しく解説していきますのでお楽しみに!
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※続きは「【Part 3】米国AIエージェント関連株:3つの注目銘柄の成長戦略と投資リスクを徹底解説!」をご覧ください。
アナリスト紹介:コンヴェクィティ
📍テクノロジー担当
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