【Part 3】米国AIエージェント関連株:3つの注目銘柄の成長戦略と投資リスクを徹底解説!
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- 本編は、足元で注目されるAIエージェント市場と注目のAIエージェント関連銘柄の将来性を詳細に分析した長編レポートとなり、3つの章で構成されています。
- そして、本稿Part 3では、3つの注目の米国上場AIエージェント関連株の成長戦略と投資リスクを詳しく解説していきます。
- AIエージェント市場では、データ統合やオントロジー、低/ノーコード機能、セキュリティ、ワークフロー理解などが成功の鍵となり、各企業はこれらの要素を強化し、市場競争力を高めています。
- 企業の成長戦略として、SMBからエンタープライズへの拡大は一般的に容易だが、エンタープライズからSMBへの展開には課題が多いというのが現状であり、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)、サービスナウ(NOW)、マンデードットコム(MNDY)はそれぞれ異なるアプローチを採用しています。
- AIエージェント関連銘柄のバリュエーション評価では、パランティア・テクノロジーズのバリュエーションが高く、サービスナウは安定性があり、マンデードットコムには成長余地が大きいように見える一方で、エンタープライズ市場での競争力が今後の成長を左右すると見ています。
※「【Part 2】注目の米国AIエージェント関連銘柄3選(パランティア・テクノロジーズ・サービスナウ・マンデードットコム)」の続き
前章では、3つの注目の米国上場AIエージェント関連銘柄に関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
AIエージェントの成功に必要な要素とは?
以下では、AIエージェント時代において成功する上で重要な要素についての要点をまとめていきます。
1. シングルアーキテクチャ
・データを統合し、リアルタイムでのインサイトを可能にします。基本的には、単一のコードベースが単一のオントロジーまたはデータファブリックと連携する仕組みです。
・オントロジーの作成を容易にし、AIエージェントの「コンテキスト認識」を強化します。
2. オントロジー
・オントロジーはLLM(大規模言語モデル)をトレーニングするための重要な要素であり、企業の専門用語や資産間の関係性を理解するために不可欠です。
・サービスナウ(NOW)はこの分野に弱点がありましたが、Raytionの買収によりその差を大幅に縮めました。パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は依然として非常に強力であり、マンデードットコム(MNDY)も統一されたデータレイヤーを持っていますが、まだ完全なオントロジーとは言えないかもしれません。
3. 低/ノーコード機能の活用
・既存のノーコード機能があることで、チームはワークフローを定義し、それをAIエージェントに引き継ぐことが容易になります。
・マンデードットコム(MNDY)は、使いやすい自動化機能で際立っている一方で、サービスナウは数千社の企業に対して大規模なエンタープライズ向けのノーコードソリューションを展開しています。パランティア・テクノロジーズもこの分野で多くの機能を提供しています。
4. イノベーションのスピード
・企業がAIエージェントを導入するにつれて、セキュリティ、アクセス管理、ガバナンスに関する多くの課題が浮かび上がると考えられます。新たなセキュリティやコンプライアンス要件、機能追加に対応するため、継続的なアップデートが求められます。
・サービスナウとパランティア・テクノロジーズは、堅実な実績を持っています。マンデードットコムはCRM、DevOps、ITサービス・マネジメント(ITSM)といった分野に迅速に進出し、エンタープライズ向けの製品をより高度なガバナンスやセキュリティ機能とともに提供するなど、意外なほどの機動力を発揮しています。
5. セキュリティとガバナンス
・AIエージェントが自律性を持つようになるにつれ、厳格な管理体制のもとで運用される必要があります。
・パランティア・テクノロジーズはこの分野で圧倒的な強みを持っています。サービスナウも安定した実力がありますが、パランティア・テクノロジーズほど専門的ではありません。マンデードットコムは、まだ成熟段階にあります。
6. ワークフローの理解
・本当の意味で自律的なAIを実現するためには、ワークフローの深い知識が欠かせません。
・パランティア・テクノロジーズは、創業初期からフォワードデプロイエンジニアリングを通じて、膨大なユースケースを蓄積してきました。一方で、サービスナウは、幅広いエンタープライズ向けのカバレッジを持っています。マンデードットコムは、中堅企業向け市場を中心に、細かいタスク処理や調整に強みを発揮しています。
AIエージェントの成長戦略:SMBからエンタープライズへ vs. エンタープライズからSMBへ
企業の成長戦略において、SMB(中小企業)からエンタープライズ(大企業)へ拡大するケースと、その逆のケースには大きな違いがあります。この点は重要な議論であり、たとえばChamath Palihapitiya氏のような著名な投資家は、AIエージェント分野に参入するスタートアップが既存のエンタープライズ向けソフトウェアベンダーを完全に破壊すると考えています。しかし、私たちは、先進的なシステム・オブ・レコード(SOR)を持つベンダーに関しては、このシナリオは当てはまらないと考えています。
エンタープライズ企業がAIエージェントを導入する際には、セキュリティ、ガバナンス、管理、制御のすべてを正しく理解し、適切な対策を講じる必要があります。そのため、設立から数年しか経っておらず、エンタープライズ向けの顧客基盤が少ないスタートアップを選ぶ可能性は低いでしょう。むしろ、すでに数千社のエンタープライズ顧客を持ち、AIエージェントとSORのネイティブな統合機能を提供できるベンダーを選ぶ方が、リスクを回避する上で合理的です。そのため、現在または将来的にエンタープライズ向けに対応できるベンダーを評価することが重要になります。
AIエージェントのSMBからエンタープライズへの拡大
歴史的に、マンデードットコム(MNDY)やクラウドフレア(NET)のようなSMB向けベンダーは、まず機能を充実させたパッケージ型の製品を提供し、その後、大企業向けにカスタマイズする戦略を取ってきました。このアプローチでは、最初に汎用的な機能を幅広く展開し、その後、エンタープライズのニッチな要件に対応する形で成長できます。言い換えれば、これらの企業はプロダクト主導型(product-led)であり、ユースケース主導型(use-case-led)ではありません。
しかし、SMBからエンタープライズへの移行が必ずしも容易であるとは限りません。マンデードットコムは非常にスムーズにこのプロセスを進めていますが、過去にクラウドフレアやフォーティネット(FTNT)がエンタープライズ市場への浸透に苦戦し、数年かかって本格的に受け入れられた事例もあります。特に、サイバーセキュリティの分野では、SMB向けにサービスを提供していた企業がエンタープライズ向けに拡大するのは難しく、企業が新興ベンダーを信用するまでには長い時間がかかります。これは、マンデードットコムのような生産性向上系のソフトウェア企業と、サイバーセキュリティベンダーとの大きな違いといえます。
AIエージェントのエンタープライズからSMBへの拡大
一方で、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のようなエンタープライズ向けベンダーは、プロダクト主導型ではなく、ユースケース主導型のアプローチを取ってきました。これは、細かな顧客要件に基づいてソリューションを設計するという歴史的な背景があるためです。パランティア・テクノロジーズの場合、GothamやFoundryといったプラットフォームに膨大なユースケースを組み込んできましたが、その広範さが逆に新規の企業にとっては理解しづらい要因となっていました。
これは、2021~2023年にパランティア・テクノロジーズがより広範な市場をターゲットにした際に、Foundryの複雑さが課題として指摘されたことからも明らかです。しかし、それ以降、AIPブートキャンプを通じて、Foundryの全機能をいきなり開放するのではなく、特定の課題を解決するための導入ステップを設けるようになりました。また、パランティア・テクノロジーズはユーザーフレンドリーなWikiやドキュメントを提供し、開発者からの支持を得ることにも注力しています。
AIエージェントにおける成長戦略では、SMBからエンタープライズの方が容易か?
一般的に、サイバーセキュリティやミッションクリティカルな分野以外では、SMBからエンタープライズへの拡大の方が容易だと考えられます。この点は、マンデードットコムとスマートシート(SMAR)の比較からも明らかです。
マンデードットコムとスマートシートはともにワークマネジメントの領域に特化していますが、マンデードットコムはSMBをターゲットに成長し、スマートシートはエンタープライズ向けに注力していました。結果として、マンデードットコムはエンタープライズ市場へと成功裏に拡大しましたが、スマートシートはSMB市場への適応がうまくいかず、最終的にはVista Equity Partnersに買収されました。これは、パランティア・テクノロジーズと同様に、スマートシートが小規模な組織にとっては複雑すぎたことが要因の一つと考えられます。さらに、マンデードットコムはエンタープライズ市場でもスマートシートを上回る成果を上げており、生産性向上ツールの分野ではプロダクト主導型戦略の方が有利であることが示唆されます。
AIエージェント分野におけるサービスナウ(NOW)のエンタープライズ特化戦略
サービスナウ(NOW)は、SMB市場にはほとんど関心を示していません。代わりに、エンタープライズ市場に特化する戦略を採用しています。同社は、SaaSベースのITSMのリーダーとして、数千社のエンタープライズ顧客を獲得し、そこからさらに深く顧客関係を拡大する戦略を取っています。つまり、新規顧客を増やすよりも、既存の大企業顧客に対してより多くの製品を提供することで成長してきました。
まとめ:AIエージェント市場ではエンタープライズ市場が鍵
マンションは、プロダクト主導型成長戦略を活かし、CRMやITSMといった分野にも進出しながら、SMBからエンタープライズへの拡大を成功させています。
パランティア・テクノロジーズは、エンタープライズからSMBへの拡大を試みており、これまでの深いカスタムエンジニアリングの背景から一部の摩擦があったものの、現在は大きく進展しています。同社は、汎用性の高い機能とカスタマイズ性の両方を備えたプラットフォームを提供し、エンタープライズとSMBの双方をターゲットにできる体制を整えています。
サービスナウは、エンタープライズ市場に特化し続けており、エージェントを活用することで、企業の生産性向上をさらに進めることに注力しています。
結論として、AIエージェント市場においては、エンタープライズ市場での強固な基盤が極めて重要です。エンタープライズ企業は最も大きな予算を持ち、最も厳格なセキュリティとデータ統合が求められる市場であるため、私たちはパランティア・テクノロジーズ、サービスナウ、マンデードットコムの各プラットフォームが、どれだけ大企業向けにスケールできるかに注目しています。
注目の米国AIエージェント関連銘柄に関する投資判断:リスクとアルファのバランス
これらの米国AIエージェント関連銘柄を評価する上で、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)
・EV/GP(企業価値/粗利益)倍率は約75倍(過去1年間で300%以上上昇)。
・AI分野全体で最も強力なプレイヤー(LLMとAIエージェントの両方において優位)
・しかし、これらの強みはすでに現在の株価水準に織り込まれており、極めて高いバリュエーション水準に達している。
・そのため、四半期決算でわずかな期待外れがあるだけで、大幅な売りが発生するリスクがある。
・つまり、PLTRのAIビジネス自体のリスクは最も低いものの、バリュエーションのリスクは最も高いと言える。
・現状の評価水準では、上昇余地よりも下落リスクの方が大きい可能性がある。
サービスナウ(NOW)
・EV/GP倍率は約27倍(割安とは言えないが、パランティア・テクノロジーズほど過大評価されてはいない)。
・AIエージェントを積極的に推進しており、最近のデータ統合機能の買収も強みとなる。
・AI市場がまだ初期段階であることを考えると、バリュエーションが維持される、または拡大する可能性がある。
・EV/S(企業価値/売上高)倍率が20〜25倍の範囲を維持できれば、年率20〜25%のリターンが見込めると考えられる。
・純粋なSaaSビジネスであり、8,000社以上の顧客基盤(大部分がエンタープライズ企業)を持ち、既存顧客への販売拡大の機会も大きい。
・3社が同じバリュエーションであれば、サービスナウが最も安定した投資先と考えられる。
・総合的に見ると、下落リスクよりも上昇余地の方が大きいように見える。
マンデードットコム(MNDY)
・EV/GP(企業価値/粗利益)倍率は約15倍(AIエージェント分野での潜在力が過小評価されている)。
・もしSOR(システム・オブ・レコード)としての地位を確立し、エンタープライズ市場での存在感を強めれば、高いアルファ(超過リターン)の可能性を秘めているように見える。
・ただし、オントロジーやガバナンスの面では、パランティア・テクノロジーズやサービスナウと同等のレベルに到達するには時間がかかる可能性がある。
・市場の投資家やマンデードットコムの経営陣がまだAIエージェントやSORについてほとんど言及していないため、市場ではマンデードットコムの成長ポテンシャルが十分に認識されていないように見える。
・もしマンデードットコムがこのビジョンを実現できなかった場合、バリュエーションの収縮リスクはあるものの、リスク・リワードの観点では最も魅力的であると考える。
・市場の投資家がマンデードットコムの潜在力に気づいた時、パランティア・テクノロジーズ並みのバリュエーションを受ける可能性があると考えている。
以下は、各企業のAIエージェントの成熟度と投資リスクの関係をまとめた図になります。
AIエージェントの技術成熟度とバリュエーションリスク
(出所:筆者作成)
AIエージェント関連銘柄に対する結論
私たちの総合的な見解として、AIエージェント(AIエージェントが自律的にワークフローを調整する未来)の実現には、安全で統合されたデータアーキテクチャと、企業の新たなニーズに対応して迅速に機能を提供できる能力が不可欠であると考えています。
・パランティア・テクノロジーズ(PLTR) は、セキュリティと包括的なデータ統合の分野で依然としてトップの先駆者であるものの、バリュエーションが大幅に上昇しています。
・サービスナウ(NOW) は、Raytionの買収を通じて機能を強化し、AIエージェント分野への積極的な取り組みを進めていることから、ますます魅力的な選択肢となっています。
・マンデードットコム(MNDY)は、SMBからエンタープライズ市場への拡大を進めながら、SOR(システム・オブ・レコード)としての地位を確立できれば、最も大きなアルファ(超過リターン)を生み出す可能性があります。
これらの要素を考慮すると、AIエージェントの時代を見据えたポートフォリオにおいて、パランティア・テクノロジーズとマンデードットコムに加えてサービスナウを組み入れることが有力な戦略であるように見えます。AI技術の進化は継続しており、市場リーダーとなる企業のバリュエーションを維持、または拡大させる可能性があります。特に、データ、セキュリティ、そしてユーザーフレンドリーな自動化を統合し、統一されたプラットフォームを提供できる企業は、さらなる成長が期待できます。
また、OpenAIの「o1」やDeepSeekのオープンソース「R1」などの最新モデルの進展は、企業がこれらを実用化する日が近づいていることを示唆しています。これらのモデルは、大幅に拡張されたコンテキストウィンドウを持ち、専門家のような思考を行い、包括的かつ深い分析が可能になっています。
さらに、先述の通り、「R1」の影響により、LLMの運用コストが大幅に低下する可能性があります。これは、最先端のAIラボが競ってモデルの効率性を10倍向上させることを目指すためです。この進展は、エンタープライズ市場でのAI導入を加速させる要因となるでしょう。
AIエージェントに関する3つの章から成る長編レポートは以上となります。
また、直近、マンデードットコムに関する10の章から成る詳細な長編レポートを執筆しておりますので、こちらも併せてご覧いただければと思います。
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