【半導体】クアルコム(QCOM)株価見通しは魅力的?アームとの裁判はクアルコムの勝訴!最新の2025年第1四半期決算も好調な着地!
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- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるクアルコム(QCOM)の2025年2月5日発表の最新の2025年度第1四半期(暦年:2024年第4四半期)決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性に関して詳しく解説していきます。
- クアルコムは2025年度第1四半期の決算で売上高117億ドルを記録し、前年同期比18%増、前四半期比15%増となりました。特に自動車事業とIoT事業が大きく成長しました。
- 同社はスマートフォン市場に依存しない多角化戦略を推進しており、2029年までに非スマートフォン事業の売上を220億ドルに拡大する目標を掲げています。
- アーム・ホールディングスとの裁判はクアルコムの勝訴で決着し、ライセンス契約の継続が確認されました。今後はPC、空間コンピューティングなどの新規事業の成長にも注力する方針です。
クアルコム(QCOM)の最新の2025年度第1四半期決算発表に関して
クアルコム(QCOM)は2025年2月5日に最新の2025年度第1四半期(暦年:2024年第4四半期)決算を発表しており、売上高は117億ドルと報告しました。これは前年同期比で18%増、前四半期比で15%増となり、ガイダンスの上限をわずかに上回る結果となりました。これにより、同社は過去最高の四半期売上高を達成し、2022年第4四半期の記録を3億ドル上回ることとなりました。
Qualcommの四半期別売上高(米ドル)
(出所:筆者作成)
CEOのクリスティアーノ・アモン氏は、決算発表のスピーチで次のように述べています。
「ライセンシング事業の売上は15億ドルとなりました。2025会計年度は順調なスタートを切っています。モバイル向けのロードマップは当社の歴史上最も強力なものとなっており、Snapdragonのプレミアムクラスのスマートフォン向け市場での採用が極めて好調です。また、当社の多角化戦略による成長も着実に進んでいます。今四半期は、自動車事業の売上が前年同期比で61%増加し、IoT事業の売上も前年同期比で36%増加しました。」
今後の見通しとして、同社は次の四半期の売上高を中央値で106億ドルと予測しており、前四半期比で9.4%減となる一方、前年同期比では10.6%増となる見込みです。これは「スマートフォン市場の通常の季節性」を反映したものと説明されています。
ここ数カ月間話題となっていたアーム・ホールディングス(ARM)との訴訟問題について、アモン氏は簡潔なアップデートを提供しました。ただし、この件に関する評決はすでに広く報じられています。
「2024年12月に行われたアーム・ホールディングス対クアルコムの裁判についてご報告します。陪審員の評決は、クアルコムのCPU技術革新を正当なものと認め、また、クアルコムとアーム・ホールディングスの契約が、当社の独自開発のOryon CPUを搭載した製品、つまりスマートフォン、自動車、次世代PC、IoT、データセンターといった分野でのライセンスを提供するものであることを確認しました。」
投資家にとって新たな情報となったのは、クアルコムとアーム・ホールディングスのアーキテクチャライセンス契約に関するアーム・ホールディングス側からの通知でした。
「アーム・ホールディングスは最近、2024年10月22日に発行した違反通知を撤回し、現時点ではクアルコムのアーキテクチャライセンス契約を終了する予定がないことを示しました。」
アーム・ホールディングスの弁護士は、おそらくアップル(AAPL)の弁護士と同様に、訴訟においてクアルコムが手強い相手であることを今になって理解したのかもしれません。
クアルコムは、決算説明の中で多角化戦略に関する印象的なアップデートを数多く共有しました。特に、自動車事業への取り組みや、新たに発表したArm PC戦略に関する詳細が語られました。本稿では、決算発表の主要なポイントとともに、クアルコムにとってのさらなる大きな多角化の機会について考察します。また、それを実現する上で重要な役割を担う新たな幹部の採用についても触れていきます。では、さっそく見ていきましょう!
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クアルコム(QCOM)の多角化戦略
クアルコム(QCOM)は2021年の投資家向け説明会で、スマートフォン市場にとどまらない大胆な多角化戦略を発表しました。 この戦略の主要な要素は、自動車(Automotive)、PC、空間コンピューティング(Spatial Computing)、産業・ロボティクス(Industrial/Robotics)の4つの新たな分野への進出でした。
(クアルコムの投資家向けプレゼンテーション資料)
2024年の投資家向け説明会では、クアルコムは非スマートフォン事業の成長に対して強いコミットメントを示しました。
「2029年までに非スマートフォン事業の売上を220億ドルにすることを目指しています。」
この目標は非常に野心的なものですが、クアルコムはすでにその達成に向けて順調に進んでいます。
クアルコム(QCOM)の自動車事業(Automotive)
自動車事業に関しては、クアルコム(QCOM)は現在、6四半期連続で過去最高の売上を記録しています。
「当社はQCT(Qualcomm CDMA Technologies)の自動車部門において、6四半期連続で過去最高の売上を達成しました。今四半期の売上は9億6100万ドルとなり、新車向けの高性能・低消費電力のコンピューティングおよび接続チップの採用拡大により、前年同期比で61%の成長を遂げました。」
この成長は、今後の四半期においても継続すると予想されています。
「IoTおよび自動車関連の売上は、前年同期比でそれぞれ約15%および50%の成長を見込んでいます。この成長は、先ほど説明した強力な製品の市場での勢いによるものです。」
2024会計年度において、クアルコムの自動車関連売上は29億ドルに達し、前年同期比で55%の成長を記録しました。
(クアルコムの投資家向けプレゼンテーション資料)
この29億ドルという売上は、昨年の同社のスマートフォン事業の売上の約11%に過ぎませんが、その成長速度は驚異的です。 特に競合他社の状況と比較すると、クアルコムの成果は際立っています。例えば、モービルアイ(MBLY)は2024年に売上が前年同期比で18%減少し、株価も50%以上下落しました。現在の株価はIPO時の公開価格を5ドル以上下回っています。
なお、クアルコムは2029年までに自動車関連の売上を80億ドルにすることを目標としています。
「当社は市場シェアの拡大とデバイスの付加価値向上を継続しています。過去に示した売上目標は、2026年度に40億ドル超、2031年度に90億ドル超でしたが、新たに2029年度の売上目標として80億ドルを設定しました。」
現在の自動車事業の成長率を考慮すると、クアルコムは2026年の40億ドルの目標を容易に達成することができそうです。
最後に、自動車事業における受注残(バックログ)の推移についても注目に値します。
「約5カ月前に発表したデザインウィン(受注済み設計案件)のパイプラインを更新しました。当時の総額は450億ドルでした。3年前の投資家向け説明会では130億ドル、2年前には300億ドルでした。そして現在は450億ドルに達しています。」
どの基準で見ても、非常に目覚ましい成長です。
クアルコム(QCOM)のArm PC
クアルコム(QCOM)は昨年、マイクロソフト(MSFT)のCoPilot+ PCに最初に対応する企業となることを発表し、大きな話題を呼びました。 この件については、以前に下記の分析レポートでも詳細に取り上げておりますので、インベストリンゴのプラットフォーム上より本稿と併せてご覧ください。
あれからわずか8カ月しか経っていませんが、クアルコムはすでに大きな進展を遂げています。 決算説明会では、次のような内容が明らかになりました。
「PC市場における当社のデザインウィンの勢いは加速しており、カテゴリー最高峰のSnapdragon Xシリーズを搭載した製品が、80以上のデザインで生産または開発段階にあります。さらに、2026年までに100以上のデザインを商業化することを目標としています。」
また、Snapdragon Xを採用したPCプラットフォームを拡大し、市場シェアの拡大を狙っています。特に、より低価格帯の市場でのシェア獲得を目指しています。
「重要な点として、最近発表した最新のコンピューティングプラットフォームであるSnapdragon Xは、600ドル帯のPC市場向けに特別設計されており、当社がターゲットとする市場の機会をさらに広げることになります。」
さらに、ミニデスクトップPCの開発も進行中であり、Armネイティブで動作するアプリケーションの数も増加し続けています。 決算説明会で発表された中でも、特に重要なポイントは次の内容でした。
「2023年12月時点で、Snapdragon Xシリーズは米国の小売市場における800ドル以上のWindowsノートPC市場で10%以上のシェアを獲得しました。」
この10%の市場シェアが世界全体に適用されるわけではないものの、わずか8カ月での成果としては非常に大きな進展です。 参考までに、2024年のアナリストデーで示されたクアルコムのPC事業に関する目標は、「2029年度にPC関連の売上を40億ドルにすること」です。 この目標は、次の2つの前提に基づいています。
- 5年後には、90%のデバイスがAI PCになると予測
- 5年後には、ノートPCの30%〜50%がNon-x86プラットフォームへ移行すると予測
現在の進捗状況を踏まえると、この30%〜50%のレンジのうち、少なくとも下限の30%は十分に達成可能な水準にあると考えられます。
クアルコム(QCOM)のSpatial Computing(空間コンピューティング)
2024年の投資家向け説明会において、クアルコム(QCOM)は次のような目標を掲げました。
「2029年度に20億ドル以上の売上を目指します。」
では、この目標はどのように設定されたのでしょうか?
「私たちは、この目標を設定するにあたり、類似のユースケースを持つ他のデバイスのエコシステムと市場規模を分析しました。ARに関しては、スマートウォッチ、ヘッドフォン、携帯型ゲーム機といったポータブルデバイスの市場規模を参考にしました。一方、VRに関しては、家庭用ゲーム機やPCなどの据え置き型デバイスを基準にしました。そして、ARとVRを合わせて年間1,500万台の市場規模を想定しています。ただし、これはあくまで最低限の試算であり、さらなる成長の可能性は十分にあります。」
では、現在この目標に向けてどのような進捗があるのでしょうか?
「クアルコムのSpatial Computingは、まさに成長のスタート地点にあります。私たちは早い段階からこの分野に投資しており、AIによって市場が大きく変化する転換点に差し掛かっていると考えています。クアルコムのプラットフォームは、すべての主要なデバイスの選択肢として採用されているだけでなく、この市場の成長を牽引する主要なエコシステムとの長期的な戦略的パートナーシップを築いています。」
このように、クアルコムはすでに強固な基盤を築いていますが、その中でも最も注目すべき初期ターゲットのひとつがメタ・プラットフォームズ(META)とRay-BanのAIメガネです。メタ・プラットフォームズの最新の決算説明会によると、今年はこの製品カテゴリの分岐点となる重要な年になると考えられています。
「Ray-Ban Meta AIグラスは非常に好評を博しており、今年はAIグラスというカテゴリの今後の軌道を見極める年になります。消費者向け電子機器の歴史において、画期的な製品は第3世代で500万~1,000万台の販売を達成することが多いです。今年が、何億台、最終的には何十億台規模のAIグラス市場へと進化していくのか、それとも長期的な成長への試行錯誤が続くのかを見極める年になるでしょう。しかし、全体的に見て、人々がこれらのグラスをAIに最適なフォームファクターと認識し、さらにスタイリッシュなメガネとしても評価しているのは非常に良い兆しです。」
当然ながら、メタ・プラットフォームズは自社のAIグラス市場の可能性を強調していますが、「長期的な成長への試行錯誤(longer grind)」という表現を用いて、まだ市場の確立には時間がかかる可能性があることも認めています。
私の考えでは、AIグラスは将来的に次世代のコンピューティングプラットフォームになると思います。ただし、そのためには「革新的な機能」「適切な価格帯」「優れたバッテリー寿命」「スマートフォンOSとのシームレスな統合」という4つの要素がすべて揃う必要があります。現時点では、これらの条件がすべて満たされているとは言えませんが、いずれその時が来るでしょう。そのとき、Qualcommはこの市場で圧倒的な優位性を持つ立場にいるはずです。
次章では、クアルコムの産業市場における挑戦や、アップルのモデム事業喪失の影響、Samsung Galaxy S25の動向、さらにはArmサーバー市場への参入可能性、そして今後の見通しについて、詳しく解説していきますのでお楽しみに!
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※続きは「【半導体】クアルコム(QCOM)とアームの関係:クアルコムはArmサーバー市場への参入?最新の決算分析を通じて将来性に迫る!」をご覧ください。
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