サイタイム(SITM:SiTime)のSpectrum-Xに注目:消費者向け半導体市場の回復とエヌビディア採用理由を分析
ダグラス・ オローリン- サイタイム(SITM:SiTime)のSpectrum-Xは次世代のシリコンMEMSタイミングソリューションであり、消費者向け半導体において重要な役割を果たしている。
- エヌビディア(NVDA)は、サイタイムのChorusを使用することで、クロック信号の数を減らし、ボードのスペースを節約している。
- また、消費者向け半導体市場はパンデミック後の在庫過剰が解消され、回復基調にあり、強力なiPhone販売が追い風となっている。
※「マイクロン・テクノロジー(MU)2024年3Q決算速報と今後の株価見通し:ガイダンスで株価下落も、HBM投資の拡大に注目」の続き
サイタイム(SITM:SiTime)のスペクトラムXに関して
私は、足元、サイタイム(SITM:SiTime)を詳細に検討していなかったが、消費者向け半導体について強気になりつつある。
また、Spectrum-Xの設計が弱気派の論拠に対する最も強力な反論の一つであると考えている。
※Spectrum-X:サイタイムが開発した次世代のシリコンMEMSタイミングソリューションのプラットフォーム。
※タイミングソリューション:電子機器やシステム内で正確な時間の計測や同期を実現するための技術やデバイス。
私の懸念は、同社のジッター値がハイエンドのネットワークカードには十分でないことだったが、エヌビディア(NVDA)が最もクリーンな信号が必要な場所で採用している。
その理由は何だろうか?
それは、同社のChorusには十種類のクロック信号があり、ボードのスペースを大幅に節約できるからである。
※Chorus:サイタイムが提供するタイミングソリューションの一つ。
電力密度はHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)にとって非常に重要であり、これはサイタイムのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電子機械システム)の柔軟性とスケーラビリティがクォーツよりも設計上の勝利をもたらしている一例である。
※MEMS:マイクロメートル(1ミリメートルの1,000分の1)サイズの微小な機械構造と電子回路を組み合わせたデバイス。
※クォーツ:従来のタイミングデバイスにおいて重要な役割を果たしてきた素材。
これにより、私の最大の懸念が和らぐこととなった。
そして、同社の株価は高水準にあるが、強固な長期的成長ストーリーがある。
さらに、消費者市場の底打ちと最近のiPhone販売の強さも同社にとっては追い風であろう。
これらの点に加えて、さらに広い視点で見てみたい。
消費者向け半導体銘柄に関して
消費者向け半導体銘柄は底を打ったように見える。
これは、パンデミック中に大量に購入されたBluetoothスピーカー、ヘッドホン、ワイヤレスキーボードなど、Internet of Junk(IoJ)と呼ばれるカテゴリに該当する。
※Internet of Junk:インターネットに接続される多くの低品質なデバイスやガジェットを指すために使われる表現。
約2年をかけて在庫過剰が解消され、現在の見通しはかなり改善している。
そして、私は下記の通り、グラフを更新している。
新しいデータベンダーを導入し、分析をさらに厳密にする作業を進めているが、基本的に良好な業績を上げている株の中で、消費者向け半導体銘柄はそのペースに追いついていないと考えている。
具体的な銘柄について話す前に、最近の決算報告での同業界における注目点について触れ、それが私の仮定を支える要素となっていることを説明したい。
まず、ジェイビル(JBL)は消費者向け半導体の強さについて下記の様に言及している。
この一因として、在庫の底打ちからの回復が挙げられる。
(原文)I think it's probably neither of those. There was a little bit of a conservative forecasting from our perspective. If you see connected devices over the last maybe a couple of years, post-COVID has been a little bit down. And we've always sort of tried to make sure that our forecasts are accurate.
(日本語訳)おそらくそのどちらでもないと思います。私たちの観点からは、少し保守的な予測でした。ここ2、3年のコネクテッド・デバイスを見ると、COVID以降は少し落ち込んでいます。私たちは常に、予測が正確であるように努めてきました。
(原文)In this particular instance, the numbers came in. I don't think we're seeing a big jump up in the end market. But I think the whole impact in Q3 was mainly because of the conservative forecasting that we'd sort of anticipated.
(日本語訳)今回、この数字が出ました。最終市場が大きく跳ね上がるとは思っていません。しかし、第3四半期の影響は、主に保守的な予測によるものだと思います。
また、IoTポートフォリオを持つセムテック(SMTC)は、売上が前四半期比で増加し、在庫が減少したと下記の様に説明している。
これはサイクルにとって至福の瞬間である。
(原文)For the first quarter, high-end consumer net sales were $34.5 million, a sequential increase of 8% and up 60% year-over-year. POS was seasonally flat quarter-over-quarter and up 24% year-over-year. Consistent with our expectations, channel inventories continued to improve, down 11% sequentially and down 22% year-over-year.
(日本語訳)第1四半期のハイエンド消費者向け売上高は3,450万ドルで、前四半期比8%増、前年同期比60%増でした。POS(Point of Sale:販売時点情報管理)は季節要因により前四半期比横ばい、前年同期比では24%増でした。予想通り、チャネル在庫は引き続き改善し、前四半期比11%減、前年同期比22%減となりました。
(原文)Net sales in consumer TVS grew within expectations to $24.9 million, up 20% sequentially and up 108% year-over-year and paired with channel inventory decline. We believe our market share at several leading consumer products companies continued to grow with design wins, including handsets, wearables and tablets
(日本語訳)コンシューマー向けTVSの売上高は前四半期比20%増、前年同期比108%増の2,490万ドルとなり、チャネル在庫の減少と相まって想定内の伸びとなりました。当社は、携帯電話、ウェアラブル端末、タブレット端末など、複数の主要なコンシューマ製品企業において、当社の市場シェアが引き続き拡大したと考えています。
※コンシューマー向けTVS(Transient Voltage Suppressor):家庭用電子機器や消費者向け製品に特化して設計された過渡電圧抑制デバイス。
さらに、マグナチップ・セミコンダクター(MX)は、コンシューマ・デバイスの強さについて下記の様に述べている。
(原文)The PAS business strength was primarily from smartphones, e-motors, consumer appliances and server power applications.
(日本語訳)PAS事業の好調は、主にスマートフォン、eモーター、コンシューマー・アプライアンス、サーバー・パワー・アプリケーションによるものです。
※PAS(Power Analog Semiconductor)事業:同社のビジネスの主要な柱の一つであり、電力管理およびアナログ半導体ソリューションを提供する事業分野。
(正直言って予想外であった)強力なiPhoneの売上と相まって、今がその時であるように思える。
シリコン・ラボラトリーズ(SLAB)、ノルディック・セミコンダクター(NOD.OL/NDCVF)、セムテック(ACCに可能性あり)、シナプティクス(SYNA)は半導体の底値からほぼ横ばいで推移しており、サイタイム(SITM)は市場に遅れを取っている。
※ACC:セムテックの製品ラインアップの一部であり、特定のアナログおよびミックスドシグナルIC(集積回路)に関連。これらのICは、信号処理、電源管理、センサインターフェースなどのアプリケーションで使用されることが一般的。
半導体関連銘柄において、他のすべての関連銘柄が非常に活況を呈している一方で、これらの企業の株価パフォーマンスは劣っていたが、直近の決算シーズンでついに底打ちのシグナルが出たように見える。
個人的にはAI関連の取引は既に成熟していることから、在庫が底を打ち、投資家が無関心なところに目を向ける時だと考えている。
以上より、消費者向け半導体企業が少なくとも一時的に注目を浴びる時が来たと見ている。
※続きは「半導体市場の現状と今後の見通し・将来性:半導体関連ETF上昇とアプライド・マテリアルズCEOの自社株式売却が示唆する未来」をご覧ください。
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