01/03/2025

【テクノロジー:Part 1】スノーフレーク(SNOW)DatavoloとNight Shift Development買収が将来性に与える影響とは?

gold snow flakes decorコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本編は、注目の米国テクノロジー企業であるスノーフレーク(SNOW)のテクノロジー上の競争優位性を分析した長編レポートとなり、4つの章で構成されています。 
  • 本稿Part 1では、スノーフレークの足元の主要な買収先であるDatavoloとNight Shift Developmentとの統合が同社の将来性に与え得る影響に関して詳しく解説していきます。
  • スノーフレークのビジネスは堅実で市場での競争優位性も維持しているが、非常に高い株価倍率に見合うほどの価値はないと見られています。
  • 一方で、2024年9月のNight Shift Development買収により、非技術系ユーザー向けのデータ分析ツールを強化し、連邦市場への進出を推進しています。
  • また、Datavoloの買収はスノーフレークのデータパイプライン構築とオープンソース戦略を強化し、使いやすいデータツール提供の哲学を支援しています。

スノーフレーク(SNOW)に対する見解

スノーフレーク(SNOW)については、2024年9月に下記のレポートを執筆した時から弊社の見通しには大きな変化は見られません。

加えて、本稿では、スノーフレークのテクノロジーに関する専門用語が多く使用されますが、同社のテクノロジーに関しては、下記の3部作から成る長編レポート、並びに、過去のレポートにて詳細に解説しております。

そのため、本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、これらのレポートも併せてご覧いただければと思います。

一方で、2025年第3四半期の決算発表を受けて、株価や投資家の評価が大きく変動しました。

私たちの見解では、同社のビジネスは堅実ですが、際立ったものではありません。優れた企業ではあるものの、非常に高い株価倍率に見合うほどの価値があるとは思えません。それでも、業績が低迷しているわけでもなく、経営陣に問題があるわけでもなく、市場での競争優位性が失われているわけでもありませんし、品質の低い製品を作っているわけでもありません。ここ数四半期、同社に対する投資家の評価は過剰にネガティブなものとなっており、その原因は恐怖、不安、疑念(FUD)によるものだと考えていますが、これらの懸念の多くは非合理的なものだと見ています

・スノーフレークがDatabricksなどの競合にクラウドデータウェアハウス分野でのリーダーシップを奪われるという主張。

・Cortex AIを活用したPaaSやSaaSの取り組みが失敗するという断定。しかし、スノーフレークがクラウドデータウェアハウス(CDW)におけるコストパフォーマンス(perf/$)やユーザーエクスペリエンス(UX)の優位性を失ったことを裏付ける信頼性のある証拠や実績は存在しません。

・スノーフレークの独自データフォーマットが競争優位性を失い、売上の11%がIceberg採用によって奪われるという懸念。ただし、多くの顧客が引き続きスノーフレークのエコシステム内に留まる可能性が高いため、Icebergはむしろスノーフレークの収益機会を拡大する可能性があります。

・顧客データの漏洩による重大なサイバーセキュリティや信頼性への懸念。しかし、これらはスノーフレークのインフラの欠陥ではなく、顧客の設定ミスが原因です。

・フランク・スルートマン氏が成長の限界や企業の衰退を理由にCEOを退任したという憶測。しかし、新CEOの下で製品展開が特にAI分野で加速しています。

・Cortexを含むスノーフレークの新製品が収益の成長に大きな影響を与えないという懐疑的な見方。

批評の中には、私たちがスノーフレークの経営陣の過度に楽観的なストーリーに盲目的に従っていると皮肉を込めて指摘する人もいます。しかし、私たちが経営陣の見解に賛同しているのは、単なる盲信ではなく、独自の分析と検証を通じて確信を得た結果に基づくものです。私たちが同社のIRの代弁者として行動しているという主張には何の根拠もありません。確かに、私たちは同社の経営陣やその戦略を評価しており、それがこれまでの高い評価やアナリスト間での強力なブランド力につながっているのは事実です。しかし、それと同時に慎重さも欠かしていません。たとえば、2029年会計年度のARR(年間経常収益)を100億ドルとする経営陣の目標について、私たちは全面的に支持していたわけではありません。また、評価額(バリュエーション)が私たちの基準に合致し、リスクとリターンのバランスが整うまで投資を控えていました。

2024年におけるスノーフレークとパロアルトネットワークス(PANW)の株価の動きの比較は非常に興味深いものです。どちらも優れた経営を持ち、明確なビジョンと確実な実行力を備え、年初にはアナリストから高い評価を受けていました。しかし、その株価の推移は対照的でした。パロアルトネットワークスは急激に下落した後、投資家の期待を意図的に調整することで徐々に回復しました。一方、スノーフレークは緩やかに下落した後、急激に反発しました。パロアルトネットワークスが控えめなガイダンス設定で投資家の楽観的な期待を管理したのに対し、スノーフレークは直近の完璧な業績がかえって投資家の焦燥感を煽り、方向転換時の不確実性や小さな問題が不満を引き起こしたようです。

この対比は、似たような事業基盤を持つ企業であっても、会社と投資家が作り上げるストーリーによって市場の反応がいかに異なるかを如実に物語っています。

スノーフレーク(SNOW)によるNight Shift Developmentの買収

2024年9月、スノーフレーク(SNOW)はNight Shift Developmentを買収しました。同社は、ノーコードで操作可能なデータ分析ソフトウェア「ClearQuery」を開発している企業です。ClearQueryは、専門的な技術知識がなくても、非技術系のユーザーがデータ分析を活用し、特別なトレーニングを受けずに価値を生み出せるように設計されています。特筆すべき点として、ClearQueryの目標は、大規模言語モデル(LLM)を活用するのではなく、人間の自然な言語に基づいて動作するデータ分析ツールを構築することにあります。

ClearQueryはこの分野で長年の実績があります。一部の競合他社はChatGPTのような外部リソースを活用してデータ分析の民主化を試みていますが、そうした方法にはセキュリティリスク、高額な変動コスト、さらには予測困難な応答といった課題が伴います。一方で、ClearQueryはシンプルで使いやすいインターフェースを提供しながら、柔軟性、セキュリティ、正確性を同時に実現しています。

ClearQueryの開発哲学は、使いやすく直感的なUIを実現するために、長年にわたる人間の緻密な努力を重視しています。この哲学は技術者だけでなく、すべてのユーザーが使いやすいツールを提供することを目指しており、データスタックを簡素化して顧客にとってよりアクセスしやすく価値あるものにするというスノーフレークの基本理念と完全に一致しています。

また、Night Shift Developmentは政府分野、特に連邦関連ビジネスにおいて確固たる地位を築いています。創業者2人が政府のセキュリティ機関出身であることから、この分野での専門知識と信頼性が確立されています。この強みは、連邦市場への進出が比較的遅れているスノーフレークにとって、大きな補完的役割を果たします。特に、近代化や次世代技術の導入が求められるこの市場は、成長の余地が大きいと見られています。さらに、新しいトランプ政権が「政府効率化省(DOGE)」を通じて効率化を優先課題として掲げる中で、スノーフレークはテラデータ(TDC)やオラクル(ORCL)といった既存の大手を置き換えつつ、連邦市場向けのGTM(Go-To-Market)戦略を積極的に推進することで、この機会を最大限に活かす好条件にあります。

さらに、ClearQueryはセキュリティデータの可視化やアラート生成において優れた効果を発揮しており、非技術系のユーザーでも実用的な洞察を得ることができます。これまでにも述べてきたように、データアプリケーションはスノーフレークにとって重要な成長エンジンであり、競争優位性を築くための鍵となる分野です。ただし、この分野での進展は限定的であり、特にサイバーセキュリティやCRM(顧客関係管理)における進歩が顕著です。サイバーセキュリティは、センチネルワン(S)に関連して以前述べたように、ますますデータエンジニアリングの課題となっています。効果的なセキュリティを実現するには、大量のデータを収集し、それを文脈に基づいて整理し、アルゴリズムやクエリを活用して異常や脅威を早期に検出することが重要です。

ClearQueryを統合することで、スノーフレイクは顧客が取り込んだサイバーセキュリティデータから即座に価値を引き出せるよう支援できます。これにより、Panther LabsのSIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)といったサードパーティツールに依存する必要がなくなり、導入や統合の手間を大幅に簡略化できます。

スノーフレーク(SNOW)によるDatavoloの買収

Datavoloは、Ramaswamy氏を迎え入れるきっかけとなったNeevaの買収を除けば、スノーフレーク(SNOW)にとって過去最高の買収となる可能性があります。

Datavoloは2023年10月に設立されたスタートアップで、創業者はClouderaの元CVP(コーポレートバイスプレジデント)とCMO(チーフマーケティングオフィサー)です。彼らはHortonworksでキャリアをスタートさせ、同社とClouderaが合併した後にClouderaに加わりました。

Datavoloは、私たちのオープンコアに関するテーマレポートで定義される「オープンコア2.0企業」の教科書的なモデルケースと言える存在です。

Datavoloは、Apache NiFiの商業化を担う企業です。その創業者はNiFiの開発者であり、同社はNiFiのプロジェクト管理委員会(PMC)の多数を掌握し、NiFiの進化と開発に大きく寄与しています。

Datavoloはオープンソースプロジェクトを収益化するために、エンタープライズ向けの独自機能を提供しています。これには、企業レベルのセキュリティとガバナンス、オートスケーリング対応のクラウドネイティブなデプロイメント、事前に構築されたコネクターやプロセッサー、包括的なサポートサービス、さらにDatavoloプラットフォーム専用のPythonベースプロセッサーなどの高度な機能が含まれます。

また、DatavoloはBYOC(Bring Your Own Cloud)とマネージドSaaSの両方のデプロイメントモデルをサポートし、幅広い顧客ニーズに対応しています。

Datavoloの主なインターフェースはGUIであり、ユーザーの技術レベルに関係なく、効率的にデータパイプラインを構築できるよう設計されています。これにより、データエンジニアはより重要なタスクに集中することが可能となり、Datavoloの取り組みは、データツールを誰でも簡単に使えるようにするというスノーフレークのデザイン哲学と完全に一致しています。

次章では、スノーフレークとApache NiFiの関係性に関して詳しく解説していきます。

※続きは「【テクノロジー:Part 2】スノーフレーク(SNOW)の強み:Apache NiFiを活用して高いセキュリティと拡張性を提供!」をご覧ください。

その他のスノーフレーク(SNOWに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、スノーフレークのページにてご覧いただければと思います。

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