01/27/2025

【Part 1】Snowflake(SNOW:スノーフレーク)は何がすごい?同社の最新の製品基盤強化に関する取り組みを徹底解説!

snowman with snow on his headコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本編は、注目の米国テクノロジー企業であるSnowflake(SNOW:スノーフレーク)の競争優位性、並びに、最新のバリュエーションと今後の株価見通しを分析した長編レポートとなり、3つの章で構成されています。
  • 本稿Part 1では、「Snowflakeは何がすごいのか?」という疑問に答えるべく、同社の製品基盤強化に関する取り組みやIcebergを巡るストレージ戦争について詳しく解説していきます。
  • SnowflakeがIcebergやPolaris Catalogを採用したことで、収益減少への懸念が緩和され、オープンデータ形式とデータガバナンスの分野でリーダー的な地位を確立しています。
  • CEOのRamaswamy氏のリーダーシップと戦略的な取り組みを背景に、当初の懸念をよそにSnowflakeに対する投資家心理は好転しているように見えます。
  • また、同社のバリュエーションはサービスナウ(NOW)等の競合他社と比較して魅力的であり、新製品の投入による大幅な成長やFCFマージンの拡大が期待されています。
  • ただし、セールス&マーケティング部門の人員拡大やトップクラスのAI人材の採用による短期的なコスト増加には注意が必要でしょう。

※本稿は、SnowflakeSNOW)に関する詳細な分析レポートであり、専門用語を多く含んでおります。弊社は、2025年1月27日時点で、既に同社に関する16件のレポートをインベストリンゴ上でリリースしており、各レポートで同社のテクノロジー上の強みを詳細に解説しております。そこで、本稿への理解を深めるために、弊社が執筆した同社に関する下記のレポートも併せてご覧いただければと思います。

Snowflakeのレポート一覧はこちら

Snowflake(SNOW:スノーフレーク)の製品の基盤強化 

Icebergとストレージ戦争

SnowflakeSNOW)は2件の買収に加え、製品基盤に大幅な変更を加えました。その中でも特に注目すべきは、Icebergによる潜在的な収益損失への対応です。因みに、Icebergとは、オープンソースのテーブル形式であり、ビッグデータやクラウドデータウェアハウス(CDW)のために設計された Apache Iceberg プロジェクトを指します。この形式は、大規模なデータセットを効率的に管理し、操作するための標準を提供します。

以前、同社の顧客が独自のデータフォーマットからIcebergというオープンフォーマットへ移行することで、収益が最大11%減少する可能性があると投資家に警告されていました。このIcebergは、オープンコア企業であるTabularを数十億ドルで買収したDatabricksが管理する可能性がありました。しかし、前回の弊社が執筆したレポートではこの懸念が過剰であると考えており、今回も同じ見解を維持しています。その理由は以下の通りです。

Snowflakeは依然としてCDWエンジンのリーダーである

データフォーマットに関わらず、Snowflakeは計算処理において最も魅力的なエンジンであり続けています。

・Icebergの標準化はSnowflakeにとって有利

もしIcebergが標準フォーマットとなれば、それはSnowflakeにとって大きなメリットとなります。優れたパフォーマンスとコスト効率を武器に、顧客が同社独自のフォーマットにデータを取り込むことなく、より幅広いデータへのクエリが可能になるためです。

・真に「独立した」ストレージやカタログは存在しない

最終的に、データは特定の計算エンジンに最適化される必要があります。このエンジンが「主役」となり、カタログやデータストレージがそのエンジンに最適化されることで、最高の計算効率を実現します。他のエンジンでもデータにアクセスできますが、同じレベルの計算効率を達成することはできません。

Snowflake管理のIcebergが最適な選択肢

仮に顧客がIcebergを選択する場合でも、Snowflake管理のIcebergを選ぶ可能性が高いです。同社は、最も成熟したデータガバナンス、セキュリティ、データ共有エコシステムを提供しています。また、同社がデータを書き込むには、そのデータが同社によって管理される必要があります。現在、同社はサードパーティが管理するIcebergカタログへの書き込み操作をサポートしていませんし、仮にサポートしたとしても効率は大きく劣ります。

2四半期にわたってストレージ収益の離脱がほとんど見られず、Icebergを採用した顧客の多くがSnowflake管理のIcebergを選んだことを受け、同社の経営陣は投資家に対し、想定されていたストレージ収益の11%減少はもはや起こらないとの見解を示しました。仮に収益が減少したとしても、新たにGA(一般提供)を予定している主要な製品の成長がその減少分を補うとしています。この発表は、投資家の見方が大きく変化したことを意味します。

突如として、同社の将来を覆っていたFUD(恐怖、不確実性、疑念)が消え去りました。投資家たちは現在、同社が再び「業界最高水準(BoB)」の地位に戻ったと見ています。ストレージ収益損失への懸念は解消され、同社独自フォーマットの支配力も維持されています。この期待の逆転により、投資家たちはむしろIcebergの採用が同社にさらなる収益をもたらすとの経営陣のストーリーを受け入れるようになっています。その理由は、同社の計算エンジンが従来より100倍多くのデータをクエリできるようになったこと、そしてオープンフォーマットを重視する顧客が同社を採用することで、カタログ(特にApache Polarisプロジェクトを通じたメタデータ管理)のオープンコアビジネスの収益化からも恩恵を受けられる点にあります。

皮肉なことに、この投資家の見方の変化にもかかわらず、同社の基本的な立場は大きく変わっていません。むしろ、物語の展開や経営陣の安心感を与える発言により、投資家の感情が過剰に、そして急速に揺れ動いた結果と言えます。

Snowflake(SNOW:スノーフレーク)とPolarisカタログ

SnowflakeSNOW)はPolarisカタログをApache財団に提供することで、DatabricksがTabularのIceberg管理を利用して独自のカタログ標準をIcebergフォーマットに押し付けるリスクを大幅に軽減しました。因みに、Polarisカタログとは、Apache Iceberg向けのオープンソースのカタログ管理システムであり、特に大規模なデータセットやクラウドデータレイクの管理を最適化するために設計されています。Polarisカタログは、データのガバナンスやセキュリティ、スケーラビリティを強化し、Icebergフォーマットを採用するデータレイクやデータウェアハウスにおいて標準的なカタログとして機能することを目指しています。

そして、もしSnowflakeがPolarisをオープンソース化しなかった場合、DatabricksはTabularのApache Icebergへの関与を利用し、Icebergと緊密に統合された独自のカタログを構築する可能性がありました。この場合、Databricksは自身のカタログをIcebergユーザーにとってデフォルトや推奨オプションとして位置付け、ユーザーを自社のエコシステムに誘導することができたでしょう。独自カタログを管理することで、Databricksはベンダーロックインを強制し、Icebergのフォーマットを活用しながら他のプラットフォームを採用するのを難しくする可能性がありました。しかし、Polarisをオープンソース化したことで、広くアクセス可能で中立的なカタログの選択肢を提供し、このリスクを防ぐことが可能になりました。

その結果、Icebergが標準的なストレージフォーマットとして定着し、Polarisカタログがカタログの標準として浮上する見通しが立ちました。より多くのベンダーがPolarisを採用することで、その勢いが増し、競争優位性の「堀」が形成され、新規参入者、特にDatabricksのUnity CatalogがGTM(市場進出)領域で進展することが非常に難しくなるでしょう。

この動向は、MDS(メタデータストア)分野の複数の小規模で新興のプレイヤーがPolarisを採用していることから明らかです。特に、データウェアハウスの計算エンジン市場でSnowflakeと直接競合するDremioは、Polarisを採用しただけでなく、自社のオープンソースプロジェクトもこの取り組みに貢献しています。DremioがDatabricksではなくSnowflakeのエコシステムに積極的に参加していることは、Databricksがオープンソースリーダーとして支配的であるというこれまでの見方からの明確な変化を示しています。Databricksがより確立された閉鎖的なプレイヤーとなる一方で、小規模企業は、より閉鎖的と見なされることがあるSnowflakeであっても、より協力しやすいパートナーとして選ぶ傾向が強まっています。

(日本語訳)Project Nessieの機能をPolarisカタログに提供

(日本語訳)Project Nessieは、Apache Iceberg™向けのオープンソースのインテリジェントなメタストア兼カタログで、Gitのようなセマンティクスを備えています。Dremioの共同創設者によって開発され、2020年にApacheライセンスのプロジェクトとなりました。

(日本語訳)Dremioのチームは、Nessieのさまざまな機能をPolarisプロジェクトに統合することに貢献できることを大変喜んでいます。Project Nessieの機能をPolarisカタログに提供することで、オープンなレイクハウスアーキテクチャ向けに最も堅牢なオープンソースカタログを開発する包括的なコミュニティが形成されます。1つのプロジェクト内でイノベーションを進めることで、カタログの分散を抑え、より多くの貢献者が迅速な進展を促進できる環境が整います。このパートナーシップは、技術的進歩を加速させるだけでなく、より多くの貢献者をNessieコミュニティに引き込み、Polarisを中心としたエコシステムをさらに強化します。Nessieエコシステムについて詳しくは、こちらをご覧ください

(出所:SnowflakeのHP

DremioやStarburstといった計算エンジンの競合他社に加え、Fivetran、Singlestore、Atlanといった他のMDS(メタデータストア)ベンダーからもPolarisは注目を集めています。特に、Fivetran(データ抽出やソースデータとの統合を中心としたETLツール)は、現在Polarisを基盤としたマネージドデータレイクを提供しています。

(日本語訳)Fivetranは、オープンソースのPolarisカタログを活用し、Fivetranのマネージドデータレイクサービスを利用する顧客向けにホスティング型カタログソリューションを開発できることを大変喜んでいます。これにより、顧客は自分たちで技術的なメタデータカタログを作成・管理する必要がなくなります。今後の統合により、Fivetranのマネージドデータレイクサービスの価値がさらに高まり、データレイクと連携しながらメタデータをPolarisに送る機能が追加される予定です。

(日本語訳)ベンダーに依存しないデータカタログを導入することは、幅広いデータソースやツールと統合できるため、企業にとって大きな利点があります。これにより、ベンダーロックインを回避し、変化する技術やビジネスニーズに柔軟に対応できるようになります。ベンダーに縛られないアプローチを採用することで、企業は特定のプロバイダーのエコシステムに制約されることなく、データ戦略を拡大し進化させることが可能になります。

(出所:FivetranのHP

Snowflake(SNOW:スノーフレーク)とオープンカタログ

予想通り、SnowflakeSNOW)は2024年10月に「Snowflake Open Catalog」という管理型カタログサービスを開始しました。このサービスは、Polarisユーザーの中で高度な技術知識やエンタープライズ向けの展開を必要とする利用者向けに管理型サービスを提供します。これにより、重要分野での同社の加速的な進展が示され、以前のゆっくりとした進化とは大きな対照を成しています。

この変化は、同社やエンタープライズテクノロジー全般について、多くのカジュアルな投資家が抱く一般的な誤解を思い起こさせます。多くの場合、エンタープライズテクノロジーが消費者向けテクノロジーと同じペースで進化し、数週間や数か月で新しい技術が古い技術に取って代わると考えられがちです。しかし実際には、MDSのような基盤技術には、完全な移行に数年、時には10年以上かかることがあります。このことが過去1年間、同社への投資家の失望の大きな要因となっています。同社はSnowparkのような新製品をいくつか発表しているものの、広範な採用にはまだ至っていません。また、同社が新製品の展開を非常に慎重に進めていることも、失望感を強める一因となっています。GA(一般提供)までの長い道のりが投資家の期待を過度に高めてしまうためです。しかし、CEOであるRamaswamy氏による新しいアプローチでは、製品リリースをより迅速化することで、投資家の期待を適切に管理し、同時に変化の激しい市場環境に対して同社をより敏捷に対応させることができると期待しています。

投資家がプロジェクトや技術の成熟度を誤解するもう一つの例として、「Icebergはすでに成熟した広く採用されている標準であり、カタログがSnowflakeの競争優位性(モート)として活用できない大きな障害である」という考え方があります。しかし実際のところ、Icebergはまだ非常に若く、発展途上のプロジェクトです。Apache Iceberg 1.0がリリースされたのは2022年11月で、バージョン1.5が続いたのは2024年3月に過ぎません。この段階では、IcebergはストレージフォーマットとテーブルのACID(Atomic, Consistent, Isolation, Durability)機能に対応しているに過ぎず、完全なスタックはまだ未完成です。特に大きな欠点はカタログ機能が欠如している点です。統合されたカタログがなければ、多くの企業がIcebergを採用する可能性は低いでしょう。特に非技術系の企業にとっては、展開や統合、継続的な保守にかかる負担が非常に大きいためです。

(出所:SnowflakeのHP

皮肉なことに、投資家の間では2024年にSnowflakeの顧客の多くがIcebergへ移行すると予想されていますが、実際には多くの顧客がまだ移行計画すら立てていないのが現状です。調査によると、多くの顧客がオープンソースやオープンテーブルフォーマットを好み、これらの選択肢が長期的に最も柔軟性が高いと考えています。しかし、それはあくまで理想的な未来のシナリオに過ぎません。実際には、Icebergはまだ成熟には程遠く、同社の独自フォーマットが価格に対する最良のパフォーマンスと堅実な相互運用性を提供するため、多くの顧客にとって依然として最適な選択肢となっています。

同様の誤判断は、投資家がクラウドストライク(CRWD)の顧客が数週間以内にセンチネルワン(S)へ急速に移行すると期待していた際にも見られました。実際には、このような大規模な変化が波及し、その影響を完全に発揮するまでには長い時間がかかります。主な理由は、企業がこうした事象に対応するのに時間を要するためです。

Icebergの導入計画や採用予定のカタログについて顧客に尋ねても、しばしば明確な答えが得られません。これは、この分野全体がまだ初期段階にあり、成熟したソリューションが存在していないため、明確な道筋が見えていないからです。

だからこそ、SnowflakeがPolarisカタログを展開し、マネージドオープンカタログを提供するというタイムリーな対応は非常に安心感を与えるものです。これにより、同社が現状にとどまらず、次のパラダイムシフトに備えて迅速に動いていることが示されています。一部の投資家が同社が遅れをとっている、あるいは不利な立場にあると誤解している中で、この動きはその認識を覆す証拠となっています。

私たちは、革新的なスタートアップと歩調を合わせるだけでなく、しばしばそれを上回る進化を遂げる、上場している年次経常収益(ARR)が数十億ドル規模の企業に特に注目しています。その代表例がパロアルトネットワークス(PANW)です。同社はクラウドセキュリティやSecOps分野で引き続きリードしており、特定製品を狙うニッチなスタートアップを凌駕しています。同様に、SnowflakeもRamaswamy氏のリーダーシップの下、スタートアップでの新たなトレンドを敏感に察知し、その分野で大きなブレイクを果たすスタートアップが現れる前に、Open Catalogのような革新的な製品を展開しています。

次章以降では、Snowflakeと精密AIの関係性と可能性、同社の戦略的優位性、さらに同社のバリュエーションと今後の株価見通しについて詳しく解説していきますので、お見逃しなく!

その他のSnowflakeSNOWに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクよりSnowflakeのページにてご覧いただければと思います。

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※続きは「【Part 2】Snowflake(SNOW:スノーフレーク)の生成AIを含むAI戦略とは?新CEOによる影響も含め徹底解説!」をご覧ください。

加えて、冒頭の通り、弊社は2025年1月27日時点で、既にスノーフレークに関する16件のレポートをインベストリンゴ上でリリースしておりますので、それらのレポートも併せてご覧いただければと思います。

スノーフレークのAI戦略に関して

スノーフレークの優位性に関して


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