中立SPDR S&P 500 ETF【最新】米国株の今後の見通し:買われ過ぎ状態の解消に伴う下落には警戒が必要
ローレンス・ フラー- 底堅い成長とインフレ水準の低下が重なり、米国株式市場において、ソフトランディングが現実味を帯びてきた。
- しかし、株式市場と債券市場は過去7週間、あまりに速く動きすぎたため、一旦リセットするための小休止か、調整が必要であると見ている。
FRBが「長期的な金利引き上げ政策」から、2024年には3回の0.25ポイントの利下げを行う政策に転換したことを受け、主要市場の平均株価は7週連続の上昇となっている。
そして、先週の11月小売売上高と最新の週間失業保険申請件数は、経済成長の継続を示している。
同時に、11月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数が発表され、ディスインフレ基調が継続していることが確認されている。
物価の下落と景気の回復という組み合わせは、FRBにとっては心地よく、パウエル議長に対して、実際にソフトランディングが軌道に乗り、金融政策において、中立的な政策への一歩を踏み出すことが賢明であるとの確信を与えている。
弱気サイドのストラテジストは、FRBによる利下げへのシフトは、FRBが経済の弱さや金融リスクの上昇を見ていることを意味すると主張している。
しかし、私はそうは思わない。
FRBは中立的なスタンスから景気刺激的な利下げを予想しているのではなく、遥かに制限的ではない利下げを予想しているのである。
更に、先週、私は、FRBは2024年末の実質GDPと失業率の予想を変えないだろうと推測した。
下の経済予測サマリーの更新で分かるように、FRBは来年のGDPを1.5%から1.4%に微調整した以外は、その通りになっている。
一方で、予想通り、FRBはPCEとコアPCEの見通しを2.4%に引き下げた。
そのため私は、FRBは2024年末のFF金利の見通しを引き下げる必要があると強調した。
そして、実際に、FF金利予想は5.1%から4.6%に低下している。
しかし、FRBの動きは非常にゆっくりとしている。
その為、FRBの予想が、来年5回の利下げという現在の市場予想に合致しなかったとしても、私は驚かないだろう。
今年初め、S&P500種株価指数が大幅な上昇を遂げたのは、その大半が「マグニフィセント7」と呼ばれるテクノロジー株によるものだったことが大きな懸念材料であった。
その際には、テクノロジー株は、この強気相場のアキレス腱であるとベア派には思われていた。
しかし、私は6月の時点で、強気相場の基盤を強化する幅の改善(より幅広い銘柄が上昇すること)を期待して、投資家に忍耐強くなるよう説明した。
だからこそ私は、6月26日、今後6~12ヶ月の間にS&P500種株価指数が史上最高値を更新すると予想し、その根拠として以下のチャートを掲載したのである。
幅の狭さ(一部の銘柄だけが上昇すること)は、他の市場・銘柄が既に上昇している銘柄に追いつくように上昇し、指数を上昇させる好機であると見ていた。
S&P500種指数は、この日、4,348で引けている。
実際、昨年6月のようにS&P500の時価総額上位5銘柄が5ヶ月以上インデックスをアウトパフォームした場合には、その後の3~12ヶ月の間、インデックスは堅調なリターンを記録している。
そして、過去6ヶ月のS&P500種指数のパフォーマンスを見てみると、実際に8.5%上昇している。
幅の改善は11月初めから本格化し、今日まで続いている。
S&P500の他の493銘柄だけでなく、ラッセル2000指数に代表される国内重視の傾向が強い最も小規模な上場企業も上昇に加わっている。
2024年を迎えるにあたり、これは極めて明るい兆しであると考える。
市場は一直線に動くものではない。
この上昇の激しさは、さまざまなことが重なった結果だと思っている。
10月の終わりには、多くの機関投資家が株価指数の大幅下落と債券利回りの上昇に賭けていたことは間違いない。
そのため、ショート・カバーが足元のラリーに大きな役割を果たしたのだろう。
同時に、投資不足の機関投資家や個人投資家が年末前のラリーを追いかけるために資金を投入しているようにも見える。
それにより、足元株価が幅広く上昇していることからも、この時期の株式と債券のリターンの一部を既に消化している可能性があり、これはセンチメント指標でも裏付けられている。
実際に、米国個人投資家協会の最新調査では、過去1年間で強気派が最も多く、弱気派は過去6年間で最も少ないとのことである。
この調査は逆張りの指標であることからも、目先の上値は限定的であることを示唆していると見ている。
CNNが発表した「恐怖と貪欲指数」でも、同様のことが言える。
7週間前のように、他人が恐れているときには貪欲になり、他人が貪欲なときには恐れを抱くべきなのである。
新年の2024年には、2023年の大半を占めたような警戒のレベルを見ることはないだろうと考える。
しかし、2024年に向けてリスク資産により多くの資金を投入するに当たり、懐疑的とまではいかなくても、もう少し悲観的な見方をしてほしい。
そのためには、主要市場平均の2~3%程度の引き下げや、一時的な小休止が必要だろう。
どちらも市場の買われ過ぎ状態を解消するのに役立つだろう。
強気相場は既に軌道に乗っており、ソフトランディングもそう遠くないが、短期的には市場はやや楽観的すぎる状況である点は否定できないと見ている。