12/05/2024

米国株の調整はいつ?プロの機関投資家の米国株先物に対する過去最高水準のロングポジションには要警戒!

red stop signローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「米国株の調整はいつなのか?」という疑問に答えるべく、プロの機関投資家が米国株先物に対する過去最高水準のロングポジションを積み上げている現状に加え、足元の経済指標の分析を通じて、今後の米国株見通しを詳しく解説していきます。
  • S&P500は過去最高値を更新し続ける一方、投資家心理や資金配分の偏りが市場全体の調整を引き起こす可能性が高まっていると見ており、一部資産を現金化するのが現時点では賢明であると考えています。
  • 労働市場データでは、求人件数の増加や退職率の上昇が確認され、経済がソフトランディングに向かう可能性が示唆されていることからも、短期的な調整は押し目買いの機会と見ています。
  • 投資判断において、バリュエーションは長期的な基準として重要ですが、短期的な市場動向では投資家心理や経済基盤の変化がより大きな影響を与えると考えます。

米国株は最高値更新も調整は目前?

S&P500は、新たな過去最高値を次々と更新しており、昨日で今年56回目の更新となりましたが、指数全体にはやや疲れが見え始めているようにも見えます。

2025年への不透明感が高まる中でも、ボラティリティは日々極めて低い水準にとどまっており、多くの投資家は年末のラリーに向けてフルインベストメントを維持しようとしています。

年初から弱気派は「歴史的に高いバリュエーションが強気相場を止めるだろう」と警告してきましたが、バリュエーションがタイミングを計るには不適切な指標であることを見落としていました。

バリュエーションは長期的な投資判断には重要ですが、数カ月から数年といった短期~中期の期間ではほとんど意味を持たないと考えています。

一方、市場全体が本格的な調整に入るには、センチメント(投資家心理)やポジショニング(資金配分)の過熱が必要ですが、これらはすでに危険な水準に達しつつあるようです。

このため、他の多くの投資家がそうしていない今こそ、ポートフォリオの一部を現金化するタイミングだと考えています。

フルインベストメントの状態では、市場で新たなチャンスが訪れても活用する余地がなくなってしまいます。

S&P500のポジショニングは大きく偏っている

資産運用者は米国株先物に対してほぼ過去最高水準のロングポジションを保有しています。

(出所:Bloomberg

投資家心理やポジショニングが極端に偏ると、市場全体の調整が起きやすい状況が生まれます。

現在の強気相場が2022年10月に始まって以来、10%の調整を含む5回の調整局面を確認しています。

バリュエーションが「魅力的」から「適正」そして「割高」に近づくにつれ、調整の可能性は高まりますが、最も重要なのは経済や市場の基盤となる要素です。

これらは、私が日々のレポートで追跡している変化率を通じて分析しています。

経済成長が順調で、市場の基盤が引き続き改善している限り、調整や一時的な下落はむしろ買いの好機だと考えています。

しかし、バリュエーション、投資家心理、ポジショニングが極端に偏り、それに加えて基盤が悪化し始めた場合、通常の調整が弱気相場へと転じる可能性があります。

現時点ではそうした状況は見られません。

ただし、割高になった銘柄の利益を確定し、一部を現金化するのは、現時点で賢明な選択と言えるでしょう。

一昨日発表された労働市場データは、経済成長が引き続き堅調であることを示しました。

一部では、経済が減速しすぎてFRBが金利引き下げのタイミングを逃しているのではという懸念がありましたが、10月の求人労働異動調査(JOLTS)では、求人件数が7.37百万件から7.74百万件に増加し、数カ月間続いた減少傾向から持ち直しました。

この動きは、FRBが目指していた求人と求職者のバランスが整いつつあることを示しており、その目標はおおむね達成されたと言えるでしょう。

退職率が17カ月ぶりに上昇

雇用に占める退職率の割合(2019年1月~2024年)

(出所:Indeed

そのため、求人件数の増加は歓迎すべき動きです。

同時に、解雇件数が6月以来の最低水準に減少し、退職率が5月以来の最高水準に上昇したことも注目すべきポイントです。

これらは、労働者が現職を辞めても新たな仕事を見つけられる自信を持っていることを示しています。

これは「ゴルディロックス」のような理想的な状態を反映しており、今後数カ月で経済がソフトランディング(軟着陸)する可能性を示唆していると見ています。

そのため、来年初頭に市場全体で調整や一時的な下落があったとしても、それは押し目買いのチャンスとなるのではないかと考えています。


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

📍米国マクロ経済担当

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