米国の利下げ期待は後退? 前年比2.7%上昇の11月の消費者物価指数(CPI)のFRBの利下げへの影響に迫る!
ローレンス・ フラー- 本稿では、「米国の利下げ期待は後退したのか?」という疑問に答えるべく、11月の消費者物価指数(CPI)のFRBの今後の政策への影響を詳しく解説していきます。
- 住宅費用のインフレ率は、古い賃貸契約が計算から外れるにつれて低下すると予測され、リアルタイムデータを用いればCPIはFRBの目標を大きく下回る可能性があります。
- FRBはCPIだけでなく、消費者の将来的な期待も注視しており、実質賃金の増加が経済成長を支える一方、インフレ率の再上昇がリスクとなる可能性があります。
- 実質賃金の増加は消費者支出を拡大させ、経済成長の原動力となっていますが、インフレが賃金上昇率を超えると経済成長に影響を及ぼす可能性があります。
11月の消費者物価指数(CPI)を受けて米国の利下げ期待は後退したのか?
2024年12月10日、火曜日の米国株式市場は水曜日に発表された米国の11月消費者物価指数(CPI)レポートを控え、再び低迷しました。
しかし、CPI発表後は米国株式市場は持ち直しています。
投資家たちは、高い数値が来週の連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの期待を損なうのではないかと懸念していたようです。
ただ、私はCPIの数値がそれほど重要ではないと考えています。
CPIや個人消費支出(PCE)の住宅費用の計算方法を踏まえると、デフレ傾向が続いていることは明らかだからです。
この点については1年以上主張してきましたが、今もなお、評論家の中にはインフレ率を「粘着性がある」と表現する人がいます。
実際のところ、リアルタイムで計算されていない部分を除けば、それは粘着的ではありません。
11月の消費者物価指数(CPI)は前月比で0.3%上昇し、食品とエネルギーを除いたコア指数も同じく0.3%上昇しました。
これにより、年率換算ではCPIが2.7%、コア指数が3.3%の上昇となりました。
総合指数は前年同月比で2.6%から2.7%に上昇しましたが、コア指数は変わりませんでした。
住宅費用、特に賃貸物件の家賃上昇が主に影響するこの項目は、労働統計局の計算によると11月は前年比で4.7%上昇し、総合指数の上昇分の40%を占めました。
ただし、この計算では、先月新たに締結された賃貸契約ではなく、現在有効なすべての賃貸契約が考慮されています。
たとえば、10か月前に前年より5%高い家賃で契約を結んだ消費者の影響は、先月前年より低い家賃で契約を結んだ消費者と同等に反映されます。
そのため、古い賃貸契約が計算から外れ、新しい契約が加わるにつれて、住宅費用のインフレ率は今後も低下していくと考えられます。
(出所:TradingEconomics)
古い賃貸契約が計算から外れ、新しい契約が反映されるにつれて、住宅関連のインフレ率は今後も低下していくと考えられます。
もし労働統計局(BLS)がリアルタイムデータを使用していた場合(Apartment Listの推定では0.6%の減少)、CPIはFRBの目標である2%を大幅に下回る水準となっていたでしょう。
FRBの関係者はこれを理解しており、だからこそ9月に利下げサイクルが開始されました。
ただし、他の指数構成要素が2%を超えるペースで上昇し始める可能性はありますが、現時点では住宅費用が最も大きな影響を及ぼす要素であり、この傾向はさらに続くと予想されます。
全国賃貸指数の年間変動率(2019年~現在)
(出所:Apartment List)
FRBは、過去のデータに基づくCPIだけでなく、消費者の将来的な期待にも同様に注目しています。
その期待値は、1年先および3年先の生活費の見通しがパンデミック前の水準に戻ったことで、しっかりと安定しています。
ほぼ安定化
FRBの独自調査によると、消費者の予測はコントロール下にあることが示されている
(出所:Bloomberg)
今回のインフレ報告で最も重要でありながら、ほとんど注目されていない点は、消費者の購買力への影響です。
2023年、余剰貯蓄がほぼ底をつきかけていた時期に、インフレ率が名目賃金の上昇率を下回り、消費者にとって実質賃金の増加がもたらされました。
これは、私が「ソフトランディング」を予測する際の重要な根拠の一つであり、現在もその状況は続いています。
実質賃金が伸び続ける限り、実質的な消費者支出も拡大し、それが経済成長の原動力となります。
しかし、もしインフレ率が再び上昇し、現在緩やかなペースで推移している賃金上昇率を超えるようなことが起これば、経済成長は間違いなく危機に直面するでしょう。
昨年、平均賃金の伸びがインフレ率を上回り、消費を下支えしました。この傾向は2025年も続く見込みです。
(出所:Edward Jones)
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