FOMCによる利下げの株価への影響とは?0.25%の利下げは既定路線も、来年の金融緩和のペースは緩やかに?
ローレンス・ フラー- 本稿では、今週予定されているFOMCにおける利下げの株価への影響を詳しく解説していきます。
- 今週のFOMCでは0.25%の利下げは既定路線となっていますが、来年の金融緩和のペースは想定よりも緩やかになる可能性が指摘されています。
- S&P500は「マグニフィセント7」の大型テクノロジー株への資金シフトで指数全体が支えられているが、平均的な株価は下落傾向が続き、過熱感が解消されています。
- インフレ指標の高止まりや新政権の政策リスクから、FRBの金融緩和ペースは想定より緩やかになる可能性があり、今週のパウエル議長の発言が注目されています。
- テクノロジー株の過熱感は時間と共に解消される見込みであり、新政権発足に伴う市場の期待が高まる中、流動性を確保しつつ調整局面に備えることが重要となるでしょう。
FOMCにおける利下げの米国株価への影響とは?
私が指摘してきた市場全体の調整は2週目も続きました。
ただし、その実態を理解するにはS&P500の内訳を見る必要があります。
投資家が「マグニフィセント7」と呼ばれる大型テクノロジー株に資金をシフトしており、それが指数全体の悪化を覆い隠しているからです。
実際、株価が下落した銘柄の数が上昇した銘柄を上回る状況が10営業日連続で続いており、これは2001年以来のことです。
その影響で、イコールウェイト型S&P500(RSP)は12月に入って2日を除くすべての日で下落し、11月末の史上最高値から3%以上の調整となっています。
一方で、ナスダック総合指数は先週初めて20,000を突破し、新たな史上最高値を記録しました。
(出所:Edward Jones)
これによって、過熱気味だった市場のテクニカルな状態は大きく改善され、年末に向けた最後の上昇局面に向けた準備が整ったと言えます。
ただし、その動きは今週のFOMC会合でパウエル議長が何を語るかに左右されるでしょう。
0.25%の利下げは既定路線ですが、来年の金融緩和のペースはこれまでの想定よりも緩やかになる可能性があります。
直近のインフレ指標を見ると、FRBの2%目標への進展が第4四半期に足踏みしていることがわかるからです。
コアCPI(消費者物価指数)は過去3か月間3.3%で横ばいとなり、10月のコアPCE(個人消費支出価格指数)は2.8%に上昇しました。
11月のデータはFRB会合後に発表されますが、私はそれほど懸念していません。
統計重視派の見解
デフレ傾向は続くものの、物価は依然として目標を上回り、悩ましい水準にとどまっている。
(出所:Bloomberg)
インフレ指標が高止まりしている主な原因は住居費であり、指数上昇の大部分を占めています。
ただ、明るい兆しもあります。
先月の住居費の上昇率は0.2%と、2021年1月以来で最も小幅な伸びにとどまり、年率換算でも5%を下回りました。
しかし、この数値は計算に使われるデータの遅れにより、実際よりも過大に評価されているのが現状です。
先月、住宅インフレはさらに大きく鈍化しました
持ち家相当賃料の前年比および前月比の変動
(出所:Edward Jones)
新規の賃貸契約データでは住居費が前年から下落していることが示されていますが、現在の賃貸契約全体の平均価格がその水準に反映されるまでには数か月かかります。
こうした動きは今後数か月間、インフレ率全体を押し下げる要因となるはずであり、FRBが金融緩和を進める余地を与えるでしょう。
前年比の変動:Apartment List賃料指数、賃料CPI、そして総合CPI
(出所:Apartment List)
第4四半期にインフレ改善の兆しが見られなかったことに加え、1月に発足する新政権が導入する可能性のあるインフレを引き起こす政策が、FRBの利下げ判断を慎重にさせるのではないかという懸念があります。
また、これが経済成長率や失業率、インフレ率、さらには2025年以降の政策金利見通しの調整にも影響を与えるかもしれません。
これらの調整は、今週の金利決定とともに発表される「経済見通し要約(SEP)」の半年ごとの更新で明らかになるでしょう。
もし市場の期待と大きく異なる内容となれば、市場全体の調整局面がさらに続く可能性があります。
一方で、パウエル議長はインフレの動向に対する懸念を和らげ、経済の拡大が続いていることから、FRBが利下げを急ぐ必要はないと強調すると考えています。
インフレ率は2%の目標に向かって進んでおり、2025年には経済が穏やかに減速する「ソフトランディング」を迎えるという見通しを示すでしょう。
イコールウェイト型S&P500で見た平均株価は現在、50日移動平均線まで下落し、2週間前に見られた過熱感は解消されました。
この50日移動平均線は、過去1年間の上昇トレンドにおいて安定したサポートとなってきました。
もちろん、一時的にこの水準を下回ることも考えられますが、これまでのパターンでは比較的早く反発しています。
今週のFRB会合が、年末に向けて平均株価をもう一段押し上げるきっかけになると期待しています。
インベスコS&P・500イコール・ウェイトETF(RSP)の株価推移
(出所:Stockcharts)
ただし、今回の市場全体の調整局面で恩恵を受けた銘柄については、そうも言えません。
マグニフィセント7は12月前半にかけて揃って史上最高値を更新し、2週間前に平均的な株で見られたのと同じ過熱感が生じています。
この過熱感は、今後数週間で時間の経過と価格調整の組み合わせによって解消される可能性が高く、短期的には時価総額加重型指数の上値が抑えられるでしょう。
また、新年を迎えるにあたり、ポートフォリオの流動性を確保しておくことが何よりも重要だと考えます。
新政権が1月下旬に発足することで市場の期待は非常に高まっており、時価総額加重型指数のバリュエーションも依然として高水準にあります。
そのため、何らかの逆風が生じれば、市場では大きな価格調整が起こる可能性があるのです。
そうした局面でチャンスを掴めるよう、しっかりと準備を整えておきたいと思います。
Roundhill Magnificent Seven ETF(MAGS)の株価推移
(出所:Stockcharts)
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