恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)とは?恐怖と貪欲指数の足元の極端な恐怖への偏りは相場反転のサイン?
ローレンス・ フラー- 本稿では、「恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)とは?」という基礎的な内容に加え、足元で「恐怖と貪欲指数」の極端な恐怖への偏りが示唆する内容、並びに、今後の米国株見通しに関して詳しく解説していきます。
- 米国株式市場は調整局面が続いているが、経済基盤は健全であり、S&P500の50日移動平均線を上回る銘柄割合や投資家心理指標からも反転の兆しが期待されています。
- 労働市場の堅調さや第3四半期の経済成長率の上方修正、既存住宅販売の増加など、経済指標は強気相場の継続を支持する要因となっています。
恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)の極端な恐怖への偏りは強気相場継続のサイン
今週の米国株式市場では喜べるようなニュースはほとんどありませんでしたが、1974年以来となる最長連敗記録をようやく止めたのが唯一の救いでした。
12月これまでの展開を考えれば、この程度の損失で済むならありがたいと感じます。
月初、買われ過ぎのテクニカルな状態を解消するため、必要な調整局面が始まりました。
しかし、その調整は、FRB当局者が2025年の経済と金融政策の見通しをわずかに修正したことへの過剰反応でさらに深刻化しました。
そこに追い打ちをかけているのが、議会が政府の支払いをあと3か月分賄う予算案を通せないという信じられない事態です。
まるで支払いが滞るかのように振る舞っていますが、そんなことはあり得ません。
この3つの出来事が重なるタイミングは最悪ですが、それが私たちに与えられた現実です。
さらに厄介なのは、2年間の強気相場でようやく静かになっていた弱気派(ベア)が再び姿を現し、いつものように調整局面でネガティブな空気を煽っていることです。
でも、彼らの言葉に振り回される必要はありません。無視するのが一番です。
株式市場で「トランプトレード」が勢いを失いつつある
高金利が長期間続く見通しが株価の重しに
(出所:Bloomberg)
市場は現在、極端な売られ過ぎの水準に近づいており、反転するには大きな要因は必要なさそうです。
なぜなら、経済の基礎的なファンダメンタルズが健全だからです。
上記のチャートは、私が特に信頼している短期的なテクニカル指標の一つで、この見解を裏付けています。
S&P500の構成銘柄のうち、50日移動平均線を上回る銘柄の割合は通常、70%から30%の間で推移します。
しかし、極端な状況ではこの範囲を超えることもあり、今回もその例に当たります。
ただし、こうした極端な状態が長く続くことはほとんどありません。
昨日の時点でこの割合は21%にまで低下しており、これは2023年10月の調整局面や、さらにその前の2023年2月の調整時以来の低水準です。
過去のパターンから見ても、この状況は近いうちに反転する可能性が高いと考えられます。
S&P 500銘柄の50日移動平均線を上回る割合
(出所:Stockcharts)
加えて、CNNの「恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)」によると、現在の投資家心理は極端に恐怖に偏っています。
恐怖と貪欲指数とは、投資家心理を「恐怖」または「貪欲」のどちらに傾いているかを数値化した指標です。
具体的には、いくつかの市場データをもとに構成され、算出されます。
そして、この指数は、米国の株式市場全体のセンチメントを示すことを目的としています。
算出に使用される7つの指標
1. 株価のモメンタム(Momentum)
S&P 500の現在の水準と、125日間移動平均との比較。
2. 株価の強気・弱気比率(Stock Price Strength)
52週高値を更新している銘柄数と52週安値を更新している銘柄数の比率。
3. 株価の幅広さ(Stock Price Breadth)
上昇株の取引量と下降株の取引量の相対比較。
4. プット・コール比率(Put and Call Options)
投資家のヘッジ活動を示すプットオプションとコールオプションの取引量の比率。
5. ジャンク債スプレッド(Junk Bond Demand)
投資家がリスクの高いジャンク債をどれだけ受け入れているかを測定。
6. ボラティリティ(Volatility)
VIX指数(恐怖指数)を基に市場の不安定性を測定。
7. 安全資産への需要(Safe Haven Demand)
株式と国債のリターンを比較し、安全資産への投資意欲を評価。
算出方法
各指標は個別に「恐怖」または「貪欲」を示すスコアとして計算され、0から100のスケールにマッピングされます。これらを平均して、最終的な指数が算出されます。
・0〜49: 恐怖(Fear)が支配的
・50〜100: 貪欲(Greed)が支配的
活用例
恐怖と貪欲指数は、投資家の心理が極端に傾いている状況を把握し、投資戦略を調整する際の参考になります。例えば:
・恐怖が高い: 市場が過度に弱気で割安な投資機会がある可能性。
・貪欲が高い: 市場が過熱しており調整が近いリスクがある可能性。
この指数は、投資判断の唯一の基準ではなく、他の分析ツールと併用することが重要です。
そして、この指標は信頼性の高い逆張りの指標として知られており、足元の様な極端な恐怖への方よりは市場がピークに達している際には通常見られません。
恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)
(出所:CNN)
今年の8月と4月に、今回と同じような極端な恐怖の水準に達した際には、その後すぐに恐怖感が和らぎました。
これは、当時の経済基盤がしっかりしていたからです。
恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)
(出所:CNN)
過去1年間で恐怖感がピークに達したタイミング(つまり指数が底をつけた時期)は、8月と4月のS&P500が調整局面の底を打った時期と一致しています。
これは偶然ではありません。
S&P500大型株指数の推移
(出所:Stockcharts)
先週の新規失業保険申請件数は前週比1万件減の23万件と予想を上回り、労働市場が健全であることを示しました。
また、第3四半期の経済成長率は、消費者支出の強さを受けて2.9%から3.1%へ上方修正されました。
さらに、既存住宅販売は先月、前年同月比4.8%増の年率415万戸と、8カ月ぶりの高水準を記録しました。
加えて、コンファレンスボードの景気先行指数(LEI)は11月に0.3%上昇し、2022年2月以来初のプラスとなりました。
これらの状況は弱気相場を支える要因とは言えません。
現在は調整局面の最中にあり、強気相場3年目の始まりである今、投資家にとって再び買いのチャンスが訪れているように見えます。
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