01/22/2025

トランプによる関税引き上げはいつなのか?関税を引き上げた場合には米国経済はどうなるのか?

man wearing Donald Trump mask standing in front of White Houseローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「トランプによる関税引き上げはいつなのか?」、「関税を引き上げた場合には米国経済はどうなるのか?」という疑問に答えるべく、就任後のトランプ氏の行動と関税引き上げ時の影響を詳しく解説していきます。
  • トランプ大統領が関税の導入を即決しなかったことから、米国株式市場は上昇し、中国との対話姿勢が市場に安心感を与えているように見えます。
  • 関税は実質的に低所得層や中間所得層に負担を与える性質があり、経済成長を阻害する要因とされるため、市場では懸念視されています。
  • 米国株の決算シーズンは強気相場を支え、特にテクノロジーセクターが注目される一方、平均的な銘柄の収益成長が投資妙味を増していると考えています。

トランプ大統領による関税が懸念よりも厳しくないため米国株は上昇?

トランプ大統領の就任初日、主要な株式市場の平均値が大幅に上昇しました。

これは、大統領が貿易相手国に対して直ちに関税を課す決定をしなかったことが主な要因だと考えられます。

特に、大統領選挙中に噂されていた中国からの輸入品に対する最大60%の関税が、現時点では実現しない可能性が高く、大統領が中国の習近平国家主席との「会談や電話協議」を行う意向を示していることが背景にあります。

トランプ大統領が今後突然方針を変更する可能性もありますが、貿易問題において冷静な判断が優先されているため、市場が好調なスタートを切ったといえます。

関税の脅威は、貿易協定の再交渉を有利に進めるための交渉手段として使われているに過ぎないと考えます。

(出所:Finviz

ウォール街で関税を支持する人はほとんどおらず、メインストリート(一般市民)で関税が良い考えだと思っている人々も、その仕組みについて誤解しています。

関税を支払うのは中国やメキシコ、カナダではありません。

むしろ、これらの国々から多くの商品を輸入して消費者に販売するアメリカ企業(例:ウォルマート)が関税を負担することになります。

通常、この追加コストの全額または一部は消費者に転嫁されます。

したがって、関税は実質的に一般のアメリカ家庭に対する税金と変わりませんが、低所得層や中間所得層の家庭に特に大きな負担を与えるという意味で、逆進的な性質を持っています。

このため、連邦準備制度理事会(FRB)の関係者は経済見通しに対して懸念や慎重な姿勢を示しているのです。

S&P 500、2025年の上昇基調を拡大

(出所:Bloomberg

トランプ大統領が2月1日からカナダからの輸入品に25%の関税を課す決定を下した場合、カナダ政府は約1,050億ドル相当のアメリカ製品に同様の25%の報復関税を課すと表明しています。

同様の措置をメキシコも示唆しており、これが貿易戦争を招く可能性があります。

さらに、アメリカがカナダから輸入している原油は1日あたり約400万バレルにのぼり、国内の精製所が処理する原油の5分の1以上を占めています。

このような輸入品に25%の税を課せば、アメリカ国内の消費者が支払うガソリン価格は大幅に上昇するでしょう。

また、精製所やパイプラインの立地条件から、国内産の原油に切り替えるのは簡単ではありません。

こうした状況を考慮すると、トランプ大統領がこの関税を本当に導入する可能性は低いと考えます。

代わりに、両国からの不法移民を制限する新たな計画の進展を発表するのではないかと予想します。

トランプ大統領とその顧問たちは、金融市場の動きを日々綿密に観察しています。

市場がアメリカの主要な貿易相手国に関税を課すという考えを嫌っているのは明白です。

多くの経済学者や市場戦略家の共通認識として、関税はインフレ要因となり、経済成長を阻害する逆風と見なされています。

そのため、こうした発言は現実的な政策というよりも、主にレトリック(修辞表現)に過ぎないと確信しています。

一方で、決算シーズンは依然として強気相場を支える大きな追い風となっており、まだ始まったばかりです。

現在までにS&P500の構成銘柄の10%が決算を発表しましたが、その内容は予想を平均10%も上回っており、非常に好調です。

これは主に金融株の貢献によるものですが、次に注目されるのはテクノロジーセクターです。

昨夜の取引終了後に発表されたネットフリックス(NFLX)の決算では、約1,900万人もの有料加入者数の急増が報告され、市場予想の2倍に達する驚異的な結果を示しました。

S&P500の利益成長率(前年同期比):2025年第1四半期~第4四半期

(出所:FactSet

舞台裏でより重要な話題だと私が考えるのは、いわゆる「マグニフィセント7(素晴らしい7銘柄)」ではない銘柄群の方が、連続的な収益成長がより良好になるだろうという点です。

現在の市場の期待もその方向に向かっており、これが示唆するのは、平均的な銘柄が昨年よりもはるかに良いパフォーマンスを実現するだろうということです。

ただし、平均的な銘柄がマグニフィセント7を上回るとまでは言い切れませんが、バリュエーション(株価評価)がより妥当であるため、私の視点ではリスクとリターンのバランスが格段に優れていると感じています。

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アナリスト紹介:ローレンス・フラー

📍米国マクロ経済担当

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