DeepSeekショックとは?エヌビディアの株価は17%の急落でAI・半導体バブルは調整へ?
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- 本稿では、AI業界で注目を集めている「DeepSeekショックとは?」という疑問に答えるべく、エヌビディアの株価が17%急落したことに表れている通り、足元のAIと半導体セクターの調整、並びに、今後の米国株見通しに関して詳しく解説していきます。
- 中国企業DeepSeekが低コストかつ高効率なAIモデルを開発し、AIセクターの過剰なバリュエーションに疑問を投げかけ、エヌビディア株価が急落する要因となりました。
- テクノロジーセクターの一部銘柄のバリュエーションが異常に高い一方で、利益成長率が減速している「マグニフィセント7」がS&P500全体に与える影響が懸念されています。
- S&P500のイコールウェイト型指数が時価総額加重型指数を上回る可能性があり、利益成長率の上昇が期待される銘柄に注目する好機とされています。
DeepSeek、ついに米国株式市場のAIバブルを調整へ?
テクノロジーセクターの過剰なバリュエーションについての警告は、ここ数カ月間、投資家に向けて降り注いでいました。このセクターの中でも特に人工知能(AI)の開発に関与する銘柄ほど、そのバリュエーションが不合理なまでに高騰しています。この非合理的な熱狂はエネルギーセクターにも波及し、電力需要の増加への期待や、量子コンピューティングに焦点を当てた企業がAI開発を支える可能性があるとの思惑から、同様の状況が生じました。確かにAIは非常に魅力的な新たな投資テーマであり、その可能性は非常に長期的に広がっています。しかし、特に主要なテクノロジー関連銘柄の利益成長率が減速する中で、そのバリュエーションは持続可能ではありませんでした。私自身、この現象を、市場全体が妥当な評価を保っている中で発生した「ミニバブル」と捉えています。
(出所:Finviz)
そんな中、昨日DeepSeekがこのバブルに針を刺しました。この新興の中国企業は、ChatGPTに匹敵するオープンソース型のAIモデルをわずか数か月、たった600万ドルの費用で開発したとされています。このモデルは開発コストが大幅に低いだけでなく、消費電力もはるかに少ないという特徴を持っています。この事実は、AI技術を進展させるために必要だとされていた5,000億ドル規模の投資ファンド「The Stargate Project」の必要性に疑問を投げかけるものです。また、エヌビディア(NVDA)のプロセッサーやデータセンター、さらにはエネルギー需要の無限の拡大という見方も覆す可能性があります。案の定、エヌビディアの株価は17%も急落し、時価総額で6,000億ドルもの損失を出しました。
急成長中の半導体メーカー、2020年3月以来最悪の一日を迎える
(出所:Bloomberg)
しかし、本当の話はここからです。単に新興企業が登場し、エヌビディアがこれまで考えられていたほどの支配力を持たないことが明らかになり、より効率的なオープンソース型AIモデルが経済や生産性全体にとって良いニュースであるという話ではありません。それよりも、テクノロジーセクター全体の一部の銘柄のバリュエーションがいかに馬鹿げたものであるかが問題です。私は売上高の10倍を超えるバリュエーションを持つ株には一切手を出しません。しかし、このセクターでは100倍を超える銘柄が存在します。さらに、「マグニフィセント7(華麗なる7銘柄)」の利益成長率が減速している点にも注目すべきです。この点については、以下に示した私の「2025年市場見通し」からのチャートでも指摘しました。
S&P 500の利益成長率(前年比):2024年~2025年
(出所:FactSet)
昨日、同様のデータを四半期ベースで追ったバージョンを見つけました。結論としては、成長率がどのレベルであろうと減速している状況は、バリュエーションが拡大する条件にはならないということです。実際には、こうした状況ではバリュエーションが下落するのが通例です。これは、時価総額加重型指数であるS&P500にとって悪いニュースです。なぜなら、指数全体の価値の3分の1以上が上位10銘柄に依存しているからです。一方で、残りの493銘柄については、上記のデータが示すように、利益成長率が大幅に増加すると予想されています。
「マグニフィセント・セブン」の利益成長が鈍化
(出所:Bloomberg)
利益成長率の上昇が見られることから、今年はイコールウェイト型のS&P 500(RSP)が時価総額加重型のインデックス(SPY)を上回るパフォーマンスを見せる可能性があります。この見解は昨年にも述べましたが、時期尚早でした。しかし、今年は「DeepSeek」が、過去2年間に見られたパフォーマンスの差を大幅に縮小するきっかけになると考えています。インデックス内には、利益成長率が上昇しつつ、インデックス全体の水準を大きく下回る倍率で取引されている銘柄が多数あります。これらが、この強気相場の3年目における投資家にとっての好機となると見ています。
インベスコS&P・500イコール・ウェイトETFの株価推移
(出所:Stockcharts)
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