トランプ関税による米国市場の株価への影響とは?米国国内市場に焦点を当てたラッセル2000指数(IWM)に注目!
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- 本稿では、「トランプ関税による米国市場の株価への影響とは?」という疑問に答えるべく、関税の詳細、並びに、私が米国国内市場に焦点を当てたラッセル2000指数(IWM)に注目する理由に関して詳しく解説していきます。
- トランプ大統領の関税政策により、カナダやメキシコとの貿易戦争が本格化し、米国の経済成長に悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、株式市場の不安定さが増しています。
- 関税の影響で輸入コストが上昇し、インフレ率が最大0.7%押し上げられると予測されています。企業の生産コスト増加や消費者物価の上昇が懸念され、市場は過剰反応する可能性があります。
- FRBの金融政策や市場の動向次第では、関税措置が緩和される可能性もありますが、短期的には市場のボラティリティが高まり、投資家は慎重な対応が求められるでしょう。
トランプの貿易戦争の影響について
先週の市場は、テクノロジーセクターの大幅な売りから始まりました。特に市場の人気銘柄であるエヌビディア(NVDA)が大きく下落しました。その要因となったのは、中国の新興企業が「DeepSeek」というオープンソースのAIモデルを開発したというニュースです。このモデルはChatGPTの強力な競争相手となる可能性が指摘されています。特に懸念されているのは、このAIが極めて低コストかつ省電力で開発されたとされている点です。これにより、将来的なプロセッサやエネルギーの需要に対する疑問が生じ、過去1年間で大きく上昇していた半導体企業やエネルギー関連企業の株価が急落しました。しかし、週の後半にかけては、予想を上回る企業決算や堅調な経済指標を受けて、市場全体が月曜日の損失をある程度取り戻しました。
(出所:Edward Jones)
インフレ指標と経済成長の動向 FRB(米連邦準備制度)が重視するインフレ指標は、12月に2.8%で横ばいとなりましたが、3カ月平均の年率換算では2.2%に低下しました。また、第4四半期のGDP成長率は年率2.3%と発表されました。しかし、実際の経済成長はこの数字よりも強く、在庫の減少が約1%ポイント押し下げたものの、個人消費は2021年末以来最高の+4.2%の成長を記録しました。この流れを受け、S&P500は史上最高値に迫る勢いを見せていました。しかし、金曜日の午後にトランプ大統領が突然発表した声明を受け、市場は再び急落しました。
関税懸念で株式市場に逆風
(出所:Bloomberg)
トランプ大統領の関税発表
トランプ大統領は、カナダおよびメキシコからの全輸入品に対して25%の関税を課すとともに、既存の中国製品への関税を10%引き上げると発表しました。この新たな貿易政策により、800ドル以下の輸入品に適用されていた免税措置も撤廃されます。さらに、カナダからのエネルギー輸入には10%の関税が課されることになります。これに対し、カナダは米国からの輸入品1,550億ドル相当に対し25%の報復関税を課すと発表し、メキシコも同様の対応を示唆しています。こうして、貿易戦争が本格化する形となり、トランプ大統領はさらなる関税措置も計画していることを示唆しました。これにより、米国の3大貿易相手国に対する関税は、年間1兆2,000億ドルを超える輸入品に影響を与えることになります(2023年の米国商務省のデータより)。
(出所:CNN)
投資の観点から見た関税の影響
政治的な要素はさておき、投資の観点から見ると、このニュースは好ましいものではありません。そのため、月曜日の市場では株価が大きく下落する可能性が高いです。エコノミストのコンセンサスでは、これほど厳しい関税措置は年率換算の経済成長率を1%以上押し下げ、インフレ率を最大0.7%押し上げると予想されています。仮にこれらの見積もりが誇張されていたとしても、FRB(米連邦準備制度理事会)が借入コストの引き下げを継続することは困難になるでしょう。
また、サプライチェーンの大きな混乱が生じ、それによってコストが増加することが予想されます。企業は原材料の仕入れコストが上昇し、消費者も食料品、ガソリン、日用品などの価格上昇に直面することになります。さらに、関税の影響でメキシコが景気後退に陥れば、経済的に困窮した人々による違法な国境越えが増加する可能性もあります。報復関税は、これらの国々へ輸出を行っている米国企業に悪影響を及ぼすだけでなく、メキシコやカナダの経済成長の鈍化もまた、米国内の企業活動に悪影響を与えるでしょう。
長期的に見てこの政策が良いか悪いかは別として、短期的にはこれらの影響が確実に生じることになります。
影響を緩和する要因:米ドルの強さ
あまり議論されていませんが、一つの緩和要因として米ドルの相対的な強さがあります。もし米ドルが貿易相手国の通貨に対して上昇すれば、米国企業がカナダ、メキシコ、中国でより多くの製品を購入できるため、関税によるコスト上昇をある程度相殺することが可能です。
市場の反応と今後の展開
私の見解では、市場は最初に過剰反応する可能性が高く、それがトランプ政権に再考を促すきっかけとなるかもしれません。もし市場や経済への悪影響が長引き、消費者や投資家の心理が悪化すれば、関税の一部が緩和または撤回される可能性もあります。その場合、リスク資産の価格は急回復する可能性が高いでしょう。ただし、この政策変更がいつ起こるかは不透明であり、数日以内に変更される可能性もあれば、数週間から数カ月かかる可能性もあります。さらに、貿易戦争がさらに激化する可能性も排除できません。
そのため、私はインフレ率、消費支出、経済成長、企業利益に対する影響を確認するため、最新の経済データを注意深く監視するつもりです。とはいえ、私はこの貿易政策が景気後退を引き起こしたり、強気相場を終わらせることにはならないと考えています。経済成長の基盤は依然として強固であるため、大型市場指数がさらに調整する場面があれば、それは買いの好機となるでしょう。
インフレ動向とFRBの政策
個人消費支出(PCE)価格指数のコア指数は先月0.2%上昇し、年率換算のインフレ率は2.8%で変わりませんでした。今後、住宅費用の影響でこの数値はFRBの目標である2%に近づくと予想されますが、一方で、生産者や消費者の物価上昇が進行し、デフレ傾向が逆転する兆しが見られるかどうかを注視する必要があります。もしそうなれば、FRBは短期金利をより長期間にわたり高止まりさせる必要があるでしょう。
この点は市場にとって逆風となる可能性がありますが、短期的には大きな影響を与えないでしょう。なぜなら、こうした影響が顕在化するのは、現在の在庫が消化された後の数カ月先になるためです。
消費支出の成長率と貿易戦争の影響
FRBが重視するインフレ指標は2.8%で横ばい
コアPCEの3カ月年率は減速傾向
(出所:Bloomberg)
実質個人消費の前年同月比成長率は、12月に3%となりました。これは米国経済の成長を支える主要な原動力です。では、この貿易戦争が国内消費にどのような影響を与えるのでしょうか?現時点では明確には分かりませんが、私の直感では実質成長率は鈍化するものの、景気拡大を阻害するほどの水準にはならないと考えています。これは、強気相場が継続するために最も重要なポイントです。
実質個人消費支出
(出所:FRED)
最も注視する指標:ラッセル2000指数(IWM)
私が最も注目しているのは、国内市場に焦点を当てたラッセル2000指数(IWM)の動向です。この指数は、今回の貿易政策の最大の恩恵を受ける可能性があると見ています。本日の取引開始直後は大きな下落が予想されますが、長期的な上昇トレンドが200日移動平均線に沿って維持されるかどうかを注視しています。もしこのトレンドラインを割り込むようであれば、良い兆候とは言えません。
iシェアーズ・ラッセル2000 ETFの株価推移
(出所:Stockcharts)
投資戦略における適応力
今回の貿易政策について、私自身の政治的な意見は述べません。なぜなら、投資戦略の観点では重要ではないからです。投資家として最も重要なのは、与えられた市場環境の中で最適な戦略を立て、適応していくことです。そのため、月ごと、四半期ごと、年ごとに投資戦略を調整しながら対応することが求められます。
最も避けるべき投資の失敗は、「何が起こるべきか」に基づいて投資することです。「何が最も起こりやすいか」を見極め、それに基づいて行動することが成功への鍵です。
今週の米国経済指標
今週は、企業決算が多く発表されるため、非常に忙しい一週間となります。加えて、金曜日には雇用統計の発表があり、ISM製造業・サービス業のPMI(購買担当者景気指数)も公表される予定です。しかし、市場の焦点は、やはり新たな貿易政策にどのような影響が出るかに集まるでしょう。
(出所:MarketWatch)
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