02/04/2025

トランプは関税延期で米国株は上昇も、30日の猶予期間後に関税は実施されるのか?その可能性と今後の米国株見通しに迫る!

man wearing Donald Trump mask standing in front of White Houseローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、トランプ大統領による関税延期で米国株は上昇した一方で、「30日の猶予期間後に関税を実施するのか?」という疑問に答えるべく、その可能性と今後の米国株見通しを詳しく解説していきます。
  • トランプ大統領の関税発表を受け、米国株式市場は大きく変動しましたが、その後の関税延期決定により市場は回復しました。
  • しかし、関税を巡る不確実性が投資家・消費者・企業の心理に悪影響を与え、市場の信頼が揺らいでいます。
  • 最終的に関税が実施される可能性は低いものの、経済への影響は大きく、S&P500企業の利益減少やインフレ懸念が続いています。

トランプ大統領による関税の米国株への影響とは?

昨日の米国株式市場は大きく揺れました。週末にトランプ大統領が、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、中国からのすべての輸入品に対しても10%の関税を課すと発表したことを受けたものです。これらの関税は本日から適用される予定でした。仮に1日遅れの実施が市場の反応を確認するためだったとすれば、その答えは明白です——これは経済的に全く理にかなっていません。昨日の記事でも述べた通り、我々の最大の貿易相手国であり、同盟国でもある国々に懲罰的な関税を課せば、経済成長率は抑制され、企業や消費者にとってはインフレが懸念される中で価格上昇を招くことになります。また、米連邦準備制度(FRB)による金融緩和のさらなる余地も失われる可能性が高いです。こうした背景から、昨日の市場開始直後にリスク資産の価格が急落しましたが、これはトランプ政権にとっても驚きだったかもしれません。

(出所:Finviz

また、昨日の朝、市場は過剰反応する可能性があり、それが大統領に再考を促すきっかけとなる可能性があると指摘しました。その結果、新たな展開を受けて関税の撤回や縮小が行われるかもしれません。ただし、こうした流れが数日から数週間かかると考えていましたが、実際には数時間で事態が動きました。トランプ大統領がメキシコのシェインバウム大統領との協議後、メキシコからの輸入品に対する25%の関税を30日間延期することを決定したと報じられると、市場の主要指数は本格的に回復を始めました。その後、市場終了後には、カナダからの輸入品に対する25%の関税も30日間延期されることが報じられ、夜間取引では月曜日の損失をほぼ取り戻す形となりました。しかし、その代償は決して小さくありません。

S&P500、関税緩和への期待で下げ幅を縮小

(出所:Bloomberg)

30日の猶予期間がもたらす影響

私たちは、今後30日間は関税の脅威を一時的に回避できるかもしれませんが、この不必要な混乱には大きなコストが伴います。まず、投資家心理への影響です。市場が大統領の不用意なツイート一つで急落する可能性があるという事実が改めて浮き彫りになり、投資家の信頼が損なわれています。次に、消費者心理への影響です。アメリカの一般家庭は、今後数カ月間にガソリンや食品、その他の必需品の価格が上昇するのではないかと不安を抱えることになり、その結果、裁量的支出(ディスクリショナリー・スペンディング)が抑制される可能性があります。そして、最も深刻なのが企業心理への影響です。事業者は、今後の不確実性に直面しながら経営を続けなければならず、それが設備投資や雇用計画を抑制する要因となります。特筆すべきは、市場取引時間中にメキシコに対する関税の延期が発表されたにもかかわらず、インフレ期待の上昇が完全には元の水準に戻らなかったことです。

関税を巡るインフレ市場の急転換

メキシコへの関税延期で市場の不安は和らいだものの、ブレークイーブン・インフレ率は2年ぶりの高水準に留まる

(出所:Bloomberg)

この状況は決してゲームではありませんが、まるでゲームのように扱われているのが残念です。関税の30日間の延期と引き換えに、メキシコとカナダの両国は、不法入国の防止とフェンタニルの流入阻止に向けた国境警備の強化に同意したようです。しかし、トランプ大統領は移民問題、フェンタニル問題、そして貿易赤字を同じ文脈で語ることが多いため、30日後には貿易赤字が新たな対立の火種となる可能性があります。市場が最も嫌うのは「不確実性」です。そして今、私たちはまさにその不確実性の中にどっぷりと浸かっている状態です。

トランプ大統領は関税を本当に実施するのか?

最終的に、トランプ大統領がカナダやメキシコに対して関税計画を強行するとは考えにくいです。なぜなら、関税が経済や市場に与える悪影響は広く認識されており、大統領がその責任を回避するのは困難だからです。すでに中国は、米国からの約200億ドル相当の輸出品に対して10%の関税を課すと発表しています。ゴールドマン・サックスは、もし25%の関税が実施されれば、GDP成長率を0.4%押し下げ、コアインフレ率を0.7%押し上げると指摘しました。その影響で、S&P500企業の今年の利益が2〜3%減少する可能性も示唆されています。さらに、私が前述したような波及効果を考慮すれば、その影響はさらに深刻なものとなるでしょう。なぜなら、関税を支払うのは企業や消費者であり、決して「他国」ではないからです。


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