02/05/2025

トランプによる関税引き上げの株価への影響とは?関税政策の成果を測る指標としてISMとPMIに注目!

red and blue light streaksローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、トランプ新大統領による関税引き上げの株価への影響、並びに、関税政策の成果を測る上で私が注目する指標とその理由を詳しく解説していきます。
  • 米国の貿易政策の成果を測る指標として、ISMやS&Pグローバルの製造業PMIに注目しており、特に2025年はこれらの指標をより重要視しています。
  • 製造業PMIは1月に50を超え、新規受注や生産の回復が確認されました。これにより、企業の信頼感が向上し、雇用の拡大も進んでいます。
  • 関税政策は鉄鋼業界に複雑な影響を及ぼし、国内メーカーに利益をもたらす一方で、自動車価格の上昇などの副作用も懸念されています。

トランプ大統領による関税政策の米国株への影響を測るための重要な指標とは?

昨日、関税を巡る緊張が和らぎました。トランプ大統領が発表した10%の関税に対し、中国の対応が予想よりも穏やかだったことを受け、投資家は交渉の進展が期待できると判断しました。その結果、市場の主要な株価指数は月曜日の下落から回復を続けています。

今週は貿易政策が大きな焦点となっていますが、私はその成果を測るための最良の指標について考えています。貿易政策の主な目的は、米国の主要な貿易相手国との貿易赤字を削減し、製造業の活動と雇用を国内に取り戻すことです。その成果を測るための指標として、私は米国供給管理協会(ISM)およびS&Pグローバルが発表する月次の購買担当者景気指数(PMI)を重視しています。今年は例年以上にこの指標を注視していくつもりです。

(出所:Finviz

製造業の回復が貿易政策の成果を示す

パンデミック後の景気回復は主にサービス業によって支えられてきました。消費者は旅行や外食、パンデミック中に制限されていた体験型の消費に積極的に支出してきたためです。一方、2020年のパンデミックによる景気後退後、一時的に活発化した製造業は、その後停滞が続いていました。しかし、最近になってようやく回復の兆しが見え始めています。

事実、ISMの製造業PMIは1月に26か月ぶりに50の分岐点を超え、製造業の景気が拡大と縮小の境界線を超えたことを示しました。指数は12月の49.2から1.7ポイント上昇し、50.9に達しました。

(出所:ISM

特に、新規受注指数(New Orders Index)は55.1と最も高く、3か月連続で拡大を記録しました。また、生産指数(Production Index)も52.5に上昇し、8か月ぶりに拡大へと転じました。これは需要と生産の両方が、全体の指数を押し上げたことを意味します。

さらに、雇用指数(Employment Index)も50.4に上昇し、8か月ぶりに50を上回りました。これは、トランプ政権が進める規制緩和と成長促進策に対する企業の期待感を反映している可能性があります。

企業の信頼感が回復し、雇用拡大の兆し

S&Pグローバルの製造業PMIでも、1月には景気拡大が確認され、企業の信頼感が大きく改善しました。指数は7か月ぶりに50を超え、51.2まで上昇しました。

生産と新規受注が再び成長軌道に乗ったことに加え、1年先の景気見通しに対する楽観的な見方が34か月ぶりの高水準に達しました。企業は、新政権の下でビジネス環境が大きく改善すると期待しているのです。その結果、雇用創出のペースも昨年6月以来の高水準に達しました。

(出所:S&P Global

関税の影響―鉄鋼業界の事例

関税が本来保護すべき国内産業にどのような影響を及ぼすかについては、鉄鋼業界が一つの例となります。仮に輸入鉄鋼に関税が課されれば、国内の鉄鋼メーカーであるクリーブランド・クリフスのような企業は恩恵を受けるかもしれません。しかし、実際には米国の鉄鋼業界はメキシコ向けの輸出が多く、カナダとの貿易赤字も小規模です。この2か国が米国の鉄鋼輸出の大部分を占めているため、国内市場でのシェア拡大の一方で、貿易相手国への輸出が減少する可能性があります。

さらに、クリーブランド・クリフスが生産する鉄鋼の多くは自動車産業向けであり、鉄鋼価格の上昇は自動車価格の上昇につながります。その結果、消費者の自動車需要が減退し、関税によって刺激されるはずだった鉄鋼需要がむしろ縮小する可能性があります。


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