02/06/2025

マグニフィセント・セブン株の今後の見通しは険しい?大手テクノロジー企業の利益成長鈍化が目立つ中、小型株に資金がシフト!

a person holding two small black books with the words buy and sell on themローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「マグニフィセント・セブン株の今後の見通しは険しいのか?」という疑問に答えるべく、大手テクノロジー企業の最新の決算動向と足元で加速する市場でのローテーションに関して詳しく解説していきます。
  • 主要株式市場はハイテク株から他のセクターへの資金移動が進み、小型株が上昇を主導しました。これは「マグニフィセント・セブン」の利益成長鈍化と関連しています。
  • アルファベットの設備投資増加やAI関連売上の鈍化により、ハイテク株の下落が目立ちました。一方で、金融緩和を見越した景気敏感セクターへの資金シフトが進んでいます。
  • 米国の経済成長率は鈍化しているものの、インフレ抑制の観点では望ましい調整といえます。市場では一部のセクターに高リターンの可能性が残されていると考えられています。

マグニフィセント・セブン株の今後の見通しとは?中期的な減速が健全なローテーションをもたらす展開?

関税を巡る市場の動揺は一旦収束したようで、主要な株式市場指数は今週上昇し、昨日は特に小型株が主導しました。これは、投資家がハイテクセクターから他の市場セグメントへ資金を再配分していることを示唆しています。このようなローテーションは、実は昨年起こると予想していました。というのも、株式市場は経済イベントを事前に織り込む傾向があるからです。ここで指しているのは、いわゆる「マグニフィセント・セブン(Magnificent 7)」と呼ばれる時価総額1兆ドル規模の巨大企業群における利益成長率の鈍化です。この減速は、これらの主要企業だけでなく、それらと関連性のある他の大手ハイテク企業にも見られます。

(出所:Finviz

昨日、アルファベット(GOOG)の株価は7%下落しました。同社のクラウド部門の成長が市場予想に届かなかったことに加え、AI革命に対応するための設備投資が大幅に増加し、年間750億ドルに達すると発表されたことが懸念材料となりました。この額は、市場の予測である570億ドルを大きく上回るものでした。また、半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も決算発表後に株価を下げました。AI関連の売上成長の鈍化が警戒されたためです。ハイテク業界のリーダーたちは、新たなAIモデル「DeepSeek」を称賛していますが、その登場により、業界内でのインフラ投資の過熱が懸念されるようになりました。しかし、実際には「DeepSeek」の登場以前からすでに成長の鈍化は進行していました。

グーグルの業績は予想を下回ったものの、大きな差はなし

アルファベットの売上は増加したが、予想をわずかに下回る結果に

(出所:Bloomberg)

昨年の「マグニフィセント・セブン」の利益成長率は驚異的で、持続可能な水準ではありませんでした。企業の利益や売上の成長率が前年より鈍化すること自体は必ずしも悪いことではありません。しかし、それは現在の株価が極めて高い倍率で取引されていることに疑問を投げかけます。今後必要なのは、これらの企業が売上や利益の成長を通じて高いバリュエーションを正当化するための時間です。つまり、ここ2年間にわたり市場全体をアウトパフォームしてきた局面が終わることを意味します。

マグニフィセント7とS&P500

メガキャップ株の卓越した利益成長は、市場全体と比べると勢いを失いつつある

(出所:Bloomberg)

この動きは、いわゆる「中期的な景気減速(ミッドサイクル・スローダウン)」と同期しているように見えます。これは、現在のマクロ経済要因を考えると理にかなっています。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を引き締めた状態を維持してきましたが、昨年9月にようやくその方針が緩和され始めました。これは、インフレ率が2%の目標に近づきつつあるためです。市場では、FRBの金融緩和が続くことを見越して、より景気敏感なセクターへ資金をシフトする動きが加速しています。これにより、今年後半から来年初めにかけて経済成長率の再加速が期待されます。一方、年明けの経済指標はやや弱含んでいます。米供給管理協会(ISM)の非製造業景況指数(PMI)は、昨年12月の54.0から1月には52.8に低下しました。依然として拡大を示しているものの、そのペースは鈍化しており、生産と新規受注の活動が減速したことが影響しています。

ISM非製造業景況指数

(出所:TradingEconomics

同様の結果は、S&Pグローバルのサービス業PMIにも表れています。この指数は12月の56.8から1月には52.9に低下しました。一部の企業経営者は、全米各地での悪天候が要因の一つであると述べており、また別の企業は関税がビジネス活動に与える影響を懸念していました。S&Pグローバルのチーフエコノミストであるクリス・ウィリアムソン氏は、「製造業とサービス業のPMI調査結果を総合すると、1月のGDP成長率は年率1.6%であることが示唆される」と述べています。この成長率は、2024年通年の2.8%から大きく減速することになりますが、インフレ率を2%に戻すためには必要な調整とも言えます。また、私がここ2年以上予測してきた「ソフトランディング」シナリオが実現する可能性を高めるものでもあります。

S&P500が3年連続で20%以上のリターンを記録する可能性は低いかもしれませんが、それは「マグニフィセント・セブン」が指数内で大きな割合を占めていることが主な理由です。しかし、これまでの強気相場に十分参加できていないセクターの中には、それに匹敵するリターンをもたらす可能性のあるものもあると見ています。

サービス業PMI

(出所:TradingEconomics


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