02/20/2025

アメリカはインフレ?デフレ?どっちに向かっているのか?

black flat screen computer monitorローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「アメリカ経済はインフレ?デフレ?どっちに向かっているのか?」という疑問に答えるべく、足元のFRBメンバーによる発言やトランプ大統領による関税の影響に関して詳しく解説していきます。
  • S&P500は史上最高値を更新し、利益成長が広範な銘柄に広がる中、FRBは短期金利の据え置きを議論し、市場には債券利回りの低下が追い風となりました。
  • 市場全体が割高というわけではなく、特に金融セクターは利益率の向上が顕著で、適正なバリュエーションの銘柄を選ぶことでリスクを抑えた投資が可能です。
  • 金融政策や財政政策の憶測ではなく、実際のファンダメンタルズの変化に注目することが重要で、現状ではポジティブな変化が市場の上昇を支えています。

米国経済はインフレ、または、デフレ?

S&P500は昨日、新たな史上最高値を更新しました。しかし、その上昇を牽引したのはヘルスケアと生活必需品セクターであり、利益成長がより広範に広がり、多くの銘柄が強気相場に参加する形となりました。実際、年初来のパフォーマンスでは、S&P500を構成する11セクターのうち、テクノロジーセクターは8位にとどまっています。市場には債券利回りの低下も追い風となりました。FRBの1月会合の議事録が公表されたことで、利回りがやや低下したのです。予想通り、FRB当局者は短期金利を据え置く方針について議論し、インフレ率のさらなる低下が確認できるまで現状維持を続ける考えを示しました。現在の力強い経済が、そうした政策判断を可能にしていると言えます。

(出所:Finviz

しかし、FRBはトランプ政権の貿易政策がインフレに与える影響について懸念を示し、これが「デフレの進行を妨げる可能性がある」と指摘しました。この点について、私の立場は変わりません。また、FRBは「多くの地区の企業関係者が、関税の影響で上昇する原材料コストを消費者に転嫁しようとしている」との報告があったことにも言及しました。これはまさに関係者自身の発言です。さらに、新たな移民政策、財政政策、規制政策が経済に与える影響についても懸念が示されました。政策の詳細が不透明な状況では、金融政策の見通しを示すことは困難です。

こうした不確実性への懸念を和らげる要素として、FRBは債務上限問題が解決されるまで、バランスシートの縮小を一時停止、またはペースを鈍化させる可能性についても議論しました。この発言を受けて、債券利回りはわずかに低下しました。

S&P500が史上最高値を更新

(出所:Bloomberg)

現在、投資家は、まだ実施されていない財政政策の潜在的な逆風よりも、企業業績に注目しています。この業績の伸びこそが、市場全体を新たな史上最高値へと押し上げる原動力となっています。一方で、弱気派は年初から続く不透明感や、歴史的に高水準にあるバリュエーションに再び焦点を当て、警戒を強めています。しかし、彼らは3つの重要な点を見落としています。

まず第一に、バリュエーションは市場のタイミングを計る指標としては非常に不適切です。市場は高値圏にとどまり続けることが長期間にわたって可能だからです。

第二に、すべての銘柄が割高であるわけではありません。市場には、テクノロジーセクターを中心とした一部の領域に極端な割高感があるものの、多くの銘柄は適正な水準にとどまっています。そのため、賢明な投資家は、慎重に銘柄を選び、適正なバリュエーションのセクターや市場の分野に投資することで、リスクを回避できます。

第三に、最も重要なファンダメンタルズの変化率は引き続きプラスの方向に進んでおり、市場の上昇に対する抵抗が少ない状況が続いています。S&P500から「マグニフィセント7」を除いた銘柄群では、企業の利益成長率が一桁台の低成長から、二桁台の低成長へと加速しています。さらに、S&P500を構成する11セクターのうち、2つを除くすべてのセクターで利益率が拡大しています。この利益率の向上は、より高いバリュエーションを支える要因となっています。特に金融セクターは利益率の伸びが著しく、過去1年間で2番目に高いパフォーマンスを記録しています。

S&P500の純利益率:2024年第4四半期 vs 2023年第4四半期

(出所:DataTrek

金融政策や財政政策において「何が悪影響を及ぼす可能性があるか」や「もしこうなったらどうなるか」といった憶測にとらわれるのではなく、現在実際に起こっていることを分析し、それがファンダメンタルズのプラスの変化率にどのような影響を与えるかを見極める方が、はるかに有益です。もしこれらのポジティブな変化が続く限り、強気相場は維持されると見ています。


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