【マクロ経済】消費者信頼感指数は高いとどうなる?3か月前には「楽観的」と回答した人の割合は史上最高を記録も株価は下落?

- 本稿では、「米国の消費者信頼感指数は高いとどうなるのか?」という疑問に答えるべく、直近の同指数の動向の分析を通じて、今後の米国株の見通しを詳しく解説していきます。
- 2025年はテクノロジーセクター、とくにマグニフィセント7の下落がS&P500全体の調整を主導しており、イコールウェイト型インデックスへの資金シフトが進んでいます。
- 経済はサイクル中期の減速局面に入り、高金利の影響で成長ペースが鈍化していますが、FRBの緩和姿勢や非テック企業の好業績が下支えとなっています。
米国消費者信頼感指数は逆張り指標?
過去2か月間、私たちは関税に関する議論の泥沼にはまり込んできましたが、それによって、もともとは広範な市場における通常の調整局面だったものが、明らかに悪化しました。そこで私は、第2四半期を迎えるにあたり、一歩引いて大局を見ることから始めたいと思います。
S&P500は第1四半期を4.6%の下落で終え、これは過去3年間で最も悪い四半期の成績でした。また、ナスダック総合指数は10.2%下落しました。それでも年初は好調なスタートを切りました。選挙後に約束された減税や規制緩和への期待から、投資家たちは楽観的だったのです。
しかし彼らは、その前にまず緊縮財政措置や関税政策という、苦い薬を無理やり飲まされることになるとは予想していませんでした。これはまるで、目の前に置かれた芽キャベツとほうれん草の山盛りをすべて食べ終えるまで、キッチンで冷めていくフィレ肉やベイクドポテトに手をつけられない、そんな状況に似ています。投資家心理が冷え込んでいるのも無理はありません。
(出所:Finviz)
過去2か月間の貿易政策に関する交渉の不透明さと、その極めて無秩序な進め方は、確かに大きな不安と恐怖を引き起こしました。しかし私は、経済や市場においてそれ以前から存在していた基調的なトレンドが、トランプ政権によって新たに引き起こされたのではなく、むしろ悪化させられたのだと考えています。この点は非常に重要な違いです。
今回の調整局面で市場の下落を主導したのはテクノロジーセクターでしたが、これは貿易政策への不安や恐怖とはほとんど関係がありません。そしてここからが、その「基調的なトレンド」の1つ目に入るポイントとなります。
「大型ハイテク株の売りが加速」
2025年は、メガキャップ銘柄が市場全体の下落を主導
(出所:Bloomberg)
私たちは、いわゆる「マグニフィセント7(MAGS)」と呼ばれる主要な成長株から、それ以外の市場、つまりイコールウェイト型のS&P500指数(RSP)で最もよく表される銘柄群へのローテーションが起こるタイミングに差し掛かっていました。このローテーションが起こる背景には、2つの要因があります。
1つ目は、テクノロジーセクター、特にマグニフィセント7が主導する銘柄群のバリュエーションが過去最高水準に達していた一方で、それらの企業の利益成長率が持続不可能な水準から減速していたことです。2つ目は、マグニフィセント7を除いたS&P500銘柄の利益成長率が上昇していたことです。
この見通しを裏付けるために、私は昨年の夏、投資家の方々と以下のチャートを共有しました。
「1株当たり利益の過去実績と今後の予想成長率」
(出所:Bloomberg)
こうした背景が、今年テクノロジーセクターのパフォーマンスが大きく劣後し、その結果S&P500指数全体のパフォーマンスにも重しとなっている理由を説明していると考えます。マグニフィセント7は、今年に入ってからすでに合計で16%下落しており、過去最高値からは20%以上も下落しています。
「インベスコS&P・500イコール・ウェイトETFとMAGS ラウンドヒル・マグニフィセント・セブン ETFの変化率(%)」
(出所:Stockcharts)
次に挙げる基調的なトレンドの2つ目は、経済成長率の鈍化です。
経済拡大局面は通常、景気回復から始まります。回復期は、リセッションからの立ち直りを目的とした何らかの景気刺激策によって始まるため、サイクルの中でも最も力強い局面となる傾向があります。私たちがそれを目にしたのは、パンデミック後の2021年末から2022年初頭にかけての時期です。
現在の状況を最も的確に表しているのは、「サイクル中期の減速(ミッドサイクル・スローダウン)」だと私は考えています。これは、回復期の後に続く経済拡大局面で、成長は続くものの、そのペースがやや穏やかになる期間です。
現在の成長ペースの鈍化は、高金利が時間差をもって経済に影響を与えているためであり、その金利は今、低下しつつあります。このサイクル中期の減速を特徴づけているのは、マグニフィセント7以外のテクノロジー株を除いた企業の利益成長が強まっているなかで、FRB(米連邦準備制度)が再び経済を刺激し始めているという点です。
これは、2025年の強気相場を持続させる上で非常に力強い組み合わせであると言えるでしょう。
(出所:TradingEconomics)
経済成長率の年率換算は、昨年第4四半期に記録した2.5%から確実に鈍化し、1%に近い水準になると思われますが、これは関税発動前に駆け込みで輸入活動が急増したことが主な要因です。市場心理を損なっている恐怖と不確実性は、まだ実体経済に深刻な打撃を与えてはいません。ただし、これが今後も続けば確実に影響が出てくるでしょう。しかし、こうしたダメージを修復するための猶予期間は、まだ残されていると私は考えています。
このような背景もあって、イコールウェイト型のS&P500指数は10%の調整局面を回避し、3月中旬の安値よりも高い水準で底を打ったのではないでしょうか。
「インベスコS&P・500イコール・ウェイトETFの株価推移」
(出所:Stockcharts)
今年は、たとえトランプ政権がどのような政策を実施したとしても、テクノロジーセクターでは大きな調整が起き、経済成長率も鈍化するというのが避けられない見通しでした。そこに加えて、減税や規制緩和といった追い風がまだ現れる前に、関税や緊縮財政といった逆風を先に押し付けられたことが、マーケットの下落をより深刻なものにしたのです。
こうした状況では、すでに予想されていた経済成長の減速が、より早く、そしてより深刻になるのではないかという懸念が高まるのも当然です。それがどの程度になるかを判断するのは難しいものの、多くの人が最悪のシナリオを想定しているように見受けられます。
だからこそ、私は市場のセンチメント(投資家心理)を逆張り指標として捉え始めています。その視点から、私はコンファレンス・ボード(米民間調査機関)の消費者信頼感調査に注目したいと思います。この調査では、強気(=楽観的)と回答した人の割合が、史上最高を記録しました。まるで遠い過去の話のように感じられますが、実はこの調査が実施されたのは、わずか3か月前のことです。
それ以降の市場の動きを踏まえた上で、あなたはこの調査結果を「逆張り指標」と考えますか?
「コンファレンス・ボードの消費者信頼感調査:楽観的と答えた人の割合が過去最高に」
(出所:Bespoke)
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📍米国マクロ経済担当
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