04/07/2025

トランプショックはいつまで続くのか?ナスダック100は弱気相場入り!僅か2日で5.4兆ドルの資産が消失も今後の見通しは?

black flat screen computer monitorローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「トランプショックはいつまで続くのか?」という疑問に答えるべく、足元で進展するトランプ大統領による関税の詳細と株式市場への影響の分析を通じて、今後の米国株の見通しを詳しく解説していきます。
  • 米国の新たな関税政策は、市場に大きな混乱と損失をもたらしており、特に「相互性」を欠いた関税率の導入が投資家心理を悪化させています。
  • 継続的な関税導入が景気後退を招く可能性が高まっており、主要金融機関も成長率見通しを下方修正するなど、市場はすでに不況を織り込み始めています。
  • トランプ政権には、関税の緩和や撤廃に向けた「勝利」を演出できる出口戦略が求められており、今後数週間以内の政策転換が市場回復の鍵を握っています。

トランプショックはいつまで

先週、私は投資家が非常に不安定な状況に置かれていると述べました。その理由は、大統領が関税をより良い貿易協定を締結するための交渉手段として用いているのか、それとも世界貿易の再編を強制するための恒久的かつ懲罰的な手段として用いているのかを見極める必要があったからです。もし前者であれば、株式市場の調整は買いの好機ということになりますが、後者であれば、株価下落の余地はまだ大きいということになります。私たちはその答えを、水曜日の取引終了後に知ることになりました。

誰もが、「解放の日」が、2024年に9180億ドルの貿易赤字を解消することを目的とした貿易政策の発表によって、わずか2日間で5.4兆ドル以上の資産が失われるという「解放」になるとは思ってもいませんでした。それはあまりにも高すぎる代償であり、今週もさらなる痛みが避けられないでしょう。

(出所:Edward Jones

最悪のシナリオを予想していた人々は、すべての輸入品に一律20%の関税が課されることを恐れていました。私自身は誤ってそうした予想をしていませんでしたが、その懸念は存在していました。そのため、大統領が以前に述べていたように、すべての貿易相手国に対して関税が「相互的」であるとの最初の報道には、多くの人が安堵しました。しかし、その安堵は長くは続きませんでした。数分後、大統領がポスターボードに示した実際の関税率が明らかになると、そこに「相互性」は一切ありませんでした。このことが原因で、市場はその後2日間で大きく崩壊しました。

この関税率の算出方法は極めて大雑把で、各国との貿易赤字をその国からの輸入額で割り、その割合を半分にするというものでした。これらの関税率は、他国が米国に課している関税とは全く関係がなく、結果として実効関税率は現在の2.3%から20%超にまで上昇しました。中には中国からの輸入品に対して最大で54%の関税が課されるケースもあります。

S&P500がわずか2日間で5兆ドル超を失う

(出所:Bloomberg

この関税政策の目的は、輸入品に対する関税収入を年間9,000億ドルを超える貿易赤字と同等の水準まで引き上げることのようですが、そのお金は米国内の企業や消費者の負担によって賄われることになります。これは、先週投資家が被った損失よりもさらに大きな経済的代償になる可能性があります。さらに悪いことに、世界の他の国々は一歩も引かず、中国は米国からの輸入品に34%の関税を課し、我々が喉から手が出るほど必要としているレアアース(希土類)の輸出規制まで導入しました。カナダは米国車に対する関税で対抗し、EUも金融・技術サービス分野で米国が持つ1,000億ドル超の黒字を打ち消す対抗措置を検討しています。

加えて、我々の最も重要な貿易相手国の多くが、大統領の強硬な手法に嫌気が差し、米国製品の輸入をボイコットする動きまで見せています。この状況が続けば、誰もが予想している経済活動の低迷は、さらに悪化することになるでしょう。今や問われているのは、「市場の富が一体どれほど失われれば、政権は方針を転換するのか」という点だと思います。そして、その転換点は、もうすぐそこまで来ているように感じます。

ナスダック100が弱気相場入り

(出所:Bloomberg

今年の経済における最悪のシナリオをいくつか想定すると、先週発表されたすべての関税が今週中に実施され、そのまま継続された場合、不況は避けられないと考えられます。この可能性を受けて、ウォール街の多くの銀行は経済および市場の見通しを下方修正しています。J.P.モルガンは、2025年の失業率が5.3%に上昇すると予測し、GDP成長率の見通しも1.3%の成長から0.3%のマイナス成長へと引き下げました。他の複数の金融機関も、程度の差はありますが、同様の見解を示しています。これにより、市場のセンチメント(投資家心理)は、私がこれまでに見たことのないほど低下しています。

(出所:CNN)

トランプ大統領による今回の新たな関税措置は、1930年に制定されたスムート・ホーリー関税法による関税以来、最も攻撃的なものです。この法律は、世界的な貿易戦争を引き起こし、世界恐慌を深刻化させた要因と広く見なされています。こうした背景から、大統領は国民に「我慢強く耐えてほしい」と呼びかけ、「簡単にはいかない」とも述べています。今回の関税政策の目的は、過去30年間で失われた500万件の製造業の雇用を取り戻し、1.2兆ドルにのぼるモノの貿易赤字を大幅に縮小することにあります。

これらの関税は、企業が米国内に新たな工場を建設して関税を回避しようとする投資の波を生み出すとされています。しかし、私たちはすでに21世紀に生きており、そのような結果が本当に実現するのかについて、私は大きな疑念を抱いています。個人的には、ナイキの靴を製造するよりも履く方がいいと思っていますし、この点が大統領との間で、そしてウォール街やメインストリート、ビジネス界の多くの人々との間で、思想的な対立となっているのです。

確実に起こると見られる短期的な痛みとは異なり、大統領が数年かけて実現しようとしている国内回帰(オンショアリング)は、不確実性が極めて高く、国民がそれを待てるほど忍耐強いとは思えません。

米国の平均関税率が「報復関税」により急上昇する見通し

(出所:Edward Jones

その結果、株式市場では、まだ現実には起きていないものの、自ら招いた関税による景気後退をすでに織り込み始めています。仮にこれらの関税が継続されれば、物価は上昇し、個人消費の伸び率を抑え、それが経済成長率を鈍化させ、雇用の喪失と賃金の伸び悩みを招き、最終的には実質賃金の低下につながります。企業の利益も減少し、S&P500構成企業の売上の約3割を占める輸出の減少によって、その傾向はさらに悪化します。

加えて、株式市場の下落は「負の資産効果」をもたらし、消費者の購買力をさらに削ぐことになります。これは、弱気相場と景気後退を引き起こす有害な組み合わせであり、だからこそ、何らかの救済措置が近いうちに講じられるのではないかと私は考えています。繰り返しますが、国民はこの状況に長く耐えられませんし、大統領への支持も急速に失われていくでしょう。

私の考えでは、4月中がこの政策を見直すための猶予期間だと思います。それを逃すと、市場の下落による負の資産効果が実体経済の統計に表れ始め、すでに弱気相場に入っているS&P500の動きが、より長期的かつ深刻な景気後退へとつながる可能性が高まります。私は先週、米エネルギー情報局(EIA)が発表したガソリン消費量のデータに、個人消費の変調の兆しを初めて見ましたが、それ以外の点では、現時点ではまだ経済は堅調に見えています。ただし、株式市場の資産価値がこのまま失われ続ければ、その状況も長くは持たないでしょう。

大統領に今必要なのは、新たな貿易協定を結ぶ機会という形で、パニックを和らげるための「出口戦略」です。これにより、大統領は「勝利」を宣言し、関税を引き下げたり撤廃したりすることができます。最初の突破口となりそうなのが、米国が第4位の貿易赤字(1230億ドル)を抱えるベトナムです。大統領は金曜日に、ベトナムが今週水曜日に予定されている46%の関税を回避するため、関税の撤廃に応じる意向を示したと発言しました。この報道を受けて、同国に製造拠点を持つナイキ、ルルレモン、その他のアパレル小売企業の株価が急騰しました。今週はさらに多くの国が前向きな姿勢を見せると予想されますが、この混乱が本当に終わるのは、中国およびEUとの間で包括的な合意が成立した後になるでしょう。

過去2日間にわたる劇的かつ感情的な株価下落を受けて、今から株を売却するのは遅すぎると私は個人的には考えています。大統領のこれまでの言動を振り返ると、今週中にも関税方針を突然変更し、ダウ工業株30種平均が1日で3,000ポイント反発する可能性も十分にあります。下落局面で株を持ち続けることが悪いと感じるかもしれませんが、底値で売ってしまうことの方が、はるかに悪い結果を招きます。今回の急落は市場のセンチメント(心理)に起因しており、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいたものではないという点を忘れてはなりません。米経済は、今回の関税騒動が始まる前までは非常に堅調でした。したがって、明らかに持続不可能なこの政策が緩和されれば、市場は大きく反発する可能性が高いと思います。

市場の下落がファンダメンタルズではなくセンチメントに基づいている以上、私はテクニカル指標に頼らざるを得ません。金曜日には、S&P500が10月の安値5577(ここが強気相場の始点)からの38.2%戻し水準である5134を下回りました。これはテクニカルアナリストたちが注目している水準です。次のサポートラインは50%戻しにあたる4816であり、私はこれを月曜日か火曜日に試す展開になると見ていますが、現時点ですでに市場は極めて「売られすぎ」の状態にあります。そのため、仮に通商政策に何らかの緩和が見られれば、200日移動平均線である5700付近までの大規模なリバウンドが起きてもおかしくありません。

ただし、市場は一直線に回復するものではありません。そのため、反発局面ではリスクを軽減し、再び下落する可能性に備えるのが賢明です。それまでは、政策転換によって景気拡大が損なわれることなく、本格的な底打ちが確認されるのを待つ必要があると考えています。

(出所:Stockcharts

すでに始まっている国民、企業、そして議会関係者からの反発は、今後数日から数週間の間にさらに激しさを増し、より合理的な貿易協定が結ばれるまで続くと私は考えています。最終的には、関税は引き下げられるか、もしくは完全に撤廃され、その代わりに大統領が「勝利」と解釈できるような貿易協定が締結されることになるでしょう。もしそれが、私が予想するように今後30日以内に実現すれば、今回の調整で弱気相場入りした市場も回復に転じるはずです。

米国経済カレンダー

今週の最大の注目は言うまでもなく貿易政策に関するニュースですが、木曜日には消費者物価指数(CPI)、金曜日には生産者物価指数(PPI)の発表も予定されており、原材料価格の高騰を受けて関心を集める可能性があります。週末には決算シーズンが始まり、金曜日には複数の大手銀行が決算を発表する予定です。

(出所:MarketWatch)


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