02/15/2025

やや強気
AT&T
やや強気
AT&Tは、まるで公益企業のように安定した配当を提供していることから魅力的な高配当銘柄です。
【高配当】AT&T(T)業績推移分析:最新の2024年第4四半期決算は市場予想を上回る着地で株価も上昇トレンド継続!

graphical user interfaceヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • 本稿では、注目の米国高配当銘柄であるAT&T(T:予想配当利回り4.6%)の最新の2024年度第4四半期決算と業績推移の詳細な分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • AT&Tは長年にわたり戦略性のない事業拡大を続けてきましたが、近年は事業のスリム化を進め、コア事業への集中を強化しています。
  • 2024年第4四半期の決算ではアナリスト予想を上回る結果を示し、特にワイヤレス契約者やファイバー事業の成長が業績を後押ししました。
  • AT&Tは安定した配当を維持しつつ、設備投資を続ける堅実な銘柄であり、今後も安定した収益と予測可能な配当収入を提供する魅力的な高配当銘柄であると見ています。

はじめに

「人々を団結させる最良の方法は、共通の敵を作ることだ。」 —『ウィキッド』のオズの魔法使い

帝国の拡大は、古くから多くの人々が陥る落とし穴でした。

歴史的に見ても、帝国が成長する過程では、周辺の国々を征服することで、一つの共通目標を持つことができました。敵に対して一致団結することで、国内の欠陥や問題点が見過ごされることも多かったのです。実際、歴史上の戦争の多くでは、戦時中に国内でさまざまな問題が噴出していました。しかし、戦時経済のもと、国全体が一丸となって戦争遂行に注力することで、こうした問題は後回しにされるか、あるいは解決されずに長引くことがありました。

市場においても、企業や経営陣が「帝国建設」に夢中になり、積極的な投資を繰り返すことがあります。しかし、アメリカには、帝国拡大に走った結果、自滅した偉大な企業の例が数多く存在しています。

今回は、かつて帝国建設に邁進し、その後、事業のスリム化を余儀なくされた企業に焦点を当て、その成功の要因を探っていきます。

それでは、見ていきましょう!

AT&T(T)はスリム化で本領発揮!

AT&T(T)は、予想配当利回り4.6%を誇る、米国を代表する通信大手の一社です。

長年にわたり、戦略性の欠けた帝国建設を続けてきた同社ですが、経営陣はついに方向転換を決断し、「オゼンピック※」を活用するかのように事業のスリム化を進めました。そして、コア事業に集中するために大胆なコスト削減を行いました。

※オゼンピック(Ozempic):糖尿病治療薬の一種で、体重管理にも効果があるとされる

この帝国建設こそが、数十年にわたって低いリターンをもたらしてきた主な要因でした。

AT&Tのトータルリターンと株価変動率(%)

(出所:YCharts)

ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)は2022年にスピンオフされ、AT&Tは長年の収益の原動力となってきた「より公益事業に特化する」という方向へと集中するようになりました。

AT&Tは、携帯電話市場ではベライゾン(VZ)やTモバイルUS(TMUS)と直接競争し、インターネットサービスではCox Communicationsやコムキャスト(CMCSA)と競い合っています。

そして、AT&Tは1月27日に2024年度第4四半期および通期の決算を発表し、アナリスト予想を上回る好結果を示しました。これを受け、同社の株価は最近では最も力強い値動きを見せました。

AT&Tの株価推移

(出所:YCharts)

AT&Tの第4四半期におけるワイヤレス契約者の増加は予想を上回り、同社の5Gモバイルと高速ファイバーデータを組み合わせた割引付きプレミアムプランの強い需要が成長を後押ししました。

米国の通信大手であるAT&Tは、月額料金を支払うワイヤレス携帯電話契約者の純増数が48万2,000件となり、ファイバー事業では30万7,000件の新規顧客を獲得しました。これは、同社にとって過去最高のホリデーシーズンのファイバー契約純増となりました。また、同社のインターネット・エア(Internet Air)も市場で好調を維持し、第4四半期には15万8,000件の新規契約が加わり、年間の純増数は50万件に達しました。

加えて、AT&Tは、投資適格の「BBB+」格付けを持つ財務基盤を維持しており、今会計年度の前半までに調整後EBITDAに対する負債比率2.5倍という目標を達成すると見込んでいます。また、2025年後半には自社株買いを優先する意向を明らかにしています。

さらに、2024年度のフリーキャッシュフロー(FCF)は176億ドルとなり、年間82億ドルの配当支出に対する配当性向は控えめな46.5%にとどまりました。さらに、2024年度の設備投資(CapEx)は220億ドルに達しました。

AT&Tの四半期毎のフリー・キャッシュフロー推移(単位:10億ドル)

(出所:筆者作成)

そして、AT&Tの2024年度の調整後EPSは1株当たり1.95ドルとなり、年間配当の配当性向はほぼ同水準の46.6%となりました。

AT&Tの四半期毎の調整後EPS推移

(出所:筆者作成)

AT&Tは、保有するDIRECTVの70%の全株式をTPGに売却する予定であり、この取引は2025年前半に完了すると見込んでいます。

2025年度の業績見通しとしては、前年比3%の調整後EBITDA成長、DIRECTVを除いたフリーキャッシュフロー(FCF)が160億ドルを超えること、調整後EPSが1.97ドル〜2.07ドルの範囲になること、そして2024年度と同水準の220億ドルの設備投資(CapEx)を維持し、ワイヤレスネットワークの近代化およびファイバー網の拡大を進める計画です。

また、技術基盤の進化に伴うコスト削減を見込んでおり、2029年末までに大部分の有線ネットワークにおいてレガシーの銅線網を段階的に廃止する方針です。さらに、2027年には180億ドル以上のフリーキャッシュフローを創出し、2029年までにファイバーの提供エリアを5,000万拠点以上に拡大する計画を掲げています(2025年1月時点では2,900万拠点)。

AT&Tは依然として巨額のフリーキャッシュフローを生み出し、安定した配当を維持しながら資産基盤の拡大に投資を続けています。そして、過去3年間で株価は堅調に推移しているものの、依然として予想PER10.7倍と割安な水準にあります。

AT&Tのトータルリターン

(出所:YCharts)

そのため、AT&Tは、過熱感のある市場でバリュエーションが拡張する中でも、大きな上昇余地と十分な安全余裕を提供しているように見えます。

AT&T(T)に対する結論

AT&T(T)は、配当を受け取りながら長期的に保有する典型的なインカム投資の例です。過去の特定の期間において、目を見張るような投資先でも、総合リターンで賞を取るような銘柄でもありませんでした。しかし、AT&Tの株主であれば、長年にわたり安定的で予測可能な収益の成長を享受できたはずです。現在のAT&Tは、管理が不十分な帝国建設に乗り出す以前の、より堅実な姿に戻ったと言えます。

現在のAT&Tは、2022年以降、安定した配当を維持しており、より魅力的で安定した投資先となっています。とはいえ、収益や配当の急成長はあまり期待できません。通信事業は依然として設備投資負担の大きい業界であり、消費者向けのインフラに継続的な投資が求められるためです。

それでも、AT&Tはアメリカ人の生活において重要な役割を果たしています。企業から個人に至るまで、安定した顧客基盤を持ち、予測可能な収益を確保しているため、投資家にとっても予測可能な配当収入を期待できる銘柄と言えるでしょう。

また、直近では予想配当利回り約6%のバンク・オブ・ノバ・スコシア(BNS)や予想配当利回り約11%のブライトスパイア・キャピタル(BRSP)に関しても下記の詳細な分析レポートを執筆しております。インカム・高配当株投資家の方は、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧ください。

バンク・オブ・ノバ・スコシア

ブライトスパイア・キャピタル


私はインカム・高配当関連銘柄に関するレポートを執筆しており、私のプロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

加えて、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

弊社のインカム・高配当関連銘柄に関する最新レポートを見逃さないために、是非、フォローしていただければと思います!

その他のAT&T(Tに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、AT&Tのページにてご覧いただければと思います。


アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン

📍インカム・高配当担当

ラガーヴァン氏のその他の配当関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ラガーヴァン氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。