06/24/2024

やや強気
AT&T
やや強気
情報通信業界は必要不可欠な業界で、且つ、キャッシュフローが豊富な産業であるが、多額の支出を伴うため、サービスプロバイダーの負債水準が高くなる傾向にある。
Part 2:AT&T(T)とベライゾン(VZ)どちらが魅力的?設備投資と財務状況の比較を通じて、両社の今後の成長見通しと将来性に迫る!

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  • Part 2でも、引き続き、AT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の比較を深堀りしていく。
  • 情報通信業界は、特に5Gおよび光ファイバーインフラに重点を置いた2022年に、資本支出のピークを迎えている。
  • 負債水準やバランスシートの格付けにはばらつきがあるものの、両社とも戦略的な財務管理を通じて株主還元の最適化を目指している。
  • 業界の継続的な変革は、両社に対して、将来のテクノロジーへの投資と財務の安定性の維持の間で慎重なバランスをとることを促している。
  • 本稿では、設備投資と2024年の見通し、バランスシートの強さと負債水準について両社を比較していきたい。

※「Part 1:AT&T(T)とベライゾン(VZ)どっちが魅力的?両社の強みと市場シェア、並びに、成長戦略と成長見通しを徹底比較!」の続き

Part 2の概要

Part 1における情報通信セクターのビジネスチャンスとフリー・キャッシュフロー創出に関する考察に引き続き、Part 2である本稿では設備投資、2024年の見通し、バランスシートの強さといった重要な側面について掘り下げていく。そして、比較対象として、Part 1と同様に、通信業界の巨人であるAT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の戦略を検証し、業界の変革が進む中での投資計画と財務の健全性を評価していきたい。

AT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の設備投資と2024年の見通し

情報通信セクターにおける5Gおよび光ファイバーの導入には自動的に数十億ドル規模の支出が伴う。そして、2022年は米国の通信会社が最速かつ最も信頼性の高いネットワークを提供するために競争し、5G投資のピークを迎えた年であった。しかし、2023年には、情報通信セクターにおいて、ウォール街がこれまでの投資からのフリー・キャッシュフローを初めて経験する年となっており、これは2024年以降もさらに加速する見込みとなっている。

ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の2022年通年の支出は231億ドル(2021年比28億ドル増)と巨額であったが、2023年には188億ドルに急減している。同社は2024年も5G Cバンドの展開を継続する予定だが、その規模は大幅に縮小される見込みであり、2024年度の設備投資額は170億ドルから175億ドルになると予測している。

一方、AT&T(T)は、5G展開と大規模ファイバー展開プロジェクトを含め、2023年度に236億ドルを支出している(2022年度は196億ドル、2021年度は155億ドル)。そして、AT&Tはベライゾン・コミュニケーションズに比べてピーク時の設備投資がやや遅れており、2024年度の設備投資ガイダンスは210億~220億ドルとなっている。

(出典:筆者作成)

5Gへのピーク支出に関してはベライゾン・コミュニケーションズが先行している一方で、株主へのリターンという観点からは、AT&Tは今後のビジネスチャンスとフリー・キャッシュフローの面ではベライゾン・コミュニケーションズよりも有利な立場にあるようにみえる。これらの詳細に関しては、是非、Part 1をご覧いただきたい。

AT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)のバランスシートと負債水準

ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は、強固なバランスシートと優れた信用格付けを誇っている。同社は2024年第1四半期を、1,260億ドルの無担保純債務(前年同期比37億ドル減)、レバレッジ・レシオ(無担保純債務/調整後EBITDA)2.6倍で終えている。そして、2024年度第1四半期末時点の債務の実効金利は5%となっている。

ティッカー

企業名

格付け(フィッチ)

VZベライゾン・コミュニケーションズ

A-

T

AT&T

BBB+

TMUS

TモバイルUS

BBB

(出典:筆者作成)

AT&T(T)は負債水準でベライゾン・コミュニケーションズに遅れをとっており、第1四半期末の長期負債は1,250億ドル、レバレッジ・レシオは2.9倍となっている。同社は、2024年度末までにレバレッジ・レシオは3倍、そして、2025年までには2.5倍に達すると予測している。また、第1四半期末時点の長期債務ポートフォリオ(クレジット契約による借入とデリバティブの影響を含む)の加重平均金利は4.2%となっている。

(出典:筆者作成)

以上より、ベライゾン・コミュニケーションズの方がレバレッジ比率が低く、バランスシートの格付けも若干高いことが分かる。しかし、借入コストはAT&Tの方が若干低いというのが現状である。AT&Tは足元で急速に追い上げており、同社の積極的な債務返済計画は長期的には株主に報いるだろうと見ている。

ここまでのAT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の比較のまとめ

AT&T(T)とベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は、デジタル接続の重要性が増す現代において、通信業界のリーダーである。両社は共に5Gと光ファイバーのインフラ整備を推進しているが、そのアプローチには違いがある。

AT&Tは低価格のプランと広範なカバレッジを提供し、価格に敏感な消費者に優れている一方で、ベライゾン・コミュニケーションズは、5Gの信頼性とプレミアムプランに注力し、高収益性を維持している。そして、ベライゾン・コミュニケーションズは政府機関や大企業向けの5Gソリューションで強みを発揮している。

フリー・キャッシュフロー(FCF)に関しては、両社とも一時的に減少しているが、2024年以降は成長が期待されている。AT&Tの2024年第1四半期のフリー・キャッシュフローは予想を上回り、年間で170億ドルから180億ドルに達する見込みである。ベライゾン・コミュニケーションズも2023年度のフリー・キャッシュフローが187億ドルを上回ると予想されている。

設備投資では、ベライゾン・コミュニケーションズが先行し、2023年にピークを迎えた一方で、AT&Tは2024年も引き続き高水準の投資を継続している。バランスシートではベライゾン・コミュニケーションズが若干優れていますが、AT&Tも積極的な債務返済計画を進めている。

総じて、AT&Tは価格重視の消費者に強みがあり、ベライゾン・コミュニケーションズは収益性と企業向けサービスで優れている。以上より、投資家は両社への投資を検討する際には、両社の強みと課題を理解し、それぞれの戦略を考慮することが重要である。

※続きは「Part 3:AT&T(T)とベライゾン(VZ)どっちが割安?両社の配当政策(予想配当利回り・配当性向)と今後の株価見通しを徹底比較!」をご覧ください。


アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン

テクノロジー・アドバイザーのヴェンカット・ ラガーヴァン氏は、高配当銘柄を中心に、日々、投資アイデアを執筆しております。

執筆活動以前は、米国とカナダにて、経営コンサルタントとして、主にフォーチュン500社に含まれる大手テクノロジー企業を中心に、コンサルティング業務に従事しておりました。

ラガーヴァン氏は、強固なファンダメンタルズと競争優位性を持ち、さらに、巨大なキャッシュフローを生み出す可能性のある魅力的なビジネスモデルを特定・評価するプロフェッショナルです。その為、インカム・ゲイン(配当収入)と長期キャピタルゲインを同時に狙える割安な高配当成長銘柄を主な投資対象としています。

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