01/22/2025

【半導体】TSMC(TSM)はなぜ強いのか?最新の2024年第4四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

a computer chip with the letter a on top of itダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿では、注目の台湾半導体銘柄である「TSMC(TSM)はなぜ強いのか?」という疑問に答えるべく、最新の2024年第4四半期決算分析を通じて同社の今後の株価見通しに迫ります。
  • TSMCは2024年第4四半期決算で予想を上回る業績を達成し、特に設備投資が前年比35%増加し過去最高を記録、業界内での強力な成長を示しています。
  • AI関連収益が急増しており、TSMCは2025年にAIアクセラレーターからの収益が倍増することを予測し、長期的には年平均40%の成長が期待されています。
  • TSMCは競合他社に対して強力な技術的優位性を持ち、市場シェアの拡大を続け、今後数年間でさらなる成長を見込んでおり、次に1兆ドル規模の半導体企業になる可能性が高いと見ています。

TSMC(TSM)の最新の2024年第4四半期決算発表に関して

TSMC(TSM)は2025年1月16日に2024年第4四半期決算を発表し、まさに「王者」としての実力を見せつけました。その業績は見事で、この12か月間で株価も好調を維持しています。半導体業界全体のサイクルが大きく転換しない限り、この傾向は今後も続く可能性が高いように見えます。それでは、結果を振り返り、詳しく見ていきましょう。

TSMC(TSM)の最新の2024年第4四半期決算

1株当たり利益(EPS):14.45台湾ドル

FactSet予想:14.34台湾ドル

売上高:8684.6億台湾ドル(約268.8億ドル)

FactSet予想:8565.1億台湾ドル

TSMCによる事前予想:261~269億ドル

営業利益:4257.1億台湾ドル

FactSet予想:4134.5億台湾ドル

売上総利益率:59.0%

FactSet予想:62.7%

TSMCによる事前予想:57~59%

一見すると、今回の結果は「市場予想通りの達成と上方修正」といった印象ですが、いくつかの注目すべきポイントから、非常に強気な内容であることが浮き彫りになります。その中でも特に注目すべきは、前年比+35%の設備投資(Capex)成長です。これはTSMCの設備投資額として新たな過去最高で、2022年のピークをも上回る水準となっています。

設備投資の成長は予想以上でしたが、一方でTSMCの競合他社の投資計画は不安定な状況にあります。サムスン電子(005930.KS)は設備投資見通しを下方修正し、インテル(INTC)は「方向性が定まらない」状況です。そのため、ウェーハ製造装置(WFE:Wafer Fab Equipment)は表面上は恩恵を受けそうに見えますが、実際にはもっと複雑な話です。半導体製造装置関連株はショートの対象として注目されており、株価のショートスクイーズが起こるのも納得のいく展開だと言えるでしょう。

AMAT・KLAC・ASML・LRCX・TOELYの株価推移

(出所:Koyfin)

さて、話をTSMCに戻しましょう。業界全体の売上見通しは当初の印象ほど強気ではないものの、市場全体が約10%成長する中で、TSMCは20%台半ばの成長を見せています。このことから、同社が市場シェアを加速的に拡大していることが明らかです。

そして、下記は決算説明会のやり取りの一部です。

(原文)We forecast Foundry 2.0 industry to grow 10% year-over-year in 2025, supported by robust AI-related demand and a mild recovery in other end market segment. Supported by our technology leadership and broad customer base, we are confident we can continue to outperform the industry growth. We expect 2025 to be another strong growth year for TSMC and forecast our full year revenue to increase by close to mid-20s percent in U.S. dollar term.

(日本語訳)私たちは、ファウンドリー2.0業界が2025年に前年比10%成長すると予測しています。この成長は、堅調なAI関連需要と他のエンド市場セグメントにおける緩やかな回復によって支えられると見ています。当社の技術的リーダーシップと幅広い顧客基盤により、市場の成長を引き続き上回ることができると確信しています。2025年もTSMCにとって力強い成長の年になると予想しており、米ドルベースで通年売上高が20%台半ば近く増加すると見込んでいます。

現在、最大の成長要因の一つがAIアクセラレーターです。業界全体が低迷している中、TSMCは2025年にAI関連の収益が倍増すると予測しています。さらに、長期的には2024年からの5年間で年平均成長率(CAGR)が40%台半ばに達すると見込んでいます。

(原文)Revenue from AI accelerators, which we now define as AI GPU, AI ASICs and HBM controller for AI training and inference in the data center, accounted for close to mid-teens percent of our total revenue in 2024. Even after more than tripling in 2024, we forecast our revenue from AI accelerator to double in 2025 as the strong surge in AI-related demand continues.

(日本語訳)AIアクセラレーターからの収益は、現在データセンターにおけるAIトレーニングや推論向けのAI GPU、AI ASIC、HBMコントローラーとして定義しています。この収益は2024年には当社の総収益の10%台半ば近くを占めました。2024年に3倍以上の成長を遂げた後も、AI関連需要の急増が続く中で、2025年にはさらに収益が倍増すると予測しています

非常に単純な計算をすると、2024年から40%台半ばの年平均成長率(CAGR)を前提とした場合、2029年には収益が約870億ドルに達すると予想されます。非AI関連の収益成長率を10%と仮定すると、TSMCは10年末までに収益全体で10%台後半のCAGRを見込んでいると述べています。

(原文)Underpinned by our technology leadership and broader customer base, we now forecast the revenue growth from AI accelerators to approach a mid-40% CAGR for the 5-year period starting off the already higher base of 2024. We expect AI accelerators to be the strongest driver of our HPC platform growth and the largest contributor in terms of our overall incremental revenue growth in the next several years.

(日本語訳)当社の技術的リーダーシップと幅広い顧客基盤を基盤に、AIアクセラレーターからの収益成長率が、すでに高い2024年の基準から、今後5年間で40%台半ばの年平均成長率(CAGR)に達すると予測しています。AIアクセラレーターは、当社のHPCプラットフォーム成長を牽引する最も強力な要因であり、今後数年間における全体的な収益増加の最大の貢献要因になると見込んでいます。

正直に言えば、長期的な将来がどうなるかを正確に知る人はいません。しかし、現時点では、特にAI関連の数字において大きな控えめさがあると感じます。私は非AI関連の収益が10%成長すると仮定し、シェア拡大を含めて長期的な成長率を7%程度と見積もっています。一方、AI関連の収益予測が正しければ、TSMCはこの10年の終わりまでに10%台後半の成長が可能だと考えているようです。

(出所:筆者作成)

これは本当に驚異的です。この規模でこれほど長期間成長を続けられる企業はほとんどありません。そのため、まさにTSMCは「王者」と言えるでしょう。そして、競合他社がほぼ駆逐された今、独占的な利益を享受する時期に突入しつつあります。50%以上のROEを誇り、20~30%以上のEPS成長が長期間続く可能性が高い状況にあるように見えます。そして、それが手に入るのは2025年予想利益のたった20倍というバリュエーションで、これはおそらく現在存在するメガキャップ企業の中で最も割安と言えるでしょう。まさに驚くべきことです。

さて、話を決算結果に戻しましょう。プラットフォーム別の売上成長を見てみます。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)のQoQ(Quarter-over-Quarter:四半期ごとの比較)成長は顕著でしたが、スマートフォンの売上成長もわずかに回復しました。来年のスマートフォンの成長見通しは「緩やか」なものとされており、また季節要因により次の四半期ではスマートフォンの売上が減少する見込みです。

2024年度第4四半期のプラットフォーム別売上高

TSMCの2024年度第4四半期決算資料

しかし、事業の大半を占めるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)が今後さらに高い成長を遂げるのであれば、スマートフォンの売上がどうであろうと問題ではないのではないでしょうか。HPCは前年比で58%成長を遂げており、AI関連収益が倍増すると予測される来年も、同様の成長率が期待できるでしょう。さらに、CoWoS(チップオンウェハーオンサブストレート)の使用比率が高まることで、収益性がより高いと考えられます。この分野でTSMCは再びリーダーとしての地位を確立しています。

2024年度第4四半期のプラットフォーム別売上高

TSMCの2024年度第4四半期決算資料

また、今回の決算説明会でのもう一つの強気なポイントはこの点です。特にエヌビディア(NVDA)やAMD(AMD)向けのCoWoS注文削減に関する噂が業界全体で飛び交っていましたが、それに対する回答がAI半導体関連企業の株価を押し上げる結果となりました。その回答とは、「注文は削減されていない、むしろ生産能力が増加している」というものでした。

(原文)"Rick, as you said, there's a lot of rumor. That's a rumor. I assure you. We are working very hard to meet the requirement of my customers' demand, so 'cut the order,' that won't happen. We actually continue to increase, so we are -- again I will say that. We are working very hard to increase the capacity."

(日本語訳)リック、あなたが言ったように、多くの噂が飛び交っていますが、それはただの噂に過ぎません。断言します。私たちはお客様の需要を満たすために非常に努力しており、『注文を削減する』ということは起こりません。実際、私たちは生産能力を引き続き増強しています。繰り返しますが、私たちは生産能力を増やすために全力で取り組んでいます。

この発言は、短期的に投資家が抱える最悪の不安を和らげるものとなりました。最後に付け加えておきたいのは、「ベースダイ」が一つのビジネスであるという点です。TSMCは、現在この分野で最も成長が著しい分野の一つであるHBM向けのロジックベースダイの製造を開始しています。

(原文)We are working with all the memory suppliers, all of them. And that is because of TSMC's logic chip or logical technology more advanced and that meet our customers' requirement. So all of them are working with TSMC. Now we start to see some of the product coming out, but the high volume, probably you will need to wait for another half or 1 year to see the high volume and big contribution to TSMC's revenue.

(日本語訳)私たちはすべてのメモリサプライヤーと協力しています。本当に全てのサプライヤーです。それは、TSMCのロジックチップやロジック技術が他社よりも進んでおり、お客様の要件を満たしているからです。そのため、すべてのサプライヤーがTSMCと連携しているのです。現在、一部の製品が出始めていますが、大量生産が始まり、TSMCの収益に大きく貢献するまでには、あと半年から1年ほどかかるでしょう

サムスン電子が独自にロジックダイを製造する(疑わしい)という話や、メモリ企業がこれを自社で行うという議論もありました。しかし、ロジック技術においてTSMCに勝る企業はいないように見えます。これもまた将来の成長の柱となるでしょう。

まとめると――やはり王者の地位は素晴らしい!TSMCは今年、EPS(1株当たり利益)を40%成長させ、来年も同様の強力な成長を見込んでいます。ブロードコム(AVGO)やエヌビディアからのトップダウン見積もりと一致しないボトムアップのファウンドリー予測から見ても、まだ慎重な見方があると言えるでしょう。

利益率は拡大を続け、次のサイクルで過去最高を更新すると予想されます。一方で競合他社は市場シェアを失い続けており、TSMCは収益と利益率を拡大しながら競争優位性をさらに強化しています。同社の時価総額は約8000億ドルに達しており、おそらく次に1兆ドル規模の半導体企業になるのはTSMCだと考えています。なんて素晴らしい企業でしょう!

次章では、「隠れ半導体銘柄とは?」という疑問に答えるべく、注目の4つのグローバル半導体銘柄の最新の決算分析を通じて、各社の将来性に関して詳しく解説していきます。

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Part 1

Part 2


アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

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