01/01/2025

【半導体:Part 1】GAA(Gate All Around:ゲート・オール・アラウンド)トランジスタとは?GAAの基礎を徹底解説!

a cube shaped building on a rockウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本編は、半導体市場における注目のテクノロジー、GAA(Gate All Around:ゲート・オール・アラウンド)の現状と将来性を詳細に分析した長編レポートとなり、4つの章で構成されています。
  • 本稿Part 1では、半導体市場における注目のGAA(Gate All Around:ゲート・オール・アラウンド)トランジスタに関して、GAAの基礎から詳しく解説していきます。
  • GAAトランジスタは、FinFET技術の次世代技術であり、漏れ電流を抑えつつ小型化と高性能化を実現する構造で、次世代半導体プロセスの重要な技術として注目されています。
  • GAAの「進化」と「革命」の違いは、各企業の競争優位性や技術移行の課題に影響を与え、特にTSMC、インテル、サムスン電子の3社にとって技術リーダーシップを再定義する可能性があります。
  • GAA技術への移行は、半導体業界における歴史的な転換点であり、今後10年の技術開発や市場競争における最重要課題とされています。

GAAGate All Around:ゲート・オール・アラウンド)トランジスタとは?進化か革命か、その重要性とは?

最近、クライアントの依頼でGAAGate All Around:ゲート・オール・アラウンド)への移行に関する仕事をしていたところ、Semiconductor Engineeringの記事に目が留まりました

特に「進化的(Evolutionary)」という言葉の使われ方が印象に残った部分があります。

因みに、GAAとは、トランジスタ(電流や電圧を制御・増幅するための電子部品)のゲート電極がチャネルを完全に囲む構造のことで、従来のFinFET技術の次世代技術とされています。

この構造により、電流の流れをより正確に制御でき、さらに小型で高性能なトランジスタが可能になります。

GAAトランジスタは特に、さらなる微細化が進む中で、漏れ電流を抑えつつ効率よく電力を使用できる点で注目されています。

また、FinFETFin Field-Effect Transistor)とは、従来のプレーナ型トランジスタの次に登場した3次元トランジスタ技術です。

チャネルが「フィン(鰭)」状に突き出ており、その両側面にゲートが配置される構造を持ちます。

この設計により、電流の制御性が向上し、漏れ電流を抑制することができ、トランジスタの動作が効率的になるため、微細化が進む半導体の性能向上に役立っています。

そして、現在、5ナノメートルや7ナノメートルなどの最先端プロセスに広く採用されていますが、GAA技術が次世代の代替技術として注目されています。

(原文)GAA FETs are considered an evolutionary step from finFETs, but the impact on design flows and tools is still expected to be significant. GAA FETs will offer additional freedom to design teams to optimize their designs because there is no quantization

(日本語訳)GAA FETFinFETの進化形とされていますが、それでも設計フローやツールには大きな影響を及ぼすと予想されています。また、量子化の制約がないため、GAA FETは設計チームにとって、より自由に最適化できる余地を提供します。

GAA FETは「Gate All Around Field-Effect Transistor(電界効果トランジスタ)」の略称で、GAA構造を利用したFETです。

この構造を使うことで、チップの密度が向上し、さらに高性能な動作が可能になります。

例えば、次世代のプロセッサやメモリチップに使用され、消費電力の削減や動作速度の向上に貢献しています。

GAAへの移行は、1950年代初頭の半導体トランジスタの登場以来、設計の根本的な変革としては2度目の大きな変更にあたります。

こうした背景を考えると、「革命的(revolutionary」な変化」として語られることのほうが一般的です。

厳密な定義にこだわるつもりはありませんが、「進化的」と「革命的」の違いについてはおおよその感覚は皆さんお持ちだと思います。

この点については、Quality Magazineの記事が簡潔で分かりやすい見解を示しています。

(出所:QualityMagazine

ここで大切な問いが二つあります。

1. GAAは「進化」なのか「革命」なのか?

2. この違いがなぜ重要なのか?

まず、二つ目の問いについて考えてみましょう。

もしGAAが「革命的な変化」とされるなら、TSMCTSM)、インテル(INTC)、サムスン電子(005930.KS)の3社は、GAAノード(トランジスタの構造において、ゲートがチャネルを四方から完全に囲む「Gate-All-Around」構造を採用した半導体プロセス技術の世代)を高い歩留まりで量産体制に乗せるという共通の課題に、ほぼ同じスタートラインから取り組むことになります。

つまり、「革命」であれば、FinFETでの実績やリーダーシップがあまり意味をなさず、3社にとって同じく難しい挑戦となるわけです。

一方で、GAAが「進化」と捉えられる場合、TSMCが有利な立場に立つと言えます。というのも、TSMCFinFETトランジスタ技術において優位性を持ち、その3ナノメートル・ノードの成果が示す通り、2025年に予定されている2ナノメートル・ノードでのGAA移行にもこのリードが引き継がれると考えられるからです。

最近、サムスン電子がGAAプロセスで遅れや難航に直面しているという噂や、インテルの18Aプロセス(半導体製造プロセスノードの一つで、非常に微細な1.8ナノメートルに相当する技術世代)が同社の期待通りの成果を出せるかという懸念が聞かれる中で、サムスン電子、インテル、TSMC3社がGAAへの移行に成功できるかどうかは、今後10年の半導体業界における最重要課題といえるでしょう。

この移行が実現すれば、半導体技術におけるリーダーシップのあり方が今後数十年にわたり再定義される可能性があります。

さて、GAAは「進化」なのか、それとも「革命」なのか?詳しく見ていきましょう!

※続きは「【半導体:Part 2】トランジスタとは​?GAA(ゲート・オール・アラウンド)を取り巻く背景と共にトランジスタの詳細を徹底解説!」をご覧ください。

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