やや強気ウエスタン・ミッドストリーム・パートナーズ【高配当】ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES)の将来性:配当利回り8.9%の高配当BDCの株価見通しに迫る!
ヴェンカット・ ラガーヴァン- 本稿では、注目の米国高配当BDCであるウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES:予想配当利回り8.9%・配当金0.875ドル)の11月6日発表の最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 米国のミッドストリームセクターでは、合併・買収が加速しており、DTミッドストリームがワンオークから天然ガスパイプラインを買収するなど、事業環境の改善が進んでいます。
- ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズは、予想配当利回り8.9%を誇り、安定した収益を長期契約に基づく事業モデルで実現しており、将来的な成長が期待されています。
- 配当収入重視のインカム投資法として、エネルギーインフラを支える「有料の道路や橋を所有する」ような役割を担う企業への投資が魅力的であると見ています。
はじめに
アメリカは独占企業に対して興味深い関係を持っています。最も有名な独占解体の事例は、ロックフェラーのスタンダード・オイル社でしょう。同社が解体された結果、現在私たちが知っている多くの石油・ガス業界の大手企業が生まれました。興味深いことに、解体後もロックフェラーはそれらの企業の株式を保有していたため、個々の企業が独立して取引を始めることで、彼の財産はさらに増加しました。
また、マイクロソフト(MSFT)はコンピュータ市場における支配力を理由に反トラスト法の標的となりましたが、最終的に解体には至りませんでした。そして現在、インターネット分野ではグーグル(GOOG)が注目されています。現在検討されている案では、グーグルの検索機能をChromeブラウザから切り離すことが目指されています。
それでも、周りを見渡すと、独占状態にある企業がたくさん存在しています。多くの人は、電力会社、水道事業者、天然ガスの供給元を自分で選ぶことができません。私たちの社会には、政府によって認められた「規制された独占」が至るところに存在しているのです。これにより、政府が容認する規制された独占と、解体を試みる独占との対比が鮮明になります。
独占が問題視される最大の理由は、競争を阻害し、情報や商品の流通を支配する傾向があるからです。たとえば、マイクロソフトはオペレーティングシステムを通じてコンピュータ市場を支配し、多くの人がコンピュータを操作する方法に影響を与えてきました。同様に、Google Chromeは圧倒的なシェアを誇るブラウザとなり、グーグルの検索機能はインターネット上で情報を探す手段として欠かせない存在となっています。
ウォーレン・バフェット氏は、「有料道路や橋を所有するのが理想だ」と語ったことで有名です。その理由は、消費者が何をしているかやどこへ向かっているかを気にする必要がないからです。A地点からB地点へ移動するためには必ず料金を支払わなければならず、料金は彼の判断で自由に引き上げられるという仕組みだからです。実際、バフェットは上場企業の中でも数少ない有料橋運営会社の一つに大きな投資をしていたことでも知られています。
石油やガスの分野では、パイプラインを所有することで「有料道路の所有者」と同じような立場を手に入れることができます。つまり、石油やガスの価格を気にする必要も、消費者の意見に振り回されることもありません。企業が原油を採掘現場から精製所まで運びたい場合、その輸送のたびに収益を得ることができるのです。
今回は、こうした成功例の中から特に注目すべき選択肢を一つ取り上げ、それが本当に優れた投資先なのかを検証してみたいと思います。
それでは、始めましょう!
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ミッドストリームセクターが加速中
ミッドストリームセクターでは、合併・買収がかつてないほど活発化し、統合の動きが加速しています。ミッドストリームセクターとは、エネルギー産業の中で、原油や天然ガスを採掘現場(アップストリーム)から加工施設や市場(ダウンストリーム)に輸送・保管・処理する役割を担う部門を指します。このセクターは、エネルギー供給チェーンの中間部分を担当することから「ミッドストリーム」と呼ばれています。
そして、足元ではパイプラインを所有・運営するDTミッドストリーム(DTM)は、ワンオーク(OKE)から3つの州間天然ガスパイプラインシステムを12億ドルで現金買収すると発表しました。
さらに、トランプ政権下では環境規制や関連政策に大幅な変更が加えられると予想されており、これまでパイプラインプロジェクトやミッドストリーム事業の進展を妨げてきた多くの障害が取り除かれる見込みです。これにより、インフラ整備や資産基盤拡大に伴う遅延やコストが削減され、ミッドストリーム企業にとって一層有利な事業環境が整うことが期待されています。
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES):予想配当利回り8.9%・配当金0.875ドル
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES)は、予想配当利回り8.9%を誇り、14,373マイルのパイプライン、21の処理施設、69本の天然ガスパイプライン、そして12本の原油およびNGL(天然ガス液)パイプラインを所有・運営しています。このミッドストリーム企業は、アメリカで最も活発な産油地帯であるデラウェア盆地とDJ盆地で、収集、処理、輸送サービスを提供しています。
同社は株主価値を高めるために、数々の効果的な施策を実施しています。成長資金を自己調達し、ユニット(自社株)の買戻しや負債削減、配当の増配を行いながら、最低保証収益(Minimum Value Commitments)を基盤としたビジネスモデルによって豊富なフリーキャッシュフローを生み出しています。
(出所:ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの2024年第3四半期決算資料)
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)はウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの株式を42.5%保有していますが、これはウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズにとって必ずしもリスクではありません。むしろ、両社の間に相互に依存した関係があることを示しています。2024年9月30日までの9か月間において、ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズはオキシデンタル・ペトロリアムの生産に大きく依存しており、以下のような輸送量の内訳が示されています:
・天然ガス:輸送量の34%がオキシデンタル・ペトロリアムの生産によるもの
・原油およびNGL(天然ガス液):輸送量の90%がオキシデンタル・ペトロリアムに関連
・生産水:輸送量の77%がオキシデンタル・ペトロリアムに依存
ミッドストリーム資産は稼働開始前に長期契約を結ぶことが一般的であり、オキシデンタル・ペトロリアムも自社が事業を展開する主要な盆地で、ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの資産に大きく依存している点を考慮することが重要です。
2024年度の最初の9か月間、ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの収益の89.3%が手数料ベースで構成されており、同社のキャッシュフローの安定性と予測可能性の高さを示しています。この四半期では、デラウェア盆地における天然ガスとNGL(天然ガス液)の収集量が過去最高を記録し、パウダー盆地では原油と天然ガスの輸送量も記録的な水準に達しました。
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズは2025年に約10億ドルの債務が償還期限を迎えますが、強固な流動性基盤により、償還または借り換えに対応できる状況です。11月6日に発表された最新の2024年度第3四半期決算では、同社は11億ドル以上の現金を保有し、さらに20億ドルのリボルビングクレジット枠を確保していることが明らかになっています。また、同社は投資適格である「BBB-」の格付けを維持しており、今年は1億3,460万ドル相当のユニット買戻しを実施しました。
短期債務の満期スケジュール(単位:百万ドル)
(出所:ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの2024年第3四半期決算資料)
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズは、エナジー・トランスファー(ET)やエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD)といった主要企業が所有・運営する重要なミッドストリームインフラに株式投資を行っています。これにより、事業の多様化を図るとともに、運営はこれらの企業に委ねながら、資産のパフォーマンスに基づく分配金という形で利益を享受しています。2024年度の最初の9か月間には、約1億1,000万ドルの分配金を受け取っています。
(出所:ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの2024年第3四半期決算資料)
この戦略は、ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズの中核事業を強化するだけでなく、エネルギー価値連鎖における重要なプレーヤーとしての地位を確立しています。
2024年度、同社はフリーキャッシュフロー(FCF)を前年比19%増の11億5,000万ドル、調整後EBITDAを前年比11%増の23億ドルと予測しており、年度末にはレバレッジ比率を3倍(2023年12月から0.7ポイント改善)に抑える計画です。
過去12か月間で、同社は分配金支払い後に1億6,800万ドルのフリーキャッシュフローを生み出しており、第3四半期末時点でレバレッジ比率を2.96倍(3倍未満)に維持しています。この分配金後のプラスのフリーキャッシュフローと3倍未満のレバレッジ比率という条件が、2025年第1四半期に強化された分配金を実現するための鍵となっており、実現の可能性は非常に高いと考えられます。
以上より、同社は、米国エネルギーインフラで重要な役割を果たす割安な投資適格ミッドストリーム企業であり、8.9%という魅力的な予想配当利回りを提供しています。
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES)に対する結論
ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES)は、「有料橋」のコンセプトを実現している優れた企業の一つです。同社が保有する長寿命の資産は、他の事業者が運営を続ける上で欠かせないものであり、安定的で信頼性の高い収益を契約を通じて生み出しています。この重要な役割により、予測可能で堅実なキャッシュフローを確保するだけでなく、ユニットホルダーに対して買戻しや配当で利益を還元することが可能になっています。
全体として、同社はこれまで素晴らしい成果を挙げており、今後もその好調なパフォーマンスが続くと見込まれます。
退職後の収入源として、「ボトルネック(供給チェーンや物流において特定の部分が障害となって流れ全体を制限している状況)」や「有料橋」のような役割を果たす企業を所有することは、長期的に優れた収益を得る手段となります。商品がA地点からB地点に運ばれる限り、それを実現する企業を所有することは非常に有益です。石油やガスの価格にかかわらず、企業は商品を目的地に届けなければ事業を継続できず利益を得ることもできません。そのため、輸送量が増えれば増えるほど収益が増加し、仮に輸送量が減ったとしても、これらの企業の資産は収益を生む仕組みが整っているため、安定した収入を得られます。そして、これらの企業が成功すれば、株主への還元も非常に手厚くなります。そのため、同社の株主であることの価値はここにあるのです。
これこそが、私の「配当収入重視の投資法」の魅力であり、インカム投資の本質なのです。
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直近では、予想配当利回り8.6%のアレス・キャピタル(ARCC)、予想配当利回り11%のアポロ・コマーシャル・リアル・エステート・ファイナンス(ARI)、予想配当利回り6.3%のベライゾン(VZ)、予想配当利回り7%のグローバルX MLP ETF(MLPA)、予想配当利回り5%のAT&T(T)や予想配当利回り6.9%の米国高配当MLPであるエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD)、予想配当利回り7.1%の米国高配当REITであるヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)、予想配当利回り5.6%の米国高配当REITであるリアルティ・インカム(O)に関するレポートを執筆しております。
ベライゾン(VZ)
AT&T(T)
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アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン
📍インカム・高配当担当
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